ロックミュージックやアクロバティックなダンスを盛り込んだスタイリッシュな演出で大人気のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が2月23日から待望の再演。古川雄大さんは2013年、2017年に続き3度目のロミオ役に挑む。美しいルックスと歌声で観客のハートをくぎづけにしているミュージカル界のプリンスが今作への思いや魅力をたっぷり語ってくれた。
『世界の王』のイントロでテンションが上がる
「同じ役に3度も挑戦させていただけることってなかなかないと思うので、そういった意味でも思い入れは自然と強くなるんですけど、そもそも魅力的で大好きな作品なんです。なのでミュージカルを始めたばかりの2013年に大抜擢していただいたときはすごくうれしかったですね。
ただ、自分ではその当時の最大限の力でやっていたんですけど、今振り返ると悔しい思いはたくさんしていたので、そのぶん、やっぱり思い出が色濃く残っていて。それを再演でなんとか自分のやりたいものに近づけたときの喜びっていうのも鮮明に覚えていますし、成長を実感できた作品です。次にやるうえでも、また成長できたらなと思っています」
今回で4度目の再演となる今作の人気の秘密は、なんといってもその楽曲の素晴らしさにある。ロミオとジュリエットがデュエットするバラード『エメ』をはじめ名曲がずらり。
「とても魅力的な楽曲がそろっていて、各ナンバーをひとつの作品として見たときにもドラマチックに構成されているので、そういったところでもお客様の心をつかむのだと思います。同時にその曲調が年齢を問わず小さいお子さんからお年寄りまで幅広く楽しめる、耳に残る曲ばかりで、楽曲のパワーがすごくある」
古川さんが特に好きなナンバーは?
「『世界の王』がすごく好きです。明るい曲調でモンタギューの仲間と歌うダンスナンバーでもあるので、見ていてる方も歌っている僕たちもすごく盛り上がるところだと思います。イントロがかかっただけでテンションが上がりますね」
ロミオを演じるうえで大切にしていることは「新鮮な気持ち」だと言う。
「ジュリエットとの衝撃的な出会いから初めて味わう感情を知って、死のうという決意まで、80年間の人生を凝縮したような5日間だと思うので、毎回新鮮な気持ちで決め込まないで、稽古から自由に動いていこうと。ミュージカルなので決め事はたくさんあるんですけど許される範囲で自由に動きながら、マンネリ化しないように毎回リセットして挑むということを心がけていました」
作品によっては、のどのケアの内容を変える
2010年の日本初演から演出を手がけている小池修一郎演出作品には、『エリザベート』『モーツァルト!』など数多く出演。古川さんにとって小池氏は恩人といえる存在でもある。
「たくさんお世話になっていますし、たくさんチャンスを与えてくださった方なので常に感謝しています。そのぶん厳しく接していただいているなっていう実感もあります。とにかく目がすごいですよね。何も見逃さない目というか、役者を見る目というか、空間を見逃さない目というか、舞台を作る目」
小池さんから言われた言葉で印象深いことは?
「ミュージカルはWキャストやトリプルキャストでやることが多いのですが“同じことをやってもそれぞれ個性は違うから、まったく同じには見えない”ということをおっしゃっていて。あえて違う方向に違う方向に作ろうとしている僕を見抜いて言ってくださった言葉だと思うんですけど、Wキャストをやるうえでずっと心に留めています」
ミュージカル俳優にとって最も大切なことはやっぱり歌。「お芝居をするうえで、歌のことを考えずに感情だけでいろんな声が出せる人はすごくうらやましい」
と語る古川さんは、日々コンディションを整えることを欠かさない。
「ストレッチと鼻うがいは毎日していますね。のどのケアも作品によっては内容を変えてやっています。『モーツァルト!』のようにのどをたくさん使う作品だったら、常に部屋を加湿して、吸入器で1日5回くらい吸入して、のどのお医者さんにも定期的に診てもらってという感じで」
連日満員の観客を満足させるには、そうしたストイックな努力があるのだ。今後挑戦してみたいミュージカル作品について聞くと、
「そういうのはひそかに思うタイプですね。あんまり取材とかでは言いたくない(笑)。でも、ブロードウェイで見た『ディアー・エヴァン・ハンセン』という作品は魅力的だなと思いました。日本で上演するとしたらこの役はこの人とか、キャスティングを考えたりしましたね。1度、NYに2週間くらい行かせていただいたときは、毎日、舞台を見てました。朝早くから並べば手ごろな値段でチケットが手に入るので。そういう環境がしっかりできていて観劇の文化があるのはいいですよね。朝からちっちゃい子からお年寄りまでいろいろな人が並んでいて、すごい光景を見てるなと思いました」
最後に読者へ意気込みとメッセージをお願いします!
「もちろん歌もダンスもブラッシュアップできたらと思いますし、この作品の中にのめり込むように、ロミオという役を思いっきり生きたいと思っています」
シェークスピア不朽の名作をロックミュージックやアクロバティックなダンスを盛り込んだ新鮮な演出で魅せるパリ発のメガヒットミュージカル。演出家・小池修一郎による日本オリジナルバージョン2017年新演出版の再演。ロミオ(古川雄大/大野拓朗Wキャスト)とジュリエット(葵わかな/木下晴香/生田絵梨花トリプルキャスト)の恋と情熱をパワフルなパフォーマンスで描き出す。
東京公演:2月23日~3月10日@東京国際フォーラム/愛知公演:3月22日~3月24日@刈谷市総合文化センター/大阪公演:3月30日~4月14日@梅田芸術劇場メインホール
【公演詳細】http://romeo-juliette.com/
PROFILE
ふるかわ・ゆうた◎1987年7月9日、長野県出身。2007年、ミュージカル『テニスの王子様』不二周助役で舞台デビュー。『エリザベート』ルドルフ役で注目を集め、以降、数々の人気ミュージカルに出演。2018年は『モーツァルト!』ヴォルフガング役で主演を務めるなど若手実力派としてミュージカルに欠かせない存在。
(取材・文/井ノ口裕子 撮影/森田晃博)