2018年もたくさんの芸能人が我々を楽しませてくれましたが、中でも鮮烈な印象を残した女性芸能人を勝手にワタクシ、仁科友里がチョイスさせていただきました。
安室奈美恵
2019年4月30日に天皇陛下が退位され、平成が終わります。まるでほんの少し先駆けるかのように、安室奈美恵さんが9月に引退しました。90年代に第一次ブームを巻き起こし、人気絶頂だったころにまさかの結婚と妊娠の発表。出産後に芸能界に復帰しますが、その後、お母さんを亡くし、離婚、セールスの落ち込みなど長い低迷を経験します。プロデューサーの小室哲哉さんと離れ、R&B、HIP HOPの方向に傾いていきますが、これが吉と出ました。トップに返り咲き、台湾や中国、韓国などアジア全域で人気を不動のものにします。2010年には世界最大の音楽祭典と言われる『World Music Awards』にアジア人女性として初めて出演する快挙を成し遂げました。
積極的にプライベートをさらす芸能人が多い中、テレビ出演を控え、プライベートを見せることもなく、ライブに懸ける姿は神々しくもありました。また、引退しても復帰するという意見もあるようですが、私はそれはないと思います。2時間ノンストップで、歌いながら踊るあのパフォーマンスは、日ごろの鍛錬のたまもの。一度精神的な緊張が切れたら、戻すのは難しいと思います。またいくら安室さんとて人間であり女性ですから、35歳をすぎれば肉体的にもいろいろと厳しくなってくる。自分ととことん向き合って、限界を知る安室さんだからこそ、お涙頂戴な演出はせず、「最後は笑顔で」と言って舞台を去ったのではないでしょうか。
奇しくも今年は安室さんの息子さんが成人した年です。母親として、アーティストとしてずっと大きなものを背負ってきた安室さんにお疲れさまでしたと言いたいです。
指原莉乃
2019年春、HKT48から卒業すると発表した指原サン。彼女がいつ卒業するかは注目されているところではありましたが、元号が変わるという滅多にないタイミングにぶつかるあたりが、恋愛スキャンダルで左遷の憂き目にあっても這い上がってきた強さを感じさせます。『今夜くらべてみましたSP』(日本テレビ系)で卒業後は「歌は歌わない」と話していた指原、今後はバラエティーに照準をしぼるということでしょうか。その場合、これまでとは明らかに異なる点が出てくるでしょう。
指原は“SNS警察”と揶揄(やゆ)されるように、SNSの投稿の中から、女性の本音をえぐりだすことを得意としていましたが、なぜ“オンナ叩き”のような芸風が受け入れられていたかというと、指原が恋愛禁止のグループにいて、彼氏がいない非リア充ポジションだったから。「人のことをいろいろ言うのは、彼氏のいない私のヒガミですよ」という逃げ道があったのです。
しかし、これから彼氏が発覚することもあるでしょう。それなのに、これまでの芸風で一般人を攻撃すると、単に「上から目線」「性格の悪い人」と思われてしまう可能性もあります。ここ最近どんどんお顔が変わっていて、一瞬誰かわからないこともある彼女ですが、キャラチェンジは緩やかにお願いいたします。
渡辺直美
10年前、ビヨンセの口パクでブレイクし、インスタグラムのフォロワー日本一の渡辺直美。海外からも注目され、今や世界のナオミ・ワタナベと言ったほうがいいのではないでしょうか。もしかしたら、彼女を高く評価しているのは、外国人なのかもしれません。
2017年は『VOGUE』でメイク法を公開、大きな反響を得ました。ワシントン・ポストは彼女にインタビューを敢行、『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)でのナオミの言葉をそのまま用いて説明しますと、「こんだけヤセてる日本人の中で、なんでおまえはドヤ顔で生きているのか」について意見を求められたそうです。
2018年に入っても快進撃は続き、世界的アパレルブランド『GAP』のモデルに起用されています。先日は、中国の紅白とも言われる人気歌番組に初めて日本人として出演しました。その模様を『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)が密着していたのですが、図らずもある種の“思い込み”が明らかになったように思います。
公演を大成功させたナオミを、同番組は「女性らしさとは真逆の存在であるのに、女性に好かれる」と形容していましたが、番組を作った人は「太っている人は、女性らしくない」と考えていると見ることができるでしょう。日テレさん、感覚が古すぎじゃないですか?
一方のナオミと言えば、そんな「女らしくない」という感覚をよくわかっていると思います。番組のスタッフに「太っていると思っているでしょう」と言うものの、「私は今の私が好き」とも言っています。自分がバカにされていることをわかった上で、自分の芸で魅了する。ナオミはもはや狭い日本ではおさまらない器なのかもしれません。
宮沢りえ
今年は元・貴乃花親方の相撲協会引退と景子夫人との離婚が世間を騒がせました。若い方はご存知ないでしょうが、貴乃花氏は大関昇進直前に女優・宮沢りえと婚約していたのです。お手々つないで、二人してピンクの着物でのぞんだ婚約会見後、「横綱を狙う人がデレデレするな」とか「りえにおかみさんは務まらない」というバッシングも起きました。
その後、まさかの婚約破棄。美川憲一が言うには「母一人子一人なんだから、お母さんの面倒をみないといけないでしょ」と無理やり二人の仲を引き裂いたそうです。その後、りえは拒食症に陥り、不倫や自殺未遂騒動、映画を突然降板するなど長い低迷を経験します。映画『たそがれ清兵衛』で日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞を受賞したときには、貴乃花氏との婚約から11年の月日が経っていました。
一般人男性と結婚し、娘をもうけたものの離婚したりえですが、2018年はV6・森田剛と再婚をはたしています。仕事も順調そのもの。結果論ではありますが、やはり貴乃花氏と結婚しないでよかったなと思うのです。だって、貴乃花氏、クセがすごすぎるんだもの。長男・優一氏が離婚をしたことについて、「義理の娘はこれからも私の娘だと思っています」とコメントした貴乃花氏。いや、離婚して他人になったんだから、そこはもう忘れてあげて。壊れる縁談は壊れていい縁談。りえはつらい思いをしてもただでは起きず、女優開眼したあたりが、さすがです。
<総論>
芸能界は椅子取りゲームのような競争社会ではありますが、「自分の道を行くこと」も不動の地位を築くために必要不可欠なことではないでしょうか。時代を読みつつ、自分のやりたいことを貫く。もちろん、人との出会いやめぐりあわせ、運も必要です。やはり、芸能人というのは特殊な才能のある人にだけしかできないお仕事でしょう。2019年も私たちを楽しませてください。
プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。