天皇陛下お仕事中の一コマ

 国民に近くなったといわれる平成の皇室だが、私生活では、私たちとどんな違いが? 皇室ジャーナリストの久能靖さんがズバッと回答!

天皇家の食卓、誰が作る?

 結婚当初、美智子さまが台所に立って、お子さま方のお弁当を詰めていましたが、日常は『大膳課』の人たちが担当します。約25人いて、和食、洋食、お菓子、パン、そして皇太子家担当の5つに分かれています。秋篠宮など宮家は、独自に調理人を雇っています。

 食材は、野菜や豚、鶏卵などに関しては、栃木県にある皇室専用農場・御料牧場でつくったものを使います。お魚などほかの食材は、信頼できるルートで仕入れているようですね。

住民票や戸籍は?

 天皇を含め皇族は戸籍を持っておられません。皇室の場合、戸籍にあたるものは、皇統譜です。名字はありませんから、例えば、愛子、悠仁といった名前だけが書かれ、生年月日、親の名前などが記録されています。

 女性皇族が結婚して皇籍を離れる場合には、皇統譜から除かれ、夫の戸籍に入ることになります。美智子さまなどのように一般から嫁がれ皇族になられる場合は、戸籍から除籍され、皇統譜に記録されます。

パスポートは持っている?

 各国の元首はパスポートを必要としませんが、天皇もパスポートやビザを必要としません。天皇は元首扱いといえます。

 ほかの皇族も私たちと同じパスポートは持ちませんが、外国をご旅行されるたびに、1回きりのパスポートが発行されます。外交官が使うようなものです。

 天皇はもちろんですが、皇族の方々も、一般の人のように出入国審査で並ぶことはありません。特別のカウンターから出入国されるはずです。

離婚はできる?

 離婚はできます。『皇室典範』という皇室に関する法律がありますが、その14条に、離婚したときは皇族の身分を離れると書かれています。ただ、離婚したという実例はありません。そして、天皇や皇太子は皇籍を離脱することは認められません。

 一般人と結婚され、皇籍を離脱した女性皇族が離婚した場合、皇族には戻れません。一般には離婚すると旧姓に戻りますが、皇族は名字がないので、離婚後も結婚したときの名字を使うことになるでしょう。

陛下は車の運転免許をどうやって取得された?

お車を運転される天皇陛下

 陛下が皇太子時代に、民間の自動車教習所で取られました。

 ただ、問題は免許の更新です。70歳以上になると、高齢者講習があります。実は、皇居内の東御苑に、私たちが使うのと同じコースをつくって行いました。次の更新はなさらないようです。

 もっとも、陛下が車を運転されるのは、皇居の中にあるテニスコートを往復するときぐらいですが、まじめに更新されるのは陛下のお人柄といえます。

陛下の仕事はどんなもの?

 重要なものは国事行為。例えば、国会で議決された法案に、陛下がサインをします。それにより法律は効力をもつのです。年間で約1000通にサインします。

 それ以外では、植樹祭や被災地へのお見舞い。あるいは外国の元首の誕生日には祝電を打ち、ご不幸があったときには弔電を打たれます。また、大使館の大使が新しく着任されたときに信任状を受け取られ、帰国されるときも会って、ねぎらわれます。これらはごく一例。たいへんお忙しい日々を送られています。

普段着はどうやって購入されている?

 ご自身で買いに行かれることはありません。お忙しいなか、時間的な余裕がありませんからね。

 デパートなどからカタログを取り寄せ、実際に見てみたいというものがあれば、御所に持ってきてもらいます。実物を見たり試着したりして購入されます。

 御用達制度は昭和29年に廃止されて、現在はありませんが、決まったデパートなどはあると思います。どこと取引があるのかはわかりませんが、歴史のある店なのではないかと思います。

専属のヘアメイクはいる?

 もちろんいます。お好みを理解している人でなければできませんからね。

 昭和天皇はずっと同じ理髪師が担当していましたから、いまの陛下もそうだと思います。その人たちは普段は自分の店をもっていて、呼ばれたら御所に行ってカットをするわけです。

 担当者が高齢になられて引退ということになれば、そのお弟子さんが引き継いだりしています。とにかく短い時間でテキパキと仕事ができるような方が担当されることになります。

皇室に嫁ぐ女性の“条件”は?

 明文化されたものはありません。しかし、お妃教育があって、和歌を詠んだりできるぐらいの教養は必要になります。あるいは品格も大切な条件です。ただ資産に関してはあまり関係ないでしょう。

 女性皇族が皇籍を離れる場合には、相手の身辺調査などはあまり厳しく行われませんが、皇室に入られる方の場合には、皇室会議を開いて承認されなければならない。身辺に関しても、それなりのチェックが行われます。

愛子さまが弾かれているチェロは私物?

チェロを構える愛子さま

 天皇家と皇太子家が、日常生活費として支給されているお金を内廷費といいます。愛子さまのチェロは、この内廷費から支払われているはずです。なぜなら単なる趣味だから。つまりあのチェロは私物ですね。

 この先、天皇になる悠仁さまが、将来を見すえてお勉強するために講師を依頼した場合、その費用は、国が支払うことはあるでしょう。しかし、それ以外は内廷費です。皇太子が演奏するビオラも内廷費で支払われました。

天皇は刑罰を受けないって本当?

 刑罰は受けません。なぜならば、天皇は一般国民ではないからです。選挙権もなければ被選挙権もない。私たちが持っているような権利は一切持っておられないわけですから。

 天皇陛下を訴えるというようなことがあった場合、それは国民を訴えるに等しい。天皇は“国民の象徴”ですからね。天皇になる方は、そのあたりは十分すぎるほど自覚されているので、刑罰にあたるような問題を起こされることは、まずないと思います。

皇族に職業選択の自由はある?

 職業選択の自由はありませんが、そもそも普通の職業に就くのが難しいのです。

 皇族のみなさんは、それぞれ公務を持っておられます。それを優先しなければならないので、常勤で働くことはできないのです。となると雇う側も雇いづらい。

 当然、就職できる会社、仕事は限られてくるわけです。

 高円宮殿下は生前、外務省の外郭団体『国際交流基金』にお勤めでしたが、身分は嘱託でした。報酬も働いた分だけですから、さほど高くないはずです。

天皇家のお墓はどこにある?

 東京都八王子市にある『武蔵陵墓地』です。

 大正天皇、昭和天皇、それぞれの皇后のお墓があります。天皇と皇后は少し離して埋葬されています。

 今上天皇もこちらに御陵ができる予定です。陛下は皇后と一緒のお墓に眠りたいと要望されたのですが、最終的には、2つのお墓をくっつけ、寄り添うように埋葬されるようです。

 京都の泉涌寺は天皇家の菩提寺で、ここにも天皇のお墓がたくさんあります。

 東京、京都、どちらも一般にお参りできます。


《PROFILE》
久能靖さん ◎皇室ジャーナリスト、元日本テレビアナウンサー。フリーに転身後、『皇室日記』のキャスターを務めた