松坂慶子

 NHK朝ドラ『まんぷく』に出演中の松坂慶子の評判がうなぎのぼりだ。

 主人公・福子の母親・鈴を演じる彼女の、“憎まれ口を叩いても嫌味がない”絶妙なキャラクターぶりに視聴者から絶賛の声が集まっているという。

 なかには昭和を代表する“お母さん役者”として、たくさんの人に親しまれていた、京塚昌子さん('94年没)や池内淳子さん('10年没)を彷彿させるという声も多いが、松坂にはふたりにはなかった、隠れた魅力があるーー。

 やはり、どことなく艶っぽさがあるのだ。一口にお母さん役といっても、演じる女優の年齢層は幅広いが、松坂さん世代くらいになると“母性”の方目立つ。しかし、彼女からはどうしても“女”の部分が滲み出ているので、男性だけではなく女性から見ても、違った魅力があるように思えるのではないか。

 加えて、絶妙なチャーミングさも魅力の一つだ。

 これらの彼女の良さは、キャリアから生まれ出たものに他ならない。

カラダ露出も辞さない姿勢

 松坂といえば、お父さん世代の誰しもが思い浮かべるのが『愛の水中花』。'79年にリリースされたシングル曲で、当時放送された、松坂自身が主演する連続ドラマ『水中花』(TBS系)の主題歌でもあった。

 ドラマでは、妖艶なバニーガール姿の松坂が同曲を歌う映像が流れ、それを観るためにサラリーマンたちは帰宅を急いだものだった。

「曲は大ヒットして、彼女は歌番組にも出演するようになりました。歌うときはいつも深いスリットの入った黒いドレスと、網タイツというセクシーな衣装で登場し、番組の視聴率は一気にアップしました」(テレビ局関係者)

 お父さんより上の世代では、'71年に放送され人気を博したドラマ『なんてったって18歳!』(TBS系)に出演していた松坂が懐かしい。

 このドラマは少女漫画が原作のラブコメディ『おくさまは18歳』(TBS系)の続編で、松坂はコミカルな役を見事に演じている。その後は、多くのドラマや映画に出演し、名女優への階段を上っていく。

どんな役もこなせ、濡れ場を演じることも、ハダカも辞さないその姿勢は、高く評価され、引っ張りだこの女優になりました」(前出・テレビ局関係者)

 '90年に、ギタリストの高内春彦と結婚するのだが、当時それほど名前の知られていなかった高内との結婚は波紋を呼ぶことに。

当時は格差婚と言われ、“どこの誰かもわからない男に娘をやれない”と、彼女の両親が大反対したんです。皮肉なことに『まんぷく』で、鈴が、福子と万平と結婚に反対したのと同じですね」(スポーツ紙記者) 

 しかしふたりは結婚。その後はニューヨークで生活していたのだが、'00年に『東京電話』のCMに登場した松坂に驚いた人は多い。

「CMでは大根を持った主婦をコミカルに演じているのですが、驚いたのは彼女の太り具合でした。今ほどではないですが、それまでの松坂からは想像できないほどで、ガッカリしたファンは、多かったでしょう」(前出・スポーツ紙記者)

 だが、それから2年後、さらに驚くことが起きる。50歳にして、ヌード写真集『さくら伝説』を発表したのだ。

 言われなければ50歳とわからない、肉感的だが太っていない、そんな流麗な肢体を披露した彼女。『ライザップ』もない時代に、見事にシェイプアップを成し遂げたことには感服するばかりだが、それから十数年、彼女は“母親役”の座を揺るぎないものにした。

「朝ドラでは、慈愛に満ちた笑みを浮かべ、意地悪をしても憎めないチャーミングな“母親”を演じていますが、お父さん世代はどうしても“バニーガール”の彼女が今も頭から離れないんです(笑)」(前出・テレビ局関係者)

 だが、50歳を前にして、松坂が急に“おちゃめ”になったわけではない。

 お父さん世代よりもっと上の世代は、彼女のちゃめっ気溢れる姿を知っている。

 松坂が『劇団ひまわり』に入団した直後のこと。当時、彼女が中学生だった15歳のときに、子ども向けコメディドラマ『忍者ハットリくん+忍者怪獣ジッポウ』(東映東京撮影所制作)でテレビ初出演。

 その後も'73年には、ザ・ドリフターズ主演のコメディ映画『大事件だよ全員集合!!』でマドンナ役に抜擢、コミカルな役を見事に演じている。

 まさに、“バラドル(バラエティーアイドル)”のような存在で、ハートを射抜かれた“男子”は多かった。

朝ドラでは、ふくよかで、優しそうな笑みを浮かべ、意地悪をしても憎めない、チャーミングな“お母さん”を演じていますが、ときおり、吉本新喜劇ばりの“ボケ”をかますシーンもあり、笑えます。その演技力は、若いころに培われていたんですね」(前出・テレビ局関係者)

 今年の紅白には、何かしらの形で出演する可能性は大きい。セクシーでコミカルな『愛の水中花』が聴けるかも。

<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。