2018年もいろいろあった芸能界。多少の逆風に見舞われても、場合によってはそれが思わぬプラスになる不思議な世界でもあります。そこで、今年、話題をさらった芸能人のみなさんの今後が、「芸能人として」プラスかマイナスかを予想してみようと思います。
芸能人が雲の上の存在だった時代は終わり、現在では「いかに親近感を感じさせるか」が、ポイントになってきているように思います。それでは親近感を獲得するには、どうしたらいいのでしょうか。それは完璧ではなく、ある程度の傷や抜けをさらして、「私と同じだ」と思わせることだと思います。冷静に考えれば、名前を知られている芸能人と一般人があらゆる意味で同じなわけはないのですが、そう思わせるテクニックが必要とされているのです。
2019年トクする人
第1位 剛力彩芽
総資産3000億円越えのセレブ、株式会社ZOZOの創業者にして代表取締役社長の前澤友作氏との交際が発覚した際は、ネットで「やっぱりカネか」と大ブーイングが起き、さらに前澤氏とのデートをこれでもかとインスタに載せる姿に剛力の好感度まで下がってしまいます。ここまでなら、芸能人としてマイナスですが、剛力は只者ではなかった。
バッシングに耐えかねたのか、前澤氏がツイッターで反論をはじめます。もちろん、前澤氏には自分の意見を言う権利があるわけですが、ツイッターで「前澤友作を応援したいか、したくないか」という意見を募る姿を見ると、ちょっと社長さん、落ち着いてと言いたくなる。常識にとらわれない奇人であるからこそ、新しいビジネスを作って成功させることができるのでしょうが、子どもっぽいというか、カリスマ社長としての威厳は損なわれてしまいました。
しかし、そのおかげで、この先、二人が別れたとしても「あの社長、ちょっと大変そうだからよかった」となるでしょうし、結婚したとしても「でも、大変だよ、あの社長」といった具合に、一般人に「完璧でない」とみなされて、トクなのです。芸歴が長い割にいまいちインパクトにかけていた剛力ですが、今後、二人がどうなろうと、剛力の代表作は『前澤社長』となるでしょう。
第2位 小林麻耶
妹さんの闘病と他界、本人の体調不良と、ここ何年か限界の状態で生活しているであろうことが予想された小林麻耶。2018年7月に交際0日での結婚を、8月に芸能界引退を発表しました。
しかし、11月に発売した初の著書『しなくていいがまん』(サンマーク出版)の売れ行きが好調だったからでしょうか、一般人でヨガのインストラクターである夫の名前と顔を明らかにします。夫君はブログを開設し、呼び方について「是非アキラくんや吟くんやAKIRAくんでお願いいたします」と読者に呼びかけています。どうでもええっちゅうねんと言いたいところですが、これは小林夫妻が次の布石を打ったと考えていいでしょう。
スピリチュアル夫婦として、ビジネス展開していくということではないでしょうか。麻耶が知名度を活かして本やブログを書いて講演をしてファンを獲得、ファンが夫のヨガ教室を訪れれば一石二鳥です。婚活に疲れた女性たちが「しなくていい我慢をやめて、交際0日婚でイケメン年下夫をつかんだ」という事実にひかれてワラワラ集まる姿が見えるようです。「それはスピリチュアルじゃなくて、女子アナパワーだからな」と今から釘を刺したい気持ちでいっぱいです。
第3位 前田敦子
俳優・勝地涼と結婚しましたが、年の近い同業者同士の結婚は、さわやかで王道な印象を与えます。『女性自身』(光文社)によると、勝地の実家は不動産業を営んでおり、資産は7億円とも言われているそうです。7億円の資産を持つ男性と交際すると「カネ目当て」と言われますが、実家が資産家の場合は攻撃されないのが、庶民の視野の狭さというもの。
前田は実母との仲が良いことで有名ですが、子育てを手伝ってくれるであろう母と、裕福な夫の実家というものすごい援軍を得て、ママタレ界に殴り込みをかけるのではないでしょうか。
2019年ソンする人
第1位 小倉優子
