12月20日、オリコンが発表した年間ランキングで、安室奈美恵がアーティスト別の年間売上ランキングで、190億円を記録し、2位の乃木坂46の103億円に大きく差をつけ1996年以来の1位を記録した。
安室はアルバム部門と音楽DVD/ブルーレイ部門でも、分野別の1位を記録。9月16日の引退をピークに、2018年のJ-POP界で最大の注目を集めたアーティストとなった。
対して、浜崎あゆみは
「17年9月の引退発表から1年におよぶ“引退キャンペーン”が、ハマりすぎるぐらいハマりました。引退のニュースは、NHKが7時のニュースで取りあげたり、速報を出すほどでしたからね。アルバムやブルーレイの売り方なども含めて、キャンディーズの解散を超える盛り上がりになったのではないでしょうか」
と、ある芸能記者は語る。
「アムロはユーロビートのカバーから火が付き、小室哲哉とタッグを組んだことでさらに人気が拡大し、ミリオンを連発。90年代なかばには“アムラー”と呼ばれる彼女のスタイルをマネる女の子が大量に出現するなど、社会現象的な人気を獲得しました」
しかし、若い女性に人気で一時代を築いた“歌姫”といえば、浜崎あゆみの名前をあげる人も多いだろう。
「もともとアイドルとして活動していましたが、安室より少し遅れて98年にエイベックスから歌手デビューしました。アムラー世代より少し若い、当時の女子高生を中心に爆発的に人気が出て、ファーストアルバムでいきなりミリオンセラーとなりました。その後もミリオン連発、一時期のエイベックスの売り上げを支えました」(同前・芸能記者)
浜崎あゆみのこれまでのCD売上数は5000万枚を超え、2017年にAKB48に抜かれるまでは、女性歌手として歴代1位だった(女性ソロとしては現在も1位)。
いっぽうの安室奈美恵は、4000万枚弱。チャート1位獲得曲数でも、浜崎37曲に対し、安室は11曲。さらに、第一興商が11月に発表した調査によると、平成時代に最も歌われた歌手も、浜崎あゆみだったという(安室は16位)。
様々な条件があるため単純比較はできないが、数字上だと、あゆが安室より上回っている部分がたくさんあることは確かである。
脱カリスマ、等身大で狙う再ブレーク
“アムロス”という言葉が生まれるなど、多くの人に惜しまれながら芸能界を去っていった安室と、近年、登場するたびに叩かれがちな浜崎の違いはどこにあるのだろうか。ある音楽番組関係者は言う。
「安室さんは、結婚出産で一時活動を休止しました。復帰後は、R&B寄りの方向性で活動する一方、2000年の『九州・沖縄サミット』のイメージソングや、16年のリオ五輪のNHKテーマソングなど、アムラー以外の層にアピールできる曲が複数あったことは大きいのではないでしょうか。
そこに引退需要が起こり、新たなファン層も獲得した。CMなどで楽曲が使われ続け、曲やアーティストの存在が風化しないまま、惜しまれ型の需要が爆発したのは、『ボヘミアン・ラプソディー』で人気が再燃するクイーンの再評価ぶりに少し似たものを感じます」
いっぽう、あゆはといえば、
「まず、近年は体形を指摘されることが多かった。しかも、ネットやSNSでその画像が拡散されてばかりいました。自ら自撮りを頻繁に掲載するのですが、それが細かったり脚が長かったりと、加工をしているのではないかという疑惑も生まれたりした。
プライベートも、海外のゴシップセレブのような扱いでしたね。ライブや新作発表も積極的に行っているけど、それらの活動より、ネットでの『笑われ』『いじられ』キャラ化してしまった。かつてのカリスマ性は薄れてしまったのではないでしょうか」
しかし、そんなだからこそ、あゆを評価する声もあがる。
「近年のあゆは、神秘的なカリスマではなく、ナマっぽさを感じさせる存在になりました。体形が変わったり、売り上げが伸びなくて、もがいたりあがいたりする姿に、好感を持つ人が増え、“一周回って”面白味を感じる人もいます。
とはいえ、テレビ出演での態度の悪さに批判的な言葉が多いことも事実です。ここで一度、開き直ってカリスマでない等身大の40歳の女性という姿をアピールすればいいと思うのですが。それこそDA PUMPが“ダサかっこいい”で再ブレイクしたように」(前出・音楽番組関係者)
アーティストとしてのあゆが、女性ソロ売上歴代1位にふさわしく再評価される日を待ちたい。
<取材・文/渋谷恭太郎>