とろサーモン久保田と、スーパーマラドーナ武智が、インスタライブ上で発した『M-1グランプリ2018』審査員の上沼恵美子を批判する発言が大きな問題となり、現在もメディアを賑わせている。
「この騒動があまりにも大きくなり、肝心の王者である『霜降り明星』の影が薄くなってしまったことが気の毒ですね」
と、あるテレビ関係者は言う。
「当たり前の話ですが、実力が評価され王者は誕生します。しかし、漫才の実力と、地上波バラエティでの人気は比例しない場合があり、よく『近年のM-1王者はイマイチ売れない』と言われることがあります」
違う形であらためて注目を集める形となった、昨年の王者は、とろサーモン。さかのぼると、2016年は銀シャリ、2015年のトレンディエンジェル、2010年の笑い飯、2009年パンクブーブー……。
「彼らが決して売れてないとは言いませんが、初代の王者・中川家(2001年)やフットボールアワー(2003年)、アンタッチャブル(2004年)、チュートリアル(2006年)、サンドウィッチマン(2007年)に比べた場合、一般的な知名度には差があることは明らかです。
彼らが売れ続けていることで、空き枠がなく渋滞を起こしているとも言えるかもしれませんが」(前出・テレビ関係者)
王者の本当の実力
今回の王者の霜降り明星は、久保田と武智に話題をさらわれる形で“空気”になってしまう可能性はないのだろうか。
「そんなことはないと思います」
と、人気番組を手がける放送作家は言う。
「優勝直後に呼んでもらえるような生放送のワイドショーや情報番組では、久保田さんたちの騒動を大きく扱い、大会そのものが全く違う注目を集めることになったのは、ある意味、事故のようなものです。
霜降り明星の実力が低くて他の人に注目が集まったのではなく、さらに話題を集めてしまう出来事が起こっただけなので、ちょっとかわいそうな状態ですよね。
しかし、今の時期に収録している年末年始放送の番組には、たくさん露出するはず。そこで、あらためて実力を知ってもらい認知度をあげることはできると思います」
さらに、今回M-1王者になったことで、今後は追い風になる可能性も高いと前出の放送作家は続ける。
「上沼さんへの暴言騒動があったばかりに、逆にグランプリなのに注目されないコンビだと、多くの人に認識されました。大会そのものはものすごく話題になったわけですから、そこは得したと考えることはできます」
そんな霜降り明星の笑いのスタイルについて、「マーケティングに近い手法を取り入れている」と言う。
「ライブで様々なネタの内容を変えて試したり、同じネタでも、ボケやツッコミを少しずつ変えていくんです。そんな中で一番ウケたものや、手応えがあったものを組み合わせてM-1に出たようです。
結果的に面白いものを見せられ、ネタを披露する4分間が、職人的な作りあげ方で構成していく和牛とは好対照だと思います」
近年の『M-1』は、常連化したような実力派が登場し、しのぎを削る形が多いが、そんな状況の中、霜降り明星は新鮮で、優勝にふさわしい実力を持っているという。
「関西でも、“これからくる”と言われ続けてきました。R-1でも、2人とも決勝に残るほど、それぞれの力もある。トークやロケもいけるオールラウンダーですし、M-1の場合は一発屋というよりじわじわ売れてくることも多いですから、これから期待できることは間違いないです」
とろサーモン&スーパーマラドーナ騒動が沈静化してからが、霜降り明星の本格的な活躍のスタートとなりそうだ。
<取材・文/渋谷恭太郎>