名だたる刀剣が戦士へと姿を変えた“刀剣男士”を率い、歴史を守るために戦う刀剣育成シュミレーションゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』。2015年にリリースされると刀剣男士たちの魅力的なキャラクターが人気となり、アニメ、ミュージカル、舞台などのメディアミックスも大ヒット。
昨年の『第69回NHK紅白歌合戦』にミュージカル版のキャストが出演し、今や全国区となった大人気コンテンツの初の実写映画化作品『映画刀剣乱舞』が1月18日(金)ついに公開される。
舞台『刀剣乱舞』で初演から刀剣男士の三日月宗近役を演じ、同役で映画版にも出演している鈴木拡樹さんが、作品への熱い思いや撮影裏話、プライベートのお正月まで柔らかな口調でたっぷり語ってくれた。
映画版に出られるとは思っていなかったので
喜びが大きかった
「すごく勢いのある作品で、2016年の舞台初演からファンの方たちの熱意や愛をすごく感じましたし“映画化もあるのかな”って考えていたと思うんですけど、すっかり忘れてまして(笑)。“映画を撮るよ”って聞いたときには“わ! 映画化もついに動いたか”って、久しぶりに思い出した感じで。でも、自分が映画版に出られるとは思っていなかったので、キャスティングしていただけたこともびっくりしました。本当にサプライズみたいな感じだったので、喜びが大きかったです。今回出演している舞台メンバー全員がたぶんそう感じたんじゃないですかね」
舞台版でもリアリティのある歴史解釈のストーリー展開が魅力。『映画刀剣乱舞』は、明智光秀が織田信長を襲撃した本能寺の変を舞台に描かれる。
「歴史の“たられば”の物語の作り方がいつも『刀剣乱舞』は面白いなって思うんですけど、今作も脚本を読んで面白い説だなと思いました。もう真実にしか感じられない、そんなすごい説得力でしたね。なぜ信長の骨が見つかっていないのかっていうこともちゃんと説明できていますし、この事件の謎を解明できたのは刀剣が見ていたからというところにつながっているストーリー構成も『刀剣乱舞』でしかできなかったなと。これも歴史の一節だなって思うととても歴史に興味が湧きますし、いい作品だなと思います」
映画では刀剣男士たちの美しい殺陣を迫力の映像で堪能できるのも見どころ。
「刀剣男士としてのこだわりは、やはり鋼っぽさというか。いつものにこやかな感じではない鋭さであったり、冷たさを感じてもらえる瞬間があるといいなと思います。三日月の殺陣は舞うようにっていうのもひとつのテーマで。特に衣の袖が揺れたりする美しさっていうのが見て楽しいと思いますので、エンターテインメント的にできるだけ袖がひらひらと回転するようにっていうことは常に考えて臨んではいました。大変でしたけど(笑)」
マイペースなのが三日月宗近と似てるって言われます。
ゆっくりなペースのマイペース(笑)
舞台版で長く演じてきた三日月宗近を映画で演じるのは「楽しくもあり難しくもあった」という鈴木さん。三日月宗近の魅力とは?
