“大阪のオバチャン”言えば、パッと頭に浮かぶのはヒョウ柄・パンチパーマ・アメちゃんの3点セット。現在も大阪にはこの3つの特徴を兼ね備えたオバチャンたちがひしめいているのか、はたまた、ただの都市伝説に過ぎないのか……!? 突撃取材にて、真実が明らかに!
街じゅうヒョウ柄だらけなの?
ヒョウ柄ファッションがトレンドとなっている昨今。本場・大阪では、さぞやすごいことになっているはず。流行前からヒョウ柄を堂々着こなし、時代を先取りしてきた大阪のオバチャンに会いたくて会いたくて震える週刊女性取材班。ということで、現地調査を敢行!
大阪駅からタクシーに乗り、オバチャンが集うというポイント『天神橋筋商店街』を教えてもらう。ヒョウ柄ファッションのオバチャンを探している旨を伝えると、運転手さんは「そんなオバチャン、もうおらんで~」。
不安な思いで商店街に到着すると、ガチで黒、茶、無地の格好をしたマダムしかいない! ヒョウ柄の服を扱うお店も3~4軒程度。2時間ほど商店街を往復し、結果、ヒョウ柄を身につけた人は3人しか発見できなかった。そのうちの1人が最近の「浪速ヒョウ柄事情」を教えてくれた。
「ヒョウ柄を着ていると、“アンタ、それじゃ〜大阪のオバチャンやで”って友達にバカにされるねん。ウチは好きやから着とるけど、みんな着てへんで~」
なんと、大阪では絶滅寸前になっている!? 真相を探るべく、大阪のオバチャン・エンターテイメント集団『オバチャーン』に会いに行くことに。取材場所の扉を開けると、そこには期待どおり、ヒョウ柄ファッションに身を包んだオバチャンがズラリ。しかし!
「これは衣装やで〜」と、あっさり告げたのは不動のセンター・舟井栄子(69)。
「普段、ヒョウ柄は着てへんわ。最近はヒョウ柄も売っているところが少なくなっているから、見つけたら衣装用に買い足していくって感じやなぁ」
舟井いわく、「点々」(ヒョウ柄の斑点)はまだセーフ。ヒョウの顔がついたデザインはアウト、もしくはネタとして着るものだそう。
ヒョウ柄文化はいつごろから衰退したのか?
「10年くらい前は道頓堀あたりにたくさんおったで」(舟井)とのこと。以来、衰退の一途をたどっているとはいえ、そのインパクトゆえに、浪速のヒョウ柄文化は人々の記憶のなかで生き続けることだろう。
“パンチパーマのオバチャン”ばっかりなの?
取材班が大阪で、ヒョウ柄とともに探したのが“パンチをあてた”女性。
「みなさんがパンチと呼ぶきつめのパーマは、細いロッドで巻いたコールドパーマのこと。男性のかけるパンチパーマとは種類が違います」(ヘアライター・佐藤友美さん)
お笑い番組で見るあのパーマは“パンチ”じゃなかった! また、大阪独自の呼び名も存在するらしい。
「年2回、盆と暮れにかければすむから“盆暮れパーマ”っていうねん。経済的やろ~」(『オバチャーン』メンバー・宇口久子)
盆暮れパーマとは、なんとハイセンスなネーミング! 経済的なだけでなく、こんな利点も。
「加齢に伴う女性ホルモンの減少で髪も徐々にハリを失います。全体的に薄く地肌が見えてくるので、パンチはボリュームを増すのにいいスタイル。手入れも簡単で、洗いっぱなしでいいのが利点です」(医学博士・植田美津恵先生)
ところが「ここ10年くらい、あまりお見かけしない髪型」(前出・佐藤さん)になってしまった。なぜか。
「一般的に男性は、長いストレートヘアの女性を好む傾向にあり、パンチはその真逆。“男性の目を意識しない”髪型でモテない。不人気になった理由はそこかもしれません」(臨床心理士・緒方俊雄先生)
脱・パンチをしてモテに走ったのが減少の理由? 一方、こんな意見も。
「そもそも、大阪=ヒョウ柄にパンチパーマの陽気なオバチャンだらけ、というイメージはテレビ番組が作りあげたもの。大阪という街をジョークタウンのように仕立て、いじり倒したのはマスコミで、いじられすぎたゆえに激減してしまったのでは?」
こう分析するのは、『大阪的「おもろいおばはん」はこうしてつくられた』の著書がある国際日本文化研究センターの井上章一教授。
「大阪に今も“パンチ”の女性はいると思いますが、その比率はおそらく東京などの他都市と変わらないと思いますよ」(井上教授)
結局、大阪でパンチのオバチャンは発見できなかった。それは、われわれメディアが生み出した虚像だったのかもしれない。
「アメちゃん」てみんな持ってるの?
大阪のオバチャンのマストアイテムといわれる「アメちゃん」。マジで持ち歩いてるの!? 大阪市内にある飲食店の男性店主からは、「100%持ってんで。“コレ食べぇ〜”ってお会計と一緒にくれんねん」との証言が。
オバチャンはアメちゃんを持っているに違いない! 期待に胸を膨らませ、商店街で人のよさそうなオバチャンをキャッチ。すると、「持ってんで」と2つのアメを取り出し、記者にくれた。その後も数人からいただく。
『オバチャーン』のメンバーにも聞いてみた。
「みかんアメと梅ねりは欠かさず持ってます~」(山本かつら)、「のどアメ、黒アメが定番。電車の中でも咳してる人がいてたら、知らない人でもあげるで」(浜由紀子)と、私物のアメを次々取り出し見せてくれる。知らない人にまでアメをあげているとは、恐るべし!
では、なぜオバチャンはアメを持ち歩くのか?
「甘いものを食べると元気回復になる。チョコレートとかだと、夏はべっちゃりしてまうけど、アメなら大丈夫やし」(浜)、「風邪予防と気分転換」(福井清子)と、健康面を理由に挙げる意見が多数。「大阪にはアメを作る会社が多いから、みんな持つようになったかもなぁ」(奥百合子)という説も。
ちなみに若い女性にはアメのイメージがないけど、一体、何歳から持つもの?
「アメを持つようになったのは近所の子から“オバチャン”って呼ばれるようになってから。子どもの友達なんかにアメを渡すようになるのが、だいたいのきっかけやな」(舟井)
アメちゃんは、やさしさのおすそ分けだった!
《PROFILE》
オバチャーン ◎“大阪のおばちゃんパワーで世界を元気に”をコンセプトに、ヒップホップに合わせて歌ったり、コントや漫才をしたり、ときには警察署のマナーポスターのモデルになったりと幅広い活動をするユニットグループ。