テレビ業界ではよく「動物番組は失敗することがない」と言われているが、ひとくくりに動物番組といっても、その内容は様々だ。
『ダーウィンが来た!生き物新伝説』(NHK)のような、昆虫から哺乳類まであらゆる生き物の生態を科学的に検証するドキュメンタリー系のものから、『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)のような、バラエティー系のものまで幅広い。
常に視聴率が12%前後で安定している『志村どうぶつ園』に負けじとなのか、フジテレビも10月から、坂上忍が司会を務める新番組『坂上どうぶつ王国』をスタートさせた。
人気の秘密は“ナレーション”
そんな中でいま、じわじわと人気が出てきているのが、今年の4月からレギュラー化されたNHKの『もふもふモフモフ』。犬、猫、ウサギ、ハムスター、オウムなど、“もふもふ感”にあふれたペットが登場し、その愛らしい姿を紹介するという番組だ。
「癒し効果は抜群で、欠かさず見ているという女性が多いそうです。NHKはドキュメンタリー扱いしていますが、ほかの動物バラエティー番組と異なり、人気タレントを出演させて視聴者の目を引くようなことはせず、可愛いペットだけが見られるのがいいんでしょうね」(テレビ誌ライター)
愛らしい動物だけでも充分だと思えるが、人気の秘密はナレーションにあるという。担当するのは堤真一だ。
「普通のナレーションに加え、登場するペットたちが語っているように声をかぶせている、つまりアフレコなんですが、これが面白くて。かわいい子猫を演じるときは赤ちゃん口調になったり、大型犬を演じるときは“ガテン系”のキャラクターになってみたりと、ハジけっぷりがすごいんです」(民放テレビ局関係者)
本業の俳優でも、シリアスからコメディまでなんでも演じ分ける万能なイメージのある堤だが、今回はまた異なる一面を見せているようで、
「台本もあるのですが、アドリブも自由に入れ込んだりと、楽しまれている印象を受けます。普段とは違って顔もみせないナレーションのみの出演なので、解放感がすごいんでしょう。視者も“堤真一ってこんなキャラだったんだ……”と素顔をのぞける側面もあります。
本人は11月2日の『あさイチ』(NHK)に出演したときに、動物が好きか? と聞かれ、“そうでもないです、特に癒されることはない”と言ってましたが、あれは照れ隠しでしょうね(笑)。動物愛が伝わってきますよ」(NHK関係者)
ドキュメンタリー番組で俳優がナレーションを担当することはよくあることだが、たいていは“真面目”な語り口が多い。この“ハジけた”ナレーションの先鞭をつけたのは、同じくNHK『サラメシ』の中井貴一。
働くサラリーマンたちのランチタイムに焦点を当てるという番組だが、中井貴一のテンションの高い軽快なナレーションもあり、'11年からのレギュラー放送が開始されて以来、人気番組となっている。
それにしても、最近NHKは、決めゼリフ「ボーっと生きてんじゃねえよ!」が流行語大賞にノミネートされた『チコちゃんに叱られる!』など、ユニークな番組をスマッシュヒットさせている。その秘密はというと、
「企画力もさるものながら、失敗を恐れずユニークな番組作りができるのは、NHKの資金力のおかげでしょうね。スポンサーの口出しもないから、自由にできるのが強みです。加えて、民放では2〜30分番組に大物をナレーショのみで起用するだなんてそんな贅沢なことはできませんし、やろうという発想もないでしょうね。
出る側も、NHKのオファーだったら断る人はいないでしょうから、今後も大物俳優がNHKのバラエティ色の強いナレーションに抜擢される可能性も大きいです」(前出・民放テレビ局関係者)
中井、堤に続くのは誰!?
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。