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 忘年会シーズンを迎え、普段より暴飲暴食しやすいこの時期。若いつもりで、つい羽目をはずしたくなるけれど、誰もが平等に年をとる。たとえいまは健康であっても、それを支えるさまざまな身体の機能は、加齢とともに衰えていくのが現実……。

「年齢が高くなればなるほど、身体の免疫力は低くなります」

 と指摘するのは、免疫学の権威として知られる、順天堂大学特任教授の奥村康先生。実際、年齢が進むにつれて、さまざまな病気にかかりやすくなり医療費もかさんでいく。生涯にかかる医療費のうち、約6割を65歳以上、4割を70歳以上が占めるというデータもあるほどだ。

 年齢とともにさまざまなリスクが増えてくるけれど、日常のちょっとした工夫で状況は変わってくる。

「楽しい食事と、規則正しい生活。ストレスをため込まないこと。毎日を笑顔で過ごせば、免疫力は高くなります」(奥村先生・以下同)

 そこで今回は、美味しく楽しくがんを予防するための食事術を、奥村先生に教えてもらった。

ストレスは大敵!

 日本人の国民病、がん。厚生労働省の統計によると、2人に1人が生涯でがんにかかり、3人に1人が亡くなっているという計算だ。さまざまな研究・開発が進んだ現代では、がんは発見が早ければ決して「治らない病気」ではなくなった。しかし、高齢化に伴い罹患率が増えているのも事実だ。

「がんにはさまざまな予防法がありますが、手軽にできるのは、免疫力を上げること。なかでも、身体の中をパトロールしているNK細胞を活性させることが重要です

 人間の体内では、がん細胞が毎日のように生まれている。だが、すべての人が発症するわけではない。“がんの芽”のうちに、身体の中をパトロール中のNK細胞が駆除してくれるからだ。

「NK細胞が活性化することを“NK活性”といいますが、残念ながら年齢とともに低下していきます。40代以降は意識してNK活性を引き上げなければなりません」

 不規則な生活、睡眠不足、二日酔いになるほどの飲酒、激しい運動、ストレスをためる……。

 こうした毎日を送っていると、NK活性は引き上げられるどころか反対に下がってしまう。

「特に、逃げられないストレスはNK活性を下げる大きな原因になります。高校生を期末試験後に調査したところ、NK活性が下がっていたというデータがあります」

 ひとたびNK活性が下がってしまうと、もとに戻すには時間がかかる。そのため、日ごろから意識して、できるだけNK活性を下げないよう努めることが欠かせない。

「なかでもストレスは大敵です。ストレスがある人は、ない人に比べて、がんになりやすいというデータがあります。私がオススメしているのは“テキトー生活”。仕事で失敗してもしょうがないと開き直り、お酒でも飲んで寝てください。多少の飲酒や喫煙は、免疫力を上げるともいわれています」

 日中はストレスを受けながらも、それをバネにして活動し、夜はリラックスモードに切り替える。

「悪いことは他人のせいにして、しらっとしている図太さが必要です(笑)」

乳酸菌でNK細胞を活性化

 NK活性は、食事を通して引き上げることもできる。

「乳酸菌やビフィズス菌の一部が、NK細胞の活性力を高めることが研究で明らかになっています。腸内には免疫にかかわる細胞の70%が集まっているといわれています。ヨーグルトなどの発酵食品をとって、腸内環境を整えておくことが重要です」

 発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌が腸内環境を整え、さらに免疫系統を刺激して活性化してくれるという。

 ショウガなど辛味のある食材を少しとるのもオススメ。

「ショウガには身体を温める効果があり、体温が上がると、NK活性も引き上げられます。ただし、人の体温はある程度、決まっているので、少量で十分です」

 また、アブラナ科の野菜も、がん抑制効果があるとされている。奥村先生のオススメはブロッコリーとキャベツ。

 特に、ブロッコリーの新芽に多く含まれるスルフォラファンには、強力な抗がん作用があるといわれている。

「キャベツは塩漬けにして、ドイツ料理でおなじみの“ザワークラウト”にすると乳酸菌もとれます」

 食材選びも大切だが、奥村先生はなにより「食べる喜び」が予防につながると説く。

「私は食べたいものを食べることも、がんを防ぐ秘訣だと思っています。楽しく食べることをいちばんに考えましょう。そして、毎日をほがらかに笑って過ごすこと。笑いはNK活性を上げて、免疫力を高めることにつながります」


がん予防のためのイチオシレシピ
バナナヨーグルト、ショウガハチミツがけ

NK活性がアゲアゲ!
バナナヨーグルト、ショウガハチミツがけ

【材料(1人分)】
バナナ…1/2本、ヨーグルト…100グラム、ショウガ…少々、ハチミツ…小さじ1
【作り方】
ショウガをみじん切りにしてハチミツを混ぜておく。バナナをひと口大に切りヨーグルトをかけて、さらにショウガを混ぜたハチミツをかける。ヨーグルトが腸内環境を整えNK活性を高め、腸内細菌のエサになるオリゴ糖を含むバナナが善玉菌を増やしてくれる。少量のショウガには体温を高め免疫を活性化させる効果が。


《PROFILE》
奥村 康先生 ◎おくむら・やすし。医学博士。順天堂大学医学部免疫学特任教授、アトピー疾患研究センター長。千葉大学大学院医学研究科修了。スタンフォード大学リサーチフェロー、東京大学医学部講師を経て現職。免疫学の国際的権威。『長生きしたけりゃテキトー生活を送りなさい!』(海竜社)など著書多数