無職・八幡和貴容疑者(中学の卒業アルバムより)

 病院の夜勤から帰宅した看護師の母親(64)が、第一発見者である。

 11日午前11時40分ごろ、夫の母(90)と自分の三男(32)と3人で暮らす2階建て一軒家の自宅で目にしたのは、1階の寝室のベッドの上で息絶えている姑の姿だった。浴衣の袖には血が黒々と染みついていたという。

容疑者の腕にも傷

「義理の娘から“おばあちゃんが刺されて死んでいる”旨の110番通報が、午前11時44分にありました」

 と捜査関係者。その日、殺人容疑で逮捕されたのは、古河市尾崎の無職・八幡和貴容疑者。被害者、八幡ソトイさんの実の孫だ。

 発見時の様子を、捜査関係者が明かす。

「被害者の両手首に切り傷があり、右手首の傷のほうが深かった。ほかに外傷はありません。15日に司法解剖を行った結果、死因は失血性ショック死と判明しました。

 容疑者は2階の廊下に座り、通報した母親と一緒にいました。両手や床には血がついた状態で、2階の廊下で凶器と思われる包丁のようなものが見つかっています。容疑者の腕にも、複数の切り傷がありました

 事件現場は、JR宇都宮線古河駅から直線距離で約12キロ。一帯はのどかな住宅地だ。

「事件のあった日は家にいましたけど、サイレンが聞こえてね。覆面パトカーと救急車に消防車も来てましたね」

 と30代の女性住民が事件当日の様子を伝える。

 元気だったころのソトイさんの姿を、近隣住民が記憶していた。

「おばあちゃんは普段から和服を着て、上品な人でした。背筋もピンと伸びて、少し遠いところにあるスーパーまでよく歩いて買い物に行っていましたよ」

 と50代の女性。

容疑者宅はインターホンを押しても応答がなく

「ただ、ここ2年ぐらいは姿を見なくなって、どうしたのかなと思っていたんです……」

 と付け加える。

 昨年夏、ソトイさんを見かけたという70代の女性に話を聞くことができた。

「家の前を通ると“おばあちゃん、草むしりなんかしなくていいのよ”って、(看護師の)お母さんが声をかけていてね。少し話をしたんだけど、脳梗塞で倒れて半身麻痺になっちゃったみたいなんですよ。家で寝たきりだったのかな……」

おばあちゃん子

 一家は1994年に引っ越してきた。孫は4人きょうだいだったが、三男以外はすでに独立して家を出ており、運送業に従事していた父親は昨年、他界したという。

 容疑者と子どもが同級生だという母親は、

「お母さんは看護師で忙しくされていたから、お子さんの面倒はおばあちゃんが見ていたんですよ。だから(容疑者の)和貴君もおばあちゃん子だったんですけど……」

 と証言する。

 別の同級生の母親は、

「うちに遊びに来たこともありました。おとなしくてどこにでもいる、ごくごく普通の子でしたよ。可愛らしくてね。

 高校を卒業した後は、東京の会社に就職をしたと聞いていましたけど、どんな仕事かまでは……。お母さんの気持ちを考えると、同じ年の子を持つ母親としてつらいです

 と、それ以上の言葉を飲み込んだ。

 近隣では祖母と孫の和貴容疑者が一緒に近くのスーパーで買い物する姿も目撃されている。なぜ祖母を殺害しなければならなかったのか。

「不器用なやつでしたね」

 そう振り返るのは中学時代の同級生だ。容疑者の人柄について続ける。

人とのコミュニケーションがあまり得意じゃなくて、自分から何かを主張する感じではなく、人に遮られると何も言えなくなってしまうんです。

 昔からマイナスな発言をよくしていました。“俺はなんでこんな感じなんだろう”って、うまくできないことがあると投げやりになるところはありましたね。顔は悪くないのに、女の子にモテる感じもなかったです。どちらかといえばいじられキャラでした」

 容疑者本人も中学校の卒業文集に、自分の性格を次のように分析し、記している。

《僕は小心者で、人と話をするときどうしても小声になったり、自信がなくなるとすぐ人に頼ったりして、相手を不機嫌にさせてしまいます》

卒業文集には「本当の思い出になったのはこのクラス」と書いている(中学の卒業アルバムより、一部加工)

 

 そんな自身の性質を自覚し、どんどんと自分を責め、追い詰めていった末には……。

「詳細はわからないのですが、就職先でもうまくいかず、自殺未遂をしたと知人から聞きました」(前出・同級生)

 それと符合するように、

「いつからかは不明だが、容疑者は精神疾患を患っていたようだ」(民放報道局記者)

 という情報も。1年ほど前には近所のレンタルビデオ店で働いていたという和貴容疑者。中学時代よりも少しふっくらとしていたという。しかし、逮捕時には無職だった。また、挫けてしまったのか。

「でも、まじめで心優しいやつでした。人の悪口は言わないし、気も遣えました。内側にためるタイプでしたから、おばあちゃんの介護で疲れて無理心中しようとしたのかもしれない。人を殺すなんてことをするようなやつじゃなかったんですよ。ほかの同級生もショックを受けています」(前出・同級生)

 不器用にしか生きられない人間はいる。その行きつく先が、なぜ自分を可愛がってくれた祖母の命を奪うという身勝手な行動だったのか。法廷で容疑者がどんな真相を語るのか、注目される。