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「今日はお肌の調子がよくないから、外に出たくない」「ノーメイクだと近所のママ友に会いたくないから、帽子を目深にかぶってスーパーに行こうかな」などなど、誰かの視線を気にするあまり、消極的な行動に出てしまうことってありませんか?

 そんなアナタは“視線耐性”が低下している可能性があるので十分ご注意を!

“リアルな自分とのギャップ”で耐性が低下

 実は「相手の視線に耐える力」を意味する“視線耐性”という言葉が注目を集めつつあるんです。

「昨今、ストレス耐性から派生して生まれた言葉です。ストレスにはたくさんの要因がありますが、他者からの視線もそのひとつ。その耐性が低下している人が若い世代を中心に増えているのです」

 そう教えてくれたのは、早稲田大学国際教養学部・森川友義教授。'08年から同大学での講義「恋愛学入門」が話題を呼び、恋愛に関する多くの著書がある恋愛学のエキスパートだ。

 そもそも、この言葉は若者を中心にツイッターなどで自然発生的に生まれたそうで、その背景にはSNSの影響が色濃く反映しているという。

「若い世代は、スマートフォンのアプリなどを使って、自分の顔写真などを加工することが珍しくない。デジタル依存度(=デジタルメディア接触時間)が増すにつれ、デジタル世界での見栄えを意識し、加工してしまう。結果、リアルな自分の姿との間にギャップを感じ、視線耐性が低下してしまう傾向にあるのです」(森川先生、以下同)

 マンダムが15歳~59歳の男女を対象にした「視線耐性とデジタルコミュニケーションに関する調査」によると、2人に1人が他者の視線が怖いとストレスに感じている。若い世代ほど顕著だが、同調査の「相手の目を見て話すことが苦手ですか?」では、10代、20代女性に次いで40代女性の「とても苦手」「やや苦手」の割合が高い。

 また別の「メディア定点調査」では、「性年代別メディア総接触時間」におけるパソコンやスマホなどデジタルメディアの接触時間で女性に関しては、40代が20代、15歳~19歳に次いで高い割合を示している。

 こうした結果から40代女性の視線耐性の低下とデジタル依存度が浮き彫りに。

「40代女性は、センシティブな年齢層ゆえに視線に対しても敏感になる」と森川先生。

「視線耐性の高低の決定要因は主に3点が挙げられます。第1に“デジタル依存度”。第2に“対人経験度”(=人と話す経験値)、最後に“自信”(=持って生まれた自信と成功体験の積み重ねによる自信)です。

 デジタル依存度が高くなれば、リアル社会での接点も希薄になり、自信を持ちづらくなる。そして、リアル社会を敬遠しがちになり、デジタル接触時間が増加していくという悪循環につながります

 40代になって容姿や健康状態の衰えを痛感し、20代のころの自分とのギャップに戸惑うことも少なくない。

生殖力のピークと社会的なピークは一致しない

「肌のピークは生殖力のピークと一致しています。女性の場合、動物としてのそのピークは19歳と言われている。女性のピークと聞くと20代というイメージを抱きやすいですが、20歳になったと同時に、酷な言い方をすれば下り坂に入るのです。

 ところが、子育てや仕事をしている40代女性は、今が社会的なピークだと感じる。生殖力のピークと一致せず、ギャップを抱きやすくなることが視線耐性の低下につながっていると考えられます」

 40代特有の視線耐性の低下へとつながるギャップがあるわけで、なるべくギャップを感じないように生活することが、視線耐性の強化になり、ひいては自信作りに関係してくるという。

「まずは“今日の自分がいちばん美しい”と認識すること。明日になれば、わずかであっても必ず衰える。今日の自分を楽しむことを心がけてほしい。そういった意識がないと、危機感も覚えません」

 失ったものを取り戻すことはできない。緩やかに下っていく自分を受け入れつつ、年相応の女性になっていくことができれば、他者の視線を強く意識することもなくなる。急激な変化に自分自身が戸惑えば当然、そのギャップにショックを受け、どんどん自信は失われていってしまう。

 さらに女性は、日々の体調の違いによって心境が変わり自信にも影響する。例えば“今日は肌の調子がいいからメイクののりもよくてうれしい”といったことが挙げられる。

「視線耐性の高低は昨日と今日で異なると考えられます。自信があるときは、そのぶん耐性も高い」と、森川先生。心身のバラつきに左右されない視線耐性を作り上げていくこともポイントといえそう。

 そのうえで森川先生は「他者は他者、自分は自分と割り切ることがポイント」と指摘。「グラビアポスター効果といって、グラビアポスターのようなスタイルや容姿のいい女性を見ると、隣の芝生が青いと感じ、自分に負い目を感じやすくなってしまいます」

 では、自分らしさを伸ばすには何が必要なのだろうか?

「自分が好きなものや自信があるものをひとつ見つけてください。イヤリングが好きならイヤリングにこだわる。笑顔に自信があるなら笑顔を意識するなど何でもいいんです。

 すべてを相対的に伸ばそうとするから疲れるわけであって何かひとつ自分が“これだ”と思えるものを伸ばす。すると、自己投資をしていることもあって、次第に自分に自信がついてきます。何もしないのがいちばんよくありません

幸せは人に伝染する

 ある対象を評価するとき、それが持つ顕著な特徴に引きずられ、ほかの特徴の評価が見えづらくなる現象を「ハロー効果」という。視線耐性の低下と紐づく自信の喪失を防ぐために「ハロー効果」を利用するのも対策のひとつ。

 現在、視線耐性度をチェックできるスマートフォン向けサイト『GATSBY 全国統一視線耐性テスト』もあるため気になる人は、まずは自分の視線耐性度をチェックしてみるといいだろう。

幸せが人に伝染することは、科学的に証明されています。奥さんが視線耐性の努力をしていたら、ズボラな旦那さんも“自分だけダサいままはイヤだ”と意識し始めるようになる。

 パートナーがいる方であれば、お互いにケアをし合うだけで、視線耐性の低下をブロックすることができる。逆に、何もしなければ視線耐性が低い状態が常になり、家族や子どもにまで影響を与えてしまうかもしれません」

 他者の目を気にしない家庭に育った子どもが、ズボラな性格に育つ可能性があるかもしれない……。

「視線耐性と聞くと、容姿にばかりフォーカスが当たりがちですが“自信の低下”と密接につながっています。どれだけ美しくても中身に自信がなければ、視線耐性は低下してしまう。容姿に特化して考えるのではなく、自分の生活度や幸福度を豊かにするという視点が必要。“プチ幸せ探し”が、視線耐性低下にブレーキをかけます。

 今後はよりスマホをはじめデジタルな社会とつながっていく。その中でいかにして、リアルな自分を見失わないか? 魅力的な自分作りをするうえでも視線耐性をチェックしてほしいです」

 視線耐性の低下は、自信の低下ともシンクロする。自信に満ちた魅力的な生活を作るために、あえて視線耐性度を意識し心がける。逆転の発想で、魅力的な自分を作り出してみてはいかが?

(取材・文/我妻アヅ子)


《PROFILE》
森川友義教授 ◎もりかわ・とものり 1955年、群馬県生まれ。早稲田大学国際教養学部教授。ボストン大学政治学修士号、オレゴン大学政治学博士号取得。専門分野は進化政治学、日本政治。近著に『黄昏流星群学~54歳からの恋愛聖書~』(小学館) など。

《INFORMATION》
『GATSBY 全国統一視線耐性テスト』https://shisentaisei.com/