全員の名前、言えるかな?

 今年もNHK紅白歌合戦の出場歌手が発表された。

 第69回、平成最後となる今年は紅組・白組合わせて42組が出場する。初出場は、紅組2組、白組4組。さらに特別企画1組、企画コーナーに出演する2組も合わせて発表された。

 よく知られた顔ぶれもいれば、初出場組の『King & Prince』や『純烈』、などはテレビ露出も増えているので、認知度は高い。もう1組、『YOSHIKI feat. HYDE』も『X JAPAN』のYOSHIKIと『L'Arc〜en〜Ciel』のHYDEのコラボということで、興味を持つ人も多いだろう。

 一方、同じ初出場でも白組の『Suchmos』や紅組の『あいみょん』、『DAOKO』といった面々は、テレビで見かける機会も少ないので、年配の人たちには馴染みが薄いのではないだろうか。 

世論の支持

 さらに、今年は“目玉”と見られる歌手はいない。発表会では、集まった記者の間から「なんか、パッとしないね」という声も聞こえた。

 今さらながらだが「紅白の出場歌手はどうやって決めているの?」と、疑問を抱いている人は多いと思う。

 NHKが配った資料によれば、出場歌手の選考にあたって、

 (1)今年の活躍 (2)世論の支持 (3)番組の企画・演出

 の3点を中心にいくつかの参考資料を基にして、総合的に判断しているという。

 ここで注目したいのが(2)の「世論の支持」について。

 この「世論の支持」はNHKが「紅白に出場してほしい歌手男女各3組」という質問内容で、全国2500人を対象とした『ランダムデジットダイヤリング』方式(コンピューターで無作為に数字を組み合わせて番号を作り、電話をかけて調査する方法)と、全国8000人を対象に『ウェブアンケート調査』のふたつの方法で世論調査を行なった結果だという。

 「世論の支持」の根拠となる質問回答者の詳細は明らかにされていないものの、毎年紅白を観ていた中高年や高齢者がウェブアンケートに答えたとは考えづらい。しかも、このアンケートは『ランダムデジットダイヤリング方式』の約3倍もの規模で実施されている。

 かつては、お気に入り歌手の曲を聴くにはレコードを買うか、テレビやラジオの歌番組を視聴するか、あるいはコンサートに足を運ぶしかなかった。世論を反映させて紅白出場歌手を選出するのは今と比べてずっと楽だったろう。

活躍ぶりも、世論の支持もはっきり形になって見えていましたからね。だから、出場歌手は広い世代で知られている人ばかりで“この人、誰?”みたいな歌手が出てくることはありませんでした」(テレビ局関係者)

 時代が変わり、インターネットやSNS、アプリなどが登場した。ダウンロード数や、ミュージックビデオの再生回数がものを言うようにもなった。前述のような調査方法を用いて選ばれた歌手たちは、若い人にとっては馴染みのある顔ぶれなのだろう。

 一方で、年配の人たちが求める紅白の“役割”は小さくなったように見える。

新曲は出していないけど、昔から好きな歌手が出る。若いころ大好きだったヒット曲が聴ける。年配の視聴者にとって紅白はそういう番組でもありました。また普段、テレビ露出が少なくなった歌手たちにとっても、年に一度の晴れ舞台となる。それが紅白でした」(前出・テレビ局関係者)

 しかし、年配の視聴者ばかりを意識して、キャスティングしていては、やがて番組が行き場を失うのはNHKも理解しているはずだ。これから先、若い視聴者を取り込んで、番組を続けていくうえで、「世論の支持」を考慮することは時代に即しているのかもしれない。

「今年の顔ぶれをみると、大御所、中堅、新人がバランスよく組み込まれています。紅白らしさは出ていますが、地味な歌番組みたいになっちゃってますね」(スポーツ紙記者)

 だが、ガッカリするのはまだ早いようだ。

いまのところ“目玉”となるものがないです。でも、NHKサイドは視聴者の興味が薄れないように、これから本番に向けて、情報を小出しにしていくと思われます。仰天企画が準備されている可能性もありますよ」(前出・テレビ局関係者)

 期待は膨らむ。ただ、平成最後を飾るのだから、平成を彩った歌手たちに出場してもらいたいと思っている視聴者も多いのでは。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。