「こりん星のりんごももか姫」設定で売り出した小倉優子。独身時代、女性人気は高いほうではなかったタイプですが、母となってからブログで披露する料理が上手だったこと、教育熱心なところが認められてママタレとして再評価されます。彼女の好感度を爆上げしたのが、「妊娠中に元夫が自分の事務所の後輩と浮気」という、女性にとって一番嫌な経験をしたことでしょう。
2017年に離婚をしたゆうこりんはオリコン主催の『好きなママタレント』で2年連続1位に輝き、家庭用洗剤のCMにも出演します。痛い目にあったことで、キャラ変更に成功し、女性ファンを獲得したのです。
しかし、今年夏ごろに歯科医と結婚を見据えた真剣交際が発覚し、長男は名門小学校に合格したそうです。さらに、クリスマスに再婚をしたことを発表。再婚したことで、ゆうこりんは歯科医を開業する夫、優秀な子どもを持つ「完璧な母」となりました。あまり勝ちすぎると、好感度は妬みにかわります。「結婚までの交際期間が短すぎる」「子どもの気持ちを考えて」という正論風のアンチが生まれてくるでしょう。
第2位 上沼恵美子
とろサーモン・久保田かずのぶとスーパーマラドーナ・武智正剛が『M-1グランプリ2018』(テレビ朝日系)で審査員を務めていた上沼恵美子に対し、「右のオバハンにはもううんざり」「『嫌いです』って言われたら、更年期障害かって思いますよ」と暴言をはく様子を動画で配信しました。審査の仕方が気に入らないなら、そこを具体的に言えばいいのに、年齢や中高年女性の身体的なことを攻撃するのは、典型的な女性蔑視と言えるでしょう。
『スポニチ』によると、二人の所属事務所・吉本興業は上沼に会社として謝罪した上で、上沼が二人の直接謝罪に対して「気持ちは受け取った」と拒否したそうです。『上沼・高田のクギズケ』(読売テレビ)で、上沼は「お二人のことは、まったく私は何とも思っておりません。暴言だなんだなんて言われてますけれども、全然、結構です。悪いですけども、興味ないです」といなして見せましたが、完全に鎮火したと言えないのは「男性が女性の大物に非礼を働く」という珍しいケースだからではないでしょうか。
芸能界では時々、「誰々が大物を怒らせて干された」と言われますが、たいてい同性同士であり、異性間、しかも女性のほうが権力者であるというケースはまれです。上沼は関西で視聴率女王として確固たる地位を築いていますが、テレビ局が忖度して二人にオファーをかけなくなったら、「上沼が怒っている」と邪推され、「オンナは怖い」と言われてしまう。かといって、失礼な態度を許せば、暴言を言った者勝ちになってしまう。二人に会わないという上沼の決断は、この騒動の存在を認めていないともいえること。賢明な判断ではありますが、えみちゃん、完全にもらい事故でお気の毒でした。
第3位 Koki,
リア充を嫌う世の中で、結構売り出すのが難しいのが、二世タレントだと思うのです。木村拓哉と工藤静香の子どもがリア充でないわけがない。けれど、それを前に出したら、叩かれることは目に見えています。だからこそ、何かはっきりした結果を見せて、「やっぱりあの親の子どもだけあって才能がある」ということを示さないといけないのですが、周りのオトナが足を引っ張っている感じ。
映画に出演したことがないのに、映画賞のひとつ『エル シネマアワード2018』で「ライジングスター賞」を受賞って、忖度しすぎではないですか。恵まれていて、注目されているからこそ、一歩間違うと大きな反感を買ってしまうもの。「ちょ、待てよ」はドラマ『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)での木村拓哉の名セリフですが、この問題は待ったなしでしょう。
<総論>
一般人に「わかる!」と思われながら、ほどよく夢を見せる。あえて欠点を見せて、完璧さを隠す。なかなか難しいことだと思いますが、どうぞ芸能人のみなさん、2019年も私たちを楽しませてください。
プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。