誰もが願う“ぴんぴんころり”の健康長寿。3大疾病と呼ばれる『がん、急性心筋梗塞、脳卒中』も、近ごろは生活習慣病のひとつと考えられるようになった。
メリットばかりの“野菜たっぷり生活”
そんな中、「日々の食生活こそ、いちばんの薬」と話すのが、医師で作家の鎌田實先生。脳卒中による死亡率が全国2位だった長野県を、2010年には、男女とも平均寿命日本一に導いたことで知られている。どうやって長寿県へと生まれ変わらせたのか。
「塩分をとりすぎるせいで高血圧になり、脳卒中で倒れる人が多かったので、まず減塩運動を推進しました。それと並行して、野菜たっぷりの食事を提唱したのです。気がつけば、長野県は野菜摂取量が日本一になっていました」
野菜のどこに長寿の秘密が隠されているのか。
「野菜には、大きく分けて3つの効能があります。
第1に、慢性炎症を抑えるため、動脈硬化を防ぎます。2番目に、老化を防ぐ抗酸化力が強く、しかも脳細胞の慢性炎症を抑えるため、認知症やアルツハイマーの予防にもなります。そのうえ、細胞のがん化の引き金になる慢性炎症も防ぐ。まさに野菜をたっぷりとる食生活こそ、長寿日本一の理由です」
国が定めた理想といわれる、1日あたりの野菜の摂取量は350グラム。生野菜でとるには結構な量だ。
そこで、鍋、温野菜、干し野菜、野菜ジュースなど、野菜を飽きずに食べる食生活の指導も行った。
「私も朝食には必ず野菜ジュースを飲みます。野菜やフルーツに加え、きなこやごま、ヨーグルト、牛乳・豆乳など骨を強くするものを入れると骨粗鬆症の予防にもなります」
味噌汁に野菜をたっぷり入れた“具だくさん味噌汁”も、手軽に野菜をとる方法としてオススメ、と話す。
さらに鎌田先生は地元の名産品にも目を向けた。それが、寒天である。
「茅野は江戸時代から寒天の名産地。寒天は食物繊維の王様です。低カロリーで腹持ちがよく、減量中でも気にせず食べられます」
この寒天に抗酸化パワー抜群のトマトを加えた『トマト寒天』は、今では鎌田先生の看板レシピのひとつとしてテレビでも紹介され、大ヒットしている。
鎌田先生がいま、寒天と並んで注目している地元の食材がある。それは、今年10月に情報番組で紹介したことから、生産が追いつかないほど爆発的に売れている高野豆腐である。
高野豆腐は、丸大豆を粉砕し、豆乳ににがりを加え、ゆっくりと凍らせて作られる。
「高野豆腐は豆腐に比べて、体内の消化酵素で分解されにくいレジストタンパクがケタ違いに豊富。コレステロールや中性脂肪、血糖値を下げる働きがあります。そのうえ、免疫力をアップさせる食物繊維、カルシウム、マグネシウム、鉄分なども豊富です」
和洋中どんな料理にも合うし、乾物なので長期保存が可能だ。
「これを1日1枚食べるだけで健康状態が劇的によくなる救世主です。粉末状にした『粉豆腐』をパン粉がわりにしてハンバーグを作るなど、応用範囲が広く魅力的です」
50歳からの生き方が大切
鎌田先生は長寿について、ある哲学を持っている。
「おいしいものを食べないで我慢ばかりしていると幸せな気持ちになれません。だから食べない健康法より、私は食べる健康法。食べて運動して、筋肉を“貯筋”することが長寿の秘訣。そのためには、タンパク質をしっかりとることも大切です」
貯筋するにはまず、よく歩くこと。さらに、御年70歳ながらも独自の「スクワット」「かかと落とし」も実践している。
「長寿は、50歳から70歳までの生き方が大切。減塩、野菜はたっぷり、運動したうえでおいしいものを食べる。これが最後まで長患いしない、ぴんぴんころりの極意です」
手間いらずのイチオシメニュー
サバ味噌缶詰とキャベツの炒め
【材料(1人分)】
サバ味噌缶…1缶、キャベツ…1/4玉、ショウガ…1かけ(おすしのガリでも可)
【作り方】
キャベツをざく切りにし、ショウガかガリはせん切りにする。フライパンは油をひかずに中火であたため、缶から出したサバを汁ごとフライパンの中央に置き、まわりにキャベツを置く。サバの油と味噌ダレがキャベツにしみるのを待ち、サバはいじらずにキャベツを2回くらいざっとかき回す。器に盛って、ショウガかガリを散らして完成。
《PROFILE》
鎌田 實先生 ◎かまた・みのる。諏訪中央病院名誉院長、地域包括ケア研究所所長。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院に赴任、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導いた。東北はもとより、講演活動、テレビ番組出演などをこなすかたわら、全国各地の被災地にも足を運び多方面で活躍中。著書に『がんばらない』(集英社)など多数