ネクストブレイクなんて言ったら失礼かも。春海四方は30年以上も前に『劇男一世風靡』で大ブレイクしていた。
「'80年代後半に渋谷で活動していた路上パフォーマンス集団です。柳葉敏郎さんや哀川翔さんと一緒でしたね。『一世風靡セピア』で歌も出しました」(スポーツ紙記者)
ヒット曲を連発していたが'89年に解散。春海は舞台を中心に俳優業を再開。食べるためにアルバイトもしたが、それがよかったと本人が話す。
「喫茶店のウエーターをやれば、それが役柄に生きることもあります。役を与えられて“できるよね”と聞かれたら、“はい”と答えるしかありません。経験が役に立つのが役者という仕事なんですよ」
テレビドラマでも脇役を演じ続けてきたが、昨年ごろから活躍が目立つように。
「『日経エンタテインメント!』の出演本数ランキングで3位でした。ドラマ『アンナチュラル』や、『おっさんずラブ』といった話題作に出演して、知名度が上がりましたね」(テレビ誌ライター)
名バイプレーヤーとして引っ張りだこになったのは、舞台がきっかけだったそう。
「三谷幸喜さんの舞台に出させてもらったら、テレビ業界の方がたくさん見にきてくれました。それで『アンナチュラル』で工場長を演じることに。最初は悪役に見えて、後で大逆転します。優しい人と悪い人の切り替えが大事なんですよ。僕は不器用なんで、人より時間がかかる。でも、それで人間が見えるようになってきた」(春海)
セピア解散直後に彼から相談を受けた、演劇プロデューサーの門井均氏も同じ思いだ。
「正直、彼は芝居がうまくない(笑)。おまけに踊れないし歌えないし、不器用。しかし脇役に必要な存在感を備えているんです。三國連太郎さんに似ていますね。圧倒的な存在感があって、人柄がいい。それで、どんどん声がかかるようになってきた」
昨年11月に発売された著書『前略、昭和のバカどもっ!!』は8年かけてコツコツ書いた。春海の話を聞いていると、きまじめさが伝わってくる。
「脇役が楽しくてしかたないんです。どうやったら主役がキラキラ輝くかをいつも考えていますね。役者というのはSとMが同居していて、自分をいじめるのが好きなところがあるんです。これやらなきゃって、いつも崖っぷちに立っていますよ」(春海、以下同)
春海は来年、還暦を迎える。
「若いころは下町の商売人みたいな役ばかりだったんですが、最近は政治家の役もやっています。役者は年相応の役回りがあるんです。ちょっと離れて物事を見ることができるようになっているから、これからが役者として楽しみだなあと思っています。次は今までやったことのない役をやりたいですね」
いやいや、還暦での初主役で一世を風靡してほしい!