「僕が“こういう曲です”と説明するよりも、記者の方に感想を書いていただいたほうが信じてもらえる気がするんです。話したくなくて言っているわけではないんですよ(笑)」
今年4月の取材時より、さらに流暢になった日本語で語るソン・シギョン(39)。それもそのはず、この夏、難関といわれる日本語能力試験の最高難度(N1)に合格。韓国では、甘く魅惑的な歌声から“バラードの皇帝”“鼓膜彼氏”と呼ばれる国民的アーティストであり、抜群のトークセンスでバラエティーでもなくてはならない存在。
日本語力も向上させ“伝える”ための努力を惜しまないシギョンが、アルバム『君がいるよ』をリリースする。収録曲には、CrystalKayとの心に響くバラード『愛はなぜ』が。
「わざわざKayさんが韓国に来てくださってレコーディングをしました。楽しかったですね。そのあとの食事も。チメック(チキンとビール)の店に連れて行ってあげたら、すごく喜んでくれて。最近、韓国で流行っている塩抜きしたスパムに天ぷら粉をつけて揚げたものがあるんですけど、それもすごくおいしいって」
ドラマ『孤独のグルメ』をこよなく愛し、出演まで果たした彼だけに、話題は自然と食に。
「僕、料理もするんですけど、音楽と料理って似ていると思います。頭の中で“こうしたらいいものができる”って想像した料理や曲が実際にうまく作れる人が、いい料理人でアーティストですよね。ソン・シギョンの曲は身体にやさしいものにしたいとは思っています」
そっと包み込んでくれる唯一無二の歌声を「親からもらった楽器。頑張って手に入れた能力じゃないので、褒められると恐縮です」と謙遜する。
憧れの日本人アーティスト
アルバムに収録されているカバー曲さえもオリジナル曲のように聴こえたと話すと、
「僕も韓国では19年、歌手活動をしています。いい意味でも悪い意味でも癖があって、それが僕のブランドになっている。今、日本では新人ですが、本当に歌手デビューしたばかりではないですから、そのくらいは(笑)。
今回、スターダスト☆レビューさんの『追憶』をカバーさせていただきました。歌詞の相手(の男性)を恨むような感情は、歌手という立場で表現するときに、より豊かな表情をお見せできる気がして好きなんです」
もしかして、プライベートでも同じような経験が?
「もう39歳ですから、なかったとは言わないです(笑)。でも、運がよかったのか鈍かったのか、浮気をする場面を見つかったことがないんです」
というと、浮気をしたことが? と驚きながら聞くと、
「僕がですか? いえいえ、相手が浮気しているところを見たことがないということです。もしかして、僕が浮気をしたことがあるかという質問ですか? このインタビューは、僕のためのものですから、そういう内容はお引き取りをお願いします(笑)」
そう笑顔を見せた後、実は、この取材の前日、憧れの人に会えたことを話してくれた。
「小田和正さんのコンサートを見に行ってきました。3時間半、何度も泣きそうになりながらライブを拝見して、目の前でご挨拶するとドキドキしちゃって。日本の方は、同じ日本人に小田さんのようなアーティストがいることが幸せだと思います。もちろん、僕にも韓国に素晴らしい先輩がたくさんいますけど。
小田さんの著書を読んでいて、そこにサインをいただけたらと思っていたんですが、言えなかった。それと、毎年クリスマスに小田さんが発起人となってやっていらっしゃる音楽番組『クリスマスの約束』に出るのが目標です、とも言おうと思っていたんですけど、ダメでした。
あとで、スタッフに“なんで言わなかったの!”って怒られたんですけど(笑)、初対面で面倒だと思われたくなかったんです。僕はお会いできただけで十分です、本当に」
今の悩みごとは?
「僕の弱点は、年齢。ますます落ちていく体力。心は新人ですが、身体は中高年になってきちゃって。最近は、疲れが目に出るように。母も目が弱いんです。
父は、世界最強じゃないかっていうくらい、お酒を飲む。だから、20代のころ僕は父の(遺伝が強い)息子だと思っていたんです。30代に入り、母のように目が弱くなって、腰まわりに肉がついて、ふたりの息子だということを実感しています。
さっき、仕事で悔しい気持ちになることがあったんです。このあと韓国に帰る前に居酒屋でとことん飲みまくろうと思っています。感情は流されていきますが、脂肪はついていく。先の見えないダイエットです(笑)」
<リリース情報>
NEWALBUM『君がいるよ』発売中
初回盤(CD+フォトブック)
初回盤(CD+DVD)各4000円+税
通常盤(CD)3000円+税
◆NHK『テレビでハングル講座』(毎週水曜、夜11時30分〜)にレギュラー出演中
オフィシャルWEBサイト http://sungsikyung.jp/