ラブコメにあらず、リアルなラブかも
新垣結衣と松田龍平が11年ぶりに共演し、ダブル主演するドラマ、通称“けもなれ”。脚本は、新垣主演の人気作『逃げるは恥だが役に立つ』を手がけた野木亜紀子のオリジナル。
「“逃げ恥”のような楽しいラブコメディーをイメージしていた視聴者が多く、“そうじゃないんだ”という反響がとても大きかったですね。
笑いの要素もありますが、本作で描いているのは、現代の男女のリアリティー、そして“ラブかもしれない”ストーリー。視聴者の方にも3話くらい見るうちにわかっていただけたようで、5話でやっと楽しみ方を理解してもらっているのかなと思います」
と、松本京子プロデューサー。
新垣が演じる晶は、誰からも愛され仕事も完璧な女性。一方、松田扮する恒星は常にロジカルで、女性にもモテる敏腕会計士。ふたりとも一見、人生うまくいっているように見えるけど、頭でっかちで本能のまま自由に生きられない。
そんな晶と恒星が、行きつけのクラフトビールバー、5tapで偶然出会った。
晶は仕事や結婚を考えている恋人の京谷(田中圭)、彼の家に住みついている元カノ・朱里(黒木華)のことで悩み、恒星はやっかいな仕事を抱え、いきなり結婚した奔放すぎる呉羽(菊地凛子)の真意を測りかねていた。
「上司や取引先を糾弾してスカッと解決したり、素敵な男性と出会って一瞬で恋に落ちたりするのは日常ほぼありませんよね。イチ社員が声をあげても会社の状況は簡単には変えられないし、変わっても戻ってしまうことが多い。恋に落ちない人はなかなか落ちないし、タイミングがあっても踏み出せないことが多い。
本作では、ドラマチックな展開よりむしろ、そうしたリアルにこだわって丁寧に描いています。3歩進んで2歩下がる。でも1歩は進んでいるんです」(松本P、以下同)
久々に共演した新垣と松田だが、相性はぴったり。
「晶は仕事で繰り出す営業スマイル、苦笑、素の笑顔、自分を殺した笑顔など、さまざまなパターンがあるんですが、新垣さんは、見事にすべての笑顔の質を変えて演じています。
恒星は毒舌で嫌みな仮面をかぶって強がっていても、実はやさしくて誠実。これまでの龍平さんはエキセントリックや飄々とした役が多かったけれど、本作では感情に巻き込まれていく生身の男。話が進むにつれ、どんどん愛すべき男になっていく龍平さんの演技が秀逸です」
野木作成の人物設定、空き時間に恋愛相談
出演者は、実力派ぞろいだが、個性的な登場人物を演じるにあたっての助けになったものもある。
「野木さんが、それぞれの登場人物の生まれやどういうふうに育ってきたのかなどを細かく書いた人物設定表を作って、ひとりずつにくださったんです。それを踏まえて性格などを考え、役作りしてくださっているので、みなさん繊細な演技になっていると思います。
もともと演技のうまい方ばかりですが、さらにこちらの予想を素晴らしく超えてきてくださるので毎回、驚いてしまいます。自分以外の登場人物の過去の設定は知らされていないので、台本を読み、物語が進んでいくうちに理解していくのもリアルな人の出会いと通じるものがあります」
他人同士だからこそ本音をぶつけあいながら関係を築く晶と恒星は、ビールバーで最初は離れて座っていたが自然と隣に座り、敬語にタメ口がまざるようになるなどディテールにこだわって描いている。
「撮影現場でムードメーカーは、5tapに出入りしている三郎役の一ノ瀬ワタルさん。空き時間には、ワタルさんの恋愛相談などを新垣さんや龍平さんが聞き、5tapのマスター役の松尾貴史さんがアドバイスをするのがいつものパターン。リアル5tap状態になっています(笑)」
野生の獣のように自由に生きられない晶と恒星、さらに晶と京谷のつらい恋の行方、朱里との因縁、恒星と呉羽は、どんな結末に?
「堂々巡りを繰り返してばかりでしたが、この先、そこから抜け出すべく動き出し、加速していきます。恋も仕事も変えていこうとする姿に勇気づけられると思います」
こだわりの特製ビール&つまみ
晶と恒星の出会いの場をクラフトビールバーにしたのは脚本家・野木の提案。
「野木さん自身、クラフトビールが大好きでプライベートでも行きつけのバーがあり、私たちも取材をさせてもらいました。劇中のビール名は、野木さん命名です。
毎回、脚本が届くときに一緒に送られてくるのが、ビールのリスト。どのシーンでどんなクラフトビールをリクエストするかまで全部、指定されています」(松本P)
種類の違うビールの色、こだわりのグラスに加え、おつまみもナッツや乾きものだけではなく、和食の小鉢を出しているので、こちらもチェックして!