犬は『ココ』が8連覇中!
ペットの名前の定番は? 犬ならポチ、猫ならタマ……とイメージする人もいるかもしれないが、最近のネーミング事情はまったく異なるよう。
ペット保険大手のアニコム損害保険では、毎年2月に猫、11月に犬の名前をランキング形式で発表している。対象としているのは、前年に新規契約された0歳の犬と猫だ。
「犬の名前ランキングは、今年もココが1位で8連覇。2位は、昨年6位だったモモが急上昇。3位には、昨年と変わらずマロンがランクインしました。猫の名前ランキングでは、1位がレオ。昨年1位だったソラは、わずか2頭差で2位に。3位のモモ、4位ココは昨年同様の順位でした」(広報・塩澤みきさん)
年間1万頭以上の犬猫と向き合っている獣医師・佐藤貴紀先生によると、
「最近の傾向としては、ココ、モモに代表されるように、カタカナ2文字の名前が多いです。飼い主さんは呼びやすさ、響きのよさ、可愛らしさにこだわっているようです」
ココやソラ、レオは犬猫ともにトップ10入り。犬と猫の名前に“垣根”はなくなりつつある?
そもそも『犬たちの明治維新 ポチの誕生』(草思社刊)によれば、犬はポチ、猫はタマが“あるある”だったのは明治38(1905)年ごろとされている。尋常小学校の唱歌に『ポチとタマ』が採用された背景があるよう。そんな明治時代の犬のランキングを見ると、クロやシロ、アカなど“見たまんま”のシンプルな名前が多い。
そして時代は昭和から平成へ。'92(平成4)年ごろのランキングを見てみると、猫7位のタマは健在だが、犬のトップ10にポチはなし。犬の名前のトップ3はコロ、チビ、タロー。猫はチビ、ミー、クロ。犬猫の名前としてスタンダードなものがズラリ。
「僕が勤務医になった15年ほど前は、犬はラッキー、ハッピー、クッキーのように音引きで伸ばす名前が多かったですね。あまりに診察する機会が多く、業界では“ラッキー・ハッピー症候群”なんて呼んでいたくらいです」
若い世代はオリジナリティーを重視
では、最近は? ポチやタマを診察する機会はほとんどないのだろうか。
「そうでもないですよ。数は少ないですが、昔ながらの名前のペットは今もいます。現場の感覚で言うと、ココやモモの飼い主さんは比較的高齢の方が多いです。最新のランキングは、保険に加入した犬猫を対象にしたものですよね? 高齢者のほうがお金に余裕があったり、備えへの意識も高い人が多いんだと思います」
一方、若い世代の飼い主はオリジナリティーあふれた名前をつけている傾向があるそう。
「ほかとカブらないことを大事にしていますね。コウ、ユウなど、ありがちな響きでも、幸、優など漢字表記にしていたり。秀吉、龍馬など歴史上の人物や、グッチ、エルメスなどブランド名をつける人も。
そして犬よりも、猫のほうが趣味性の高い名前が多いように感じます。犬は散歩のときに名前を尋ねられることもよくありますが、猫は名前を聞かれる機会が少ないからか、飼い主さんの好みを反映した、ユニークで個性的な名前も多いですね」
《PROFILE》
佐藤貴紀先生
獣医循環器学会認定医。白金高輪動物病院、中央アニマルクリニック顧問。JVCC動物病院グループ(株)代表取締役。『ペット犬猫相談室(http://www.ortus-japan.co.jp/pet)』