事件現場となった北嶋家

 孫が祖父母に手をかける事件が、最近1か月で頻発する中、石川・金沢市でまた悲劇が起きた。

容疑者の父親代わりをしていたのに……

 祖父である北嶋誠吉さん(71)の首をひもで絞めつけて殺害したとして、石川県警は8日、同居していた孫で無職の北嶋祥太容疑者(23)を殺人の疑いで緊急逮捕した。「金目的で殺した」と供述し、犯行後、祖父が所有するテレビをリサイクルショップでお金に換えてパチンコ店で遊戯していたという。

 亡くなった誠吉さんが10月初めに散髪に来たと話す美容院の店長は、

「温厚ないいおじいちゃんだった。次に来店するのは年末だろうと思っていたけれども、まさかこんな事件が起こるなんて」

 と絶句する。

 一家はIRいしかわ鉄道・森本駅から車で約10分の田園地帯で木造2階建ての広い一軒家に住む。誠吉さんと、孫の祥太容疑者、2歳下の弟との3人暮らしだった。

 近所の女性住民は、

「祥太容疑者が5~6歳のころ、ご両親が離婚して父親は家を出ていった。幼い男児2人を抱える母親を助けたのが誠吉さんだった」

 シングルマザーになった娘のため、誠吉さんは父親代わりを務めていたが、

「3年ほど前に母親ががんで亡くなったんです。それからは、誠吉さんがひとりでお孫さんの面倒を見るようになった」(前出・女性住民)

お金をせびったあげくに

 祥太容疑者はそのころ20歳前後。高校卒業後は進学せずに地元で働いていたが、今年3月ごろに仕事を辞めてしまったという。
 

北嶋祥太容疑者(フェイスブックより)

「仕事が合わなかったのかもしれないね。ただ、働かなければやっぱりお金はなくなるし、おじいちゃんに“お金欲しい”って甘えるだろうね」(前出・同)

 一部報道によると、祥太容疑者が借金返済を迫られていたとする情報もある。借金額は不明だが、誠吉さんは年金暮らしの身。かつて電気設備工事の仕事中に電柱から2回落ちたケガの後遺症で、最近は出歩く回数も減っていた。

 前出の美容院店長は、

「誠吉さんは最近よく“腰が痛い”と話していた。お孫さんが小さいころは、“男の子2人だからやんちゃで元気いっぱいだよ”ってうれしそうに話し、うちにも連れて来てくれたんだけれども、近ごろはお孫さんの話はしなかった。

 母親が亡くなってしまったことはお孫さんにとっては影響が大きかったのかもしれないね。とはいえ、こんな結末を迎えるなんて、親代わりを務めてきたじいちゃんが気の毒だよ」

 人の気配が消えた北嶋家は、犬の鳴き声だけが響いていた。
「いつもならうれしそうな甲高い声で鳴いて、うるさいなーって思うくらいだったんだけど、今はか細い悲鳴みたいな鳴き声がするんだよ」(近くの男性住民)

 事件当日は、何台ものパトカーと数えきれないくらいの警察官が来て、ただごとではない雰囲気が漂っていたという。

 司法解剖の結果、誠吉さんの死亡推定時刻は11月8日、午前9時30分ごろ。遺体に気づいた祥太容疑者の弟が110番通報したのが同日の午後7時53分。約10時間、誠吉さんの首にはひもが巻かれたままで、その間、祥太容疑者はパチンコに興じていた。