新海誠監督

 興行収入250億円を突破した大ヒットアニメ映画『君の名は。』を手掛けた新海誠監督(45)が先ごろ都内で会見し、新作アニメ映画『天気の子』を来年7月19日に公開することを発表した。

 前作の公開が2016年8月。それから3年後に、「もうワンチャンあるかも」と新海監督が興行収入に期待する、あらかじめヒットを約束された話題作が登場する。すでに世界中から、配給のオファーが殺到しているという。

ブラック化した現場

 会見では、監督の他にプロデューサー、声優担当の俳優が登壇し、それぞれに新作への思いを明かしたが、会見の端々に見え隠れしたのは、アニメ制作現場の人手不足だ。

『君の名は。』の儲けで、新たに制作スタジオを作ったという。そのため、3か所のスタジオをスタッフが電車で移動していた『君の名は。』のときのような不便さはなくなり、労働環境が格段によくなったにもかかわらず、新海監督は、

「アニメーターもCGスタッフも足りているという現場はどこにもないと思う」

 と、アニメ制作現場全体のおかれた現状を憂い、

「日々タイトな状態。あと半年ぐらい続くんでしょうね」

 と、低めのトーンで、現場がかなりブラック化していることをうかがわせた。

 配られた資料に記されていた公開日は、2019年7月19日(金)。しかも完成予定は2019年7月! ぎりぎりに完成して、2、3度の完成披露試写会を行って封切り、という慌ただしい流れが、誰の目にも浮かぶ。

 その公開日について、登壇者が慌てふためく場面があった。

「誰が7月19日公開に決めたの?」「僕らとしては夏公開でいいんじゃないかと」そんな会話がやり取りされたのだ。

 そのことからも、ぎりぎりの進行状態であることがうかがえる。

「配給は東宝。上場企業ですから、夏休みに入って一番稼げるスケジュールで公開したい、それで収益を上げたい、ということを株主にもアピールしたいわけです。そのしわ寄せは、結果、現場のアニメーターやCGクリエーターにいくわけですからね」(映画担当記者)

 東宝は2017年8月18日に公開したアニメ『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の公開前に、マスコミ試写会の予定を延期した過去がある。7月12日から予定していたそれを、制作が遅れたため延期したが、8月18日の公開日は死守できた。

 東宝の川村元気プロデューサーは、

「7月19日公開と書いてあるんですけど、恐怖でしかない」

 と、配給側とは思えない本音を吐露。新海監督は、

「死守するつもりでやっています」

 と、語ったが、さて、綱渡りの完成→公開のスケジュールがうまくいくのかどうか。

 来夏に向け『天気の子』のアニメーター&CGクリエーターの暑い夏がすでに始まっていることだけは、疑いようもなく確かなようだ。

<取材・文/藪入うらら>