ここ最近ワイドショーがこぞって取り上げていたのが、自称“桑名正博の隠し子”を名乗る男が全国各地の飲食店に出没しているというニュース。実の息子であるミュージシャンの美勇士もスタジオ出演し、騒動にコメントをするなど、“素人”ながら世間を大いに賑わせた。
彼が本当に、桑名さんの息子なのかどうか、事実はわからないままだが、芸能界に“ニセ者(物)”はつきものだ。
SNSでは“なりすまし”が横行し、なくなることがない。テレビの鑑定番組では、精巧に作られた贋作(がんさく)が出てくることもある。
顔はもちろん体つきもそっくり
私が経験した“ニセ者”との出会いは「ある有名スポーツ選手と交際している女性がいる」という情報提供を、その女性の知人から受けて動いた取材でのこと。
情報をもとに張り込んでみると、確かにその有名選手らしき人物がその女性の自宅に出入りしていた。違和感がありつつも取材を進めたが、結局、この人物がまったくの別人であることがわかった。
ほかにもこんなことが。都内マンションの住民からの情報提供で、当時、人気だったお笑い芸人が、同マンションに住む女性の部屋に度々やってくるという話があった。
張り込んでいたら、住民が言っていた芸人がやってきた。
「よし、いただき」
と、写真を撮って、取材を開始したのだが、実はその日・その時間、住民が言うところの芸人さんは地方の劇場でライブ中ということが判明。顔はもちろん、体つきまでソックリだったから、もしかして兄弟がいるのかも……と思ったが、そういうこともなかった。
今回の場合、自称・桑名さんの息子は、母親から、桑名さんの子どもだと告げられたと証言している。すべてが事実かもしれないし、母親がついたウソを、彼が信じ続けている可能性もある。あるいは、彼の言っていることすべてがウソなのかもしれない。
母親が亡くなっている以上、確かめようがないが、DNA鑑定をすれば、一発でわかること。それをしないのは、残された桑名ファミリーの優しさでもあるのか。
さて、芸能界では今回のような“隠し子”の話はよく出てくる。丹波哲郎さんや松方弘樹さんなど亡くなった大物俳優や、今をときめく、市川海老蔵や片岡愛之助ら歌舞伎役者たちなど、隠し子の存在が報じられた例は多いが、
「過去に丹波さんの隠し子である森正樹さんがミュージシャンとしてデビューしたことがあります。亡くなる直前に正樹さんに“俳優になれ”と語ったそうですが、隠し子だった息子にそんなことを言えるのなんて丹波さんくらいじゃないでしょうか。
たいていの芸能人は隠し子が発覚した場合、存在は認めます。でも、“自分の跡を継げ”なんてなかなか言えませんよ。子どもからしても、自分を“捨てた”親のいる世界に行きたいとは思わないのでは。自分の父親が誰かを知りつつも、隠して過ごしている人は多いでしょう」(ワイドショースタッフ)
しかしながら、今回の報道を見て身に覚えのある芸能人も多く、その人たちは戦々恐々としているそうだ。
だが、それもこれも、芸能界の“風物詩”と言えるのでは?
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。