映画賞の季節だ。
新聞社主催の映画賞が発表されはじめ、年明けには老舗映画雑誌『キネマ旬報』の映画賞、そして3月には日本アカデミー賞の授賞式、とスケジュールが続く。
年明けに正確な数字はでるが、今年の映画興行収入は、2000年以降でベスト3に入る成績を残せそうだという。
東宝の代表取締役社長・島谷能成さんが、先般開催された第43回報知映画賞の表彰式で、そんなことを話していたそうだ。
賞というものは、選考が公開で行われるものは少なく、密室で行うのが常だ。その中では、喧々囂々(けんけんごうごう)としたやり取りがあり、1票差で決定する運命があったりする。審査員の何らかの思惑が働くこともある。
一般の映画ファンはそんなことを知らず、結果だけを受け止めれば済む。
自分でほめちゃうのは野暮
そういえば、報知映画賞。作品賞・邦画部門を受賞したのは『孤狼の血』。主演男優賞に輝いたのは同映画に出演した、俳優の役所広司(62)だ。
カンヌ国際映画祭でパルムドール(最高賞)を取った『万引き家族』の影は、助演女優賞を受賞した樹木希林さん(9月15日に死去)の選考対象作品として出てくるだけだった。
「海外で評価されたから即、国内でも、となる必要はありませんが、いろいろ選考基準があるのでしょう」
と映画評論家は冷ややかに見る。そしてこんな事情を漏らす。
「主演女優賞は『人魚の眠る家』の篠原涼子が受賞しました。でも、その原作の出版社は幻冬舎で、その社長が選考委員会に名を連ねているんです。確かに彼女の演技力は素晴らしのですが、なんだかねぇ、という結果です」
さらに、作品賞・邦画部門受賞の『孤狼の血』についても、
「『孤狼の血』は製作委員会方式で作られていて、東映や電通、朝日新聞社といった企業が出資しています。その中に、なんと、報知新聞社の名前があるのです。
つまり、自分が出資した映画を、自分が主催する映画賞で表彰するという、なかなか厚顔な選出ですよ。確かに映画はよかったのですが、自分でほめちゃうっていうのはちょっとねぇ、野暮」
自社主催の映画祭ではあえて選考せず、他の映画祭で選ばれて大いに喜ぶ、という粋な振る舞いは、映画の圧倒的な出来の前にしぼんだか。
お手盛りという言葉を、ふと思い出した。
<取材・文/薮入うらら>