「実は、父親がリンゴ農園をやっていたこともあるんです。もともと小学校の先生だったんですけど。もちろん、今回演じた“リンゴ農園ひと筋”のキャラクターとは違いますけどね。
でも、DNAをどこか引き継いでいるだろうし、そういった深い部分では何か役に反映されたところがあったのかなと思います」
子育てに答えはない
“泣ける”と話題の鉄拳のパラパラ漫画『家族のはなし』が映画化! 上京したひとり息子を見守り続ける、リンゴ農家の父親を時任三郎(60)が演じている。
「(劇中の父子関係について)もう少し本心で話し合える間柄だったらいいのになと思いました。会話はしているけど、うわべだけの会話で本心では話し合っていない。それだけに最後はグッとくる結末が待っているんですけどね」
と穏やかに笑う姿は、まさに“優しい父親”そのもの。実は時任、'07年にはベストファーザー賞を受賞している。
「本当にいいお父さんなのかな(笑)。自分ではわからないです。
子どもはいちばん上が27歳で、次が25歳、いちばん下が19歳になったところ。思うのは、こう育てたからこうなるという答えはないんだなと。1+1=2とならないのが子育て。いまだに何が正解かはわかりません」
子どもが小さいころには、ニュージーランドに移住。その間は俳優業もセーブして子育てにも寄り添った。
「仕事をサボっていただけですよ(笑)。ただ、子育てにかかわりたかったんだと思います。いま思うと子どものためというよりも、自分がそうしたかっただけなんだなって」
とても大らかな人柄だが、そこには自身の父親の存在が影響しているという。
「厳しく育てられてきたので、親父がすごく怖かったんです。だから自分はそうしたくないという意識はありました。
もちろん何が正解かわかりませんけど、とにかく自分の子どもには、基本的にやりたいことはやらせるようにしたいなと。例えば“こうしたほうがいいんじゃない?”とアドバイスはしてきましたが、“こうしろ”とは言わないようにしてきましたね」
夫婦円満の秘訣
よき父である時任は、実はよき“夫”でもあり、最近、夫人がとあるインタビューで時任との仲睦まじい様子を語っていた。ということで、夫婦円満の秘訣について聞いてみると、
「妻はこうあるべきとか夫はこうあるべきとか、そういう決めつけはしないほうがいいのかなと。
仕事も家事も子育ても、どちらがやらなければいけないとかもないし、そういうのはお互いの中で自然とバランスがとれていればいいんじゃないかなと思います」
と、照れくさそうに答えてくれた。
まだまだ頑張ります!
現在60歳。長いキャリアを積み重ねていくうちに、気づけば仕事との向き合い方も変わってきた。
「若いころは、“これはこうするんだ”みたいな考えを、周りに押しつけがちだったんですが、それがだいぶなくなりました。夫婦と同じで、チームとしてのバランスが大事なことに気がついたんです」
今後、挑戦したいことは?
「油絵かな。60歳になったら油絵を始めると宣言していたんですが、全然その気が起こらなくて。61歳になってもやらなかったら、あきらめます(笑)。
仕事では自分のキャラクターを認めてくれたうえでキャスティングしてくれることに、すごくありがたみを感じていて。求めてもらえるよう、まだまだ頑張っていきたいですね」
好きなものは?
「昔から写真が好きで、中学生の終わりくらいから撮り続けているんです。
これまでは撮りためていましたが、今はツイッターやインスタグラムに上げていて。誰かに見てもらい、何かを感じ取ってもらったときに初めて写真を撮った意味が出てくるなと思ったんです。見てくれた方の反応も見られるし、すごく面白いですね」
リンゴ農園を営む両親(時任三郎、財前直見)のもとを離れ、上京してバンド活動を始めたひとり息子・拓也(岡田将生)。夢に破れ挫折しても、どんなにつらく当たっても、いつも優しく出迎えてくれたのはほかならぬ父親だった―。