「現場近くに住んでいるのに事件に気づかなかった。日中の竹下通りは若い人や外国人観光客でにぎやかだけれど、深夜になると人通りはほとんどないんです。大みそかの夜は、テレビで紅白歌合戦を見たあと寝てしまったので……」
と近所の男性住民。
東京都渋谷区の竹下通りで1日午前0時10分ごろ、大阪ナンバーの軽自動車が歩行者をはねながら約130メートル走り抜け、男性8人が重軽傷を負う事件が発生した。
思い出される秋葉原無差別殺傷事件
運転していた男はフロント部分が大破した車をキャンディーショップ前に乗り捨て、事件を目撃した男性を素手で殴って逃走。約25分後、近くの代々木公園にいるところを警察官に見つかった。
「練馬区の19歳男子大学生は意識不明の重体。男は真冬とは思えない薄着姿で、灯油をかぶったにおいを漂わせていたため、職務質問を受けてスピード拘束された。すぐそばの明治神宮では初詣客の雑踏警備で警察官がうじゃうじゃいたから逃げられるわけがなかった」(全国紙社会部記者)
警視庁によると、殺人未遂の疑いで同日逮捕したのは住所、職業とも不詳の自称・日下部和博容疑者(21)。
「同容疑者は“テロを起こした”などと話し、犯行動機について“死刑制度に対する報復だった”としている。昨年7月のオウム死刑囚13人の刑が執行されたことへの報復という情報もある。しかし、オウムとの関連性は判明していない」(同記者)
容疑者の“報復”は死刑制度とは関係のない第三者に向けられた。竹下通りのブティックで働く男性スタッフは、
「犯行の4時間前まで店にいたので背筋の凍る思い。車でテロなんて、秋葉原無差別殺傷事件を思い出した」
と話す。
'08年6月の日曜、東京・秋葉原の歩行者天国に加藤智大死刑囚(当時25)が運転するレンタカーのトラックが赤信号を無視して突っ込み、次々に歩行者をはねたうえ、ダガーナイフで刺すなどして男女7人が死亡、10人が重軽傷を負った。
当日、携帯サイトで「秋葉原で人を殺します」などと犯行予告していた。
一方、日下部容疑者は全国的に有名な竹下通りを狙った。12月31日午後10時から車両通行止めになっており、そもそも車の進入路は一方通行違反。犯行に使ったのは軽乗用車のレンタカーだった。
犯罪心理学者で東京未来大学こども心理学部長の出口保行教授は、
「無差別攻撃という点では秋葉原事件と変わりません。社会の耳目が集まる場所、タイミングで犯行におよんでいることから、容疑者にとっては注目されることがいちばん大事だったとみられます。
死刑執行に関する犯行だという供述をしているようですが、背景に政治・思想的な理由があるとは思えない。社会に自分の力を誇示したかったのではないか」
と行動心理を読む。
インターネットの巨大掲示板『2ちゃんねる』では、犯行の約11時間前に書き込まれた記述が話題だ。
『今日明日は渋谷に行かないほうがいいよ』と題したスレッド(タイトル)で、「詳しくは言えないけど一応」とコメントしている人物がおり、容疑者による犯行予告ではないかと取りざたされている。
ただし、容疑者が書いたものかどうかはわかっていない。