「何か裏がありそうで探ってしまうキャラクターなのかなと。何かあるんじゃないかってすごくロマンを抱かせるところが、僕はとても月に似てるなと思うんですけど。月を見ていてきれいだなって思うけど裏側はどうなっているんだろうとも思う、その興味とまったく一緒だなって。まさに名前どおりだなと」
自身との共通点を聞くとこんな答えが。
「マイペースなのは似てるって、よく言われますね。ゆっくりなペースのマイペースが似てるんじゃないかって(笑)」
今作にはそんな鈴木さんの人柄をよく知る舞台版キャストが多数出演している。
「撮影現場は居やすかったですよ。初めましてからスタートしなくていい分、やっぱり楽でしたし、すごくありがたかったですね。常に一緒のシーンに出ているわけじゃないですけど、現場に居てくれる日は心強かったです」
織田信長役の山本耕史さんとは初共演。
「信長と三日月が一緒にお城にいるシーンがあって、そこはわりと長回しで撮っているんですけど、何カットかに分けていろんな角度からも撮影していて。そのたびに“このシーンはもうちょっと、ここの距離感とってみようよ”とか話をしたりして。そういう細かい詰めが一番できたのがあのシーンだったのかなと思うので、すごく勉強もさせていただけましたし、なんか楽しかったんですよね。カメラが回っていないときのやりとりも、回っているときの背中越しに感じる空気感も。僕の中では、あそこのシーンが山本さんとのすごくいい思い出です。見どころでいうと、信長と三日月が絡むシーンはもっとたくさんあるんですけどね(笑)」
うれしそうに語る表情に俳優としての充実が感じられた。
演劇をやり始めた頃を
振り返ることができた1年
2018年は「挑戦、挑戦でした」と振り返る。
「やったことのないことに多く挑戦したので、やっぱりテンパることも多かったですし、追い込まれることも多かったです。なので、いつもとは違う充実の仕方をしました。得意としない分野でもやっていくスタンスの大切さを改めて感じたといいますか。演劇をやり始めた頃をすごく振り返ることができた1年でしたし、そういう新鮮な気持ちをたくさん吸収できた年でしたね」
NHK Eテレの教育番組『マリーの知っとこ!ジャポン』ではイケメン家庭教師・ギャブリエルに扮し、子どもたちに向けて「にっぽんの伝統文化」を楽しく伝えるなど、今までと違う新しい顔も見せた。
「すごく楽しんでやってますね。そのテイストが伝わるとうれしいなと思いますし。出演のお話が来た時はびっくりしましたけど、“歌って踊っても軽くあるよ”って言われて、ちっちゃい頃に見ていた歌のお兄さんに近いものなのかなってイメージして、ワクワク感がありましたね。あとは題材として子どもにも向けた作品に関わったことがあまりなかったので、まず身近な存在の甥っ子と姪っ子が見て楽しい気分になるのはどんなだろうって考えながらやっていました。甥っ子たちも見て踊ってくれてるみたいです(笑)」
去年、プライベートで何かハマったことは?
「この間、水炊きを食べに行ってそれがめちゃくちゃ美味しくて。舞台で久留米公演もあったりするので、これから水炊きにハマりそうです(笑)」
毎年「寝正月です」笑う鈴木さんのお正月に、今年は少し変化があったようで。
「人が集まるところに行ってみたら少しはお正月感を味わえるかなと思って、小さい神社に初詣に行ったんですけど、いっさい人がいなかったです(笑)。お賽銭入れて“今年も頑張ります!”っていう報告だけして帰ってきました。でも『紅白歌合戦』も見れましたし、今年はちょっとお正月っぽく過ごせたかな」
最後に今年の抱負を教えてください!
「昨年挑戦させていただいたこともすべて活かせるようになりたいと思いますし、いろんなことを吸収して表現者として、より頑張っていこうと思います。あとはもっと舞台観劇数を増やして、幅広いジャンルの舞台を観て感じた世界観も養っていきたいなと思ってます」
全国に刀剣ブームを巻き起こしている大人気ゲーム『刀剣乱舞-ONLINE-』を原案にした初の実写化作品。名だたる刀剣が刀剣男士となって、歴史の改変を目論む歴史修正主義者が送り込む時間遡行軍と戦う。舞台は天正十年六月二日、京・本能寺。明智光秀が織田信長(山本耕史)を襲撃した本能寺の変に歴史改変の魔の手が迫る。燃える寺から信長を逃がし、歴史を変えるという時間遡行軍の計画は刀剣男士たちの活躍により阻止されたが、任務を終えて帰還した彼らのもとに「織田信長生存」の一報が。本来の歴史に戻すため、三日月宗近(鈴木拡樹)ら刀剣男士たちは織田信長暗殺を目的に再び過去へと出陣する。
<プロフィール>
すずき・ひろき
1985年6月4日、大阪府出身。舞台・TV・映画と多忙を極める実力派俳優。主な出演作は、舞台『刀剣乱舞』シリーズ、劇団☆新感線『髑髏城の七人Season月』下弦の月など。現在、MCを務める『2.5次元男子推しTV』Season3(WOWOW)、アニメ『どろろ』(TOKYO MX、BS11毎週月曜)が放送中。今後は、舞台『どろろ』(大阪:3月2日~3日/東京:3月7日~17日/福岡:3月20日/三重:3月23日)に主演。主演のWOWOWオリジナルドラマ『虫籠の錠前』が3月放送予定。
(取材・文/井ノ口裕子)