香川県の曾祖父母とは公園でボートに乗り無邪気に遊んでいたという結愛ちゃん

 東京都目黒区のアパートで、継父の船戸雄大被告(33)と実母の優里被告(26)から虐待を受けた長女の結愛ちゃん(享年5)が亡くなったのは今年の3月2日。あれから9か月がたった。

「あまりに悲しい事件だったけど、結愛ちゃんの言葉が世の中を動かしたんだよ。2度と同じような子を出しちゃいけない。今もアパートに手を合わせにくる人がいます」

 そう話すのは現場アパートの近くに住む60代女性だ。

毎日が地獄だったろう

 事件を受け、政府は児童虐待防止の緊急総合対策を打ち出し、東京都は児童虐待防止条例の策定を進める。全国で初めて条例に保護者による体罰禁止の規定を盛り込む骨子案を発表した。

 両被告は6月に保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕され、同月末に東京地検に起訴された。逮捕と同時に警視庁が公表した結愛ちゃんのノートには覚えたてのひらがなで《もうおねがい ゆるして ゆるしてください》と許しを請う悲痛な言葉が残されていた。

 ノートが公表された当初、現場アパートには花やおもちゃなどを手向ける人が多かった。警視庁はお供え物を回収し、現場近くの寺で供養した。現場近くの別の寺ではこんな話も聞かれた。住職は、

「6月末ごろに60代ぐらいの男性がおもちゃや飲み物を持ってきて“アパートのところには置けないから預かってほしい”と言うんです。私も同じ年の孫がいて他人事とは思えない。ご縁をいただいたと供養させてもらっています」

 お供え物に添えられた便箋には、《毎日毎日がまるで地獄だったろう。遊ぶって「あほみたいなこと」じゃないんだよ。遊ぶって楽しい事なんだよ。面白い事なんだよ。このぬいぐるみと一緒に安らかに眠ってね》と書かれていた。

 子どもらしく遊ぶことすら許されず、暴力をふるわれ、十分な食事をもらえず、どれだけ苦しかっただろうか。周囲は誰も気づけなかった。

 雄大被告がよく通っていたという居酒屋の店主は、

「雄大は明るくていいやつでした。“結愛が小学校にあがるときはランドセルの色をどうしようか”とか“どこに連れていこうか”と話して可愛がっているんだとばかり……。“妻がこっちに友達がいないから今度紹介させて”なんて話をしていたら事件が起きたんです」

 しかし、近隣へ転居の挨拶に来たときも、節分の日に神社で行われた豆まきにも、近隣の飲食店へ訪れたときも、両親と結愛ちゃんの弟の3人だった。結愛ちゃんの姿はどこにもなかった。

 現場近くに住む50代男性は、

「痛ましい事件だけど、残された長男はどうしているんだろう。大きくなって事実を知ったときにどう思うか。考えただけで胸が苦しくなるよ」

 とうつむき静かに話した。

 品川児童相談所の林直樹所長は長男のその後について、

「現在は児童福祉施設で保護している。健康状態は問題ないと思います」

 と明かす。今後の引き取り先などについてはどうか。

「子どもの福祉にとってよりよい環境をどのような形で整えるかが大切ですので……。現時点でお答えできることはありません」(林所長)

 今年の9月に長男は2歳となったが、両被告は実子の誕生日に何を思ったのか。