「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。ライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「良いヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
梅宮アンナ

第15回 梅宮アンナ

 1月4日放送の『中居正広のキンスマスペシャル』(TBS系)に、「平成のワイドショーを最も騒がせた芸能人親子」として、俳優・梅宮辰夫と娘のタレント・梅宮アンナが登場し、当時を回顧しました。

 あるサッカー選手に恋をしていたアンナですが、自分の話を聞いてくれないことを不満に思っていました。そんな時、1年前にゴルフコンペで一緒になった元俳優Hと再会します。サッカー選手と違って、アンナの話に興味を持ってくれることにひかれたアンナは交際を開始。しかし、Hには巨額の借金があり、女性関係もルーズだったことから、辰夫が交際に大反対。映画『仁義なき戦い』で任侠の世界を演じたコワモテ辰っちゃんも、溺愛するひとり娘の前では形無しというコミカルな構図は、安心して見ていられるコンテンツでした。アンナとHはペアヌード写真集を出すなどして、結婚間近とも言われましたが、結局破局してしまいます。

 私はアンナと同世代なので、当時のワイドショーを見ていたわけですが、改めて『キンスマ』を見てみると、この恋愛劇は偶然ではなく、梅宮親子がハメられたのかもしれないなと思ったのでした。

 というのは、知人の探偵が「個人の体験ベース」として話していた結婚詐欺の行動パターンが、Hの行動と非常によく似ているのです。

 そのパターンとは、以下のとおりです。

(1)連絡がものすごくマメ
(2)親に挨拶したがる
(3)羽振りのいいところをアピールする
(4)最初だけ、高価なプレゼントをくれる
(5)謝罪するときは、土下座
(6)金銭的な援助を断ると、「結婚するつもりがないんだろう」「俺を愛してないのか」と責められる

 同番組によると、Hは電話魔で、一日に何度も電話をかけてきたそうです。最初のデートで辰夫夫妻に挨拶をし、「結婚式場、予約してきました」と軽薄に声をかけ、辰夫の不興を買います。アンナと迎える最初の誕生日には、高級ブランド・ヴァン クリーフ&アーペルの200万円の指輪と高級車をプレゼント(車は質屋から戻ってきたばかりだったと後に判明)され、アンナは「借金はあっても、うまくやりくりしているんだ」と思ってしまったそうです。

 しかし、クリスマスの聖なる夜に「借金の保証人になってくれ」と頼まれます。躊躇(ちゅうちょ)すると「俺のことを愛していたら、できるよね」と言われたそうです。オノレの作った借金を、なぜこっちが返さにゃならんのじゃと言いたいところですが、「愛こそすべて」である年頃の女性、特にアンナのようなお嬢さま育ちには、わからないでしょう。Hの家の寝室でHと女性が寝ていた、つまり浮気の場面を目撃して別れようと思うアンナに、Hは土下座をしてわび、結局アンナは許してしまうのです。

 Hは沖縄のショッピングモールに、美容室、レストラン、ブティックを3軒同時に開店させますが、オープン3時間前に「店の施工費4000万円が未納なので、オープンできない」と商業施設のオーナーに告げられます。東京からマスコミも多数来ていますから、まさか「オープンできませんでした」とは言えません。その場にいた資産家の友人から借りる(アンナが借りて保証人が辰夫)ことで事なきを得ましたが、常識的に考えて、施設側がこんな土壇場で通告するってあるんでしょうか。梅宮親子が狙われたと仮定して考えてみると、こういう非常事態であれば、娘かわいさに辰夫が何とかして金を工面するだろうということは、予想がつくことだと思うのです。

 さらに言うと、アンナはひとり娘ですから、辰夫の財産を一人で相続する権利があります。娘にNOと言えない資産家の父親と世間知らずの娘は、悪いオトコから見れば格好のカモと見ることもできるはずです。

Hと破局後も全く安定しないアンナ

 Hと別れた後のアンナですが、恋愛は安定しません。

 飲食店勤務の男性と子どもをもうけ結婚しますが、離婚をします。その後、「妻子と別れてきますから、結婚させてください」と辰夫に挨拶をした元野球選手との交際も、相手が離婚をすることはなく、破局したと『女性自身』(光文社)でアンナが激白しています。

 また、『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ系)でアンナ本人が語ったところによると、独身だと思って交際していた地方の実業家が、実は既婚者と判明します。失意のアンナは子どもを辰夫夫妻に預け、アメリカへと旅立ちます。

 帰国後は梅宮家で娘と暮らしていたアンナですが、ケンカが絶えなくなったことで、自分用の部屋を借りて梅宮家と往復していると『ビビット』(TBS系)で明かしたことで、「育児放棄だ!」とバッシングされました。『バイキング』(フジテレビ系)で「料理を作らない」「バストの形が崩れるから、母乳はあげなかった」と独自の育児論を語ったところ、男性出演者からブーイングを食らったこともあります。

 オトコのために8000万円もの借金をつくり、結婚するも離婚する。恋愛をすれば既婚オトコにだまされる。子どもの世話は親まかせ。アンナを稀代のヤバ女と見る人もいるでしょうが、結婚していてもしていなくても、裕福な親に丸抱えしてもらって生きている人はいますので、それが責められるべきことだと私は思いません。

アンナ最大のヤバポイントとは

 それでは、どこがヤバポイントなのか。

 同番組で、辰夫はアンナへのメッセージとして「優しいアンナでいることを心してください」「“大丈夫よ、パパ、そうなるから”と言ってほしい」と涙ながらに訴えます。辰夫の発言を、アンナは「優しくなれば、きっと素敵な男性とめぐりあえて、素敵な家庭を持てるとパパは言いたいのだろうけど、私は結婚が幸せと思っていない」と分析していました。

 分析した辰夫の優しさへの考え方とアンナの考え方が同じだった場合、ここで疑問に思うのが、優しさって、男性のため、もしくは結婚するためのものなんでしょうか?

 子どもがいて、老いた親がいて、またファッションブランドのプロデューサーとして過ごすアンナには、状況に応じた優しさが常に求められていると思うのです。特に辰夫は大病を経験したわけですから、再婚うんぬんの前に一番優しく接する必要がある人物ではないでしょうか。

「結婚が幸せではない」と言いながら、どこか思考回路がオトコ至上主義。これがティーンエイジャーであれば許されますが、母という立場、親の面倒をみる年齢にそれはふさわしいのか。40代なのに、いつまでも娘気分。

 アンナをそうさせた原因として、娘にNOと言えない辰夫の存在が挙げられるでしょう。辰夫がアンナを愛するほど、アンナはオトナになれないという共依存。ここに気づいていないことが、アンナ(と辰夫)、最大のヤバポイントに思えてならないのