「ご主人をいただきにまいりました」
「このドロボー猫」
かつての昼ドラマを彷彿させる強烈なセリフで応酬する、妻vs愛人の愛憎バトルを描いた連続ドラマ『あなたには渡さない』(テレビ朝日系、土曜夜11時15分放送)。
主演の木村佳乃(42)は突然、夫から離婚を突きつけられた妻役、水野美紀(44)が愛人役を演じ、ふたりは今回が初共演。
「ドロドロとした戦いを美紀さんと演じさせていただけることが楽しみでした」(木村)
「普段、言わないようなセリフや感情をぶつけるのは爽快ですけど、木村さんとお会いしたら天真爛漫で明るく、この方を憎むという感情が湧いてこなくて、そこにいちばん苦しんでいます」(水野)
女のプライドがぶつかり合い、つかみ合いシーンもある壮絶なドラマで競演を果たすふたりの対談では仕事、家庭、子育てに奮闘する同世代女優の飾らない本音が満載です!
仕事と家庭を両立する同志です
─初共演の感想は?
水野 木村さんは、ホントに明るく元気。現場の空気を明るくしてくださる方だな、と。同じ母親でもあり女優という共通点もあって、こんなお母さん、最高だなって木村さんを見ていて思うんですよ。
木村 そんなこと言っていただくと今朝、娘をちょっと叱りすぎたかなと……。
水野 母親業もすごくやっていらっしゃるし、今回のドラマもほぼ出ずっぱり。寝る暇がないだろうし、体調管理とか大変だろうなと思います。
木村 よく食べているので、大丈夫です。ただ何日か、子どもの寝ている姿しか見られないときはちょっと悲しくなります。そんな会えないときは朝、手紙を書いておくと夜、返事があります。
美紀さんは、唐沢(寿明)さんとのコマーシャル(※1992年のコーセールシェリ“ねぇチューしてよ”のセリフが話題に)を見て“わぁ、かわいい”と思っていました。同じ年くらいだったので、すごくドキドキしたのを覚えています。
水野 17歳ごろでした。木村さんは何歳から芸能界に?
木村 19歳です。美紀さんは殺陣がとてもお上手。舞台も拝見してすごいなと思いますし、女優さんでなかなかいないですよ。最近はキャラの濃い役(※妊娠中に出演した連続ドラマ『奪い愛、冬』で、夫が自分から離れていくのを食い止めようとする妻を怪演)を演じて印象に残っていますし、同世代で活躍されている方がいるのはうれしい。(仕事と家庭を)両立するのはいろんな意味で大変ですから、同志みたいな感覚です。
水野 若いころのガチガチな感じから、今は人間としても女優としてもオープンになったときに出会えたと思うんです。
木村 そうですね。
水野 芝居でも木村さんは、ご自身のキャラクター作りがありつつも、相手の芝居をどう受けようかという余裕があり、相手の出方によって、こう受け止めましょう、と懐の深さがある。それでいてブレない芯があって、そのベテラン感(木村、爆笑)、安心感があります。
年齢を重ねて切り替えができるようになった
─本番直前まで話をしていて役に入り込んでいく木村さんを、共演者は切り替えが早いと口をそろえています。
木村 おしゃべりなんです(笑)。あと忘れっぽいので、美紀さんに忘れる前に言わなくちゃと思うし、セリフも忘れたりしますよ。
水野 全然、ちゃんと覚えてきていますよ。
木村 40歳を越えて体力の限界を感じて、夜10時以降の撮影は厳しいです。顔も疲れてきて、20代とは全然違いますよね。そのときは踏ん張れても翌日には顔がパンパンに腫れてたり(笑)。
水野 そうそう(笑)。
でも、切り替えができるようになってきますよね。家に帰ってからも忙しいので、現場で家のことを考え、あれもこれもしなくちゃと、いろんなタスク(仕事)が常に頭の中にあります。ドラマや映画の現場もキャリアが長くなると勝手もわかってきているので、切り替えができるようになってくるんだと思います。
木村 女性は同時進行でいろんなことを考えられるみたいですけど、男性はひとつに集中しちゃうらしいですね。
水野 だから本番直前までしゃべっていられるし、本番で切り替えられる。私は年齢を重ねて切り替えができるようになったと思います。
木村 私もそうかも。若いときは緊張して、自分のことで精いっぱい。自分勝手だったと思います。
40歳になって早いと感じているので、あっという間に50歳になるんだろうと思っています。
水野 ほんとホント。
木村 40代って早いと思う。だって、もうすぐお正月ですよ!
水野 私はもっとその先を考えて、亡くなるまでに何本の作品に出られて、何ができるのかを考えます。
木村 ホントですか!? ぜひ美紀さんにはアクションやってほしいです。
水野 股関節、大丈夫かな……。
木村 大丈夫です! もったいないですよ! 私は超運動音痴でひざも痛いし、ぎっくり腰にもなりそうなのでダメですけど、偉そうに指示する役ならできるかな(笑)。
開き直ったときの女性は強いと思う
─ドラマで火花を散らす感想は?
水野 木村さんを憎みづらいのが、悩みです。
木村 あまり深く考えてなくて(笑)セリフを覚えてハードなスケジュールで、ケガがないようにとか。限られた時間の中で共演者、スタッフと楽しくお仕事ができればいいなと思います。ある期間を家族よりも子どもよりも一緒に過ごす時間が長いわけですから、みなさんの大事な時間を割くので、素敵でやってよかった楽しかったと思える、いい時間になればと思います。
水野 私もこの年齢になると、自分はこういう芝居をしたい、こうやりたいというより調和。監督の演出を素直に受け止め、相手とのやりとりを楽しみ、この場がうまく進んで、とにかく作品がいいものになるようにしたいと思いますね。
木村 連城三紀彦さんの原作がしっかりしていて面白く、その上下巻を7話に凝縮しているので、ドロドロ度がもっとドロドロになっている。
水野 展開も早いし、ちょっと文学的なセリフを楽しんでいますね。
(妻と愛人が)ビジネスモデルパートナーになっていき、借りを作る、貸しを作る。女性同士の仁義みたいな感覚がカッコいいし、粋な女たちを描いていると思うんです。
木村 普通の主婦が激変しますが、開き直ったときの女性は強いと思います。プライドも何もかもかなぐり捨てたときの女性の底力は強いと思います。
女優業と家庭の両立で心がけていること
─女優業と家庭や子育ての両立で心がけているのは?
水野 これだけは言いたいのですが、借りられるだけの手(家族、友人、保育園など)を借りてやっています。シングルマザーや実家が遠かったら無理だと思います。
木村 そうだと思います。
女優業との両立は大変なときもありますけど、仕事として非常に楽しいし誇りをもってやっているので、我慢したくない。そのために人の手を借り、子どもには寂しい思いをさせたりもしますが、やると決めたら潔くやる。その姿を子どもたちが見てくれていたらいいなと思いますね。
水野 でも、休むときは休みますからね。
─つかみあいをする修羅場シーンは?
木村 かなりクライマックスだと思います。(撮影は)これからですが、シーンが長いのに恐れおののいているところです。1話40分のうち20分以上あるそうで、私自身、ドラマでは初めてくらいの長いシーンになります。
水野 セリフが膨大で、どうかみ砕いて言えばいいのか。面白いセリフも多いですし。旅館のひと部屋でふたりがバトルするんです。
木村 かなりすごいと思いますよ。
─その言葉、期待しています! ありがとうございました。
2人が渡したくないもの
ー渡したくないものは?
木村 3歳から大事にしている祖母からプレゼントされたピンクのうさぎの人形です。娘が見つけて“ちょうだい”と言われたときは、本気で“ダメ”と。娘の手が届かない高い所に飾ってあります。
水野 撮影現場で飲むために買ってきてもらうコーヒー。木村さんが飲んでいるコーヒーのサイズがとても大きく、こっそり飲んだら怒られるかなと想像しています。
木村 よくしゃべるので、ものすごくのどが渇くので、お店でいちばん大きなサイズを買ってきてもらいます(笑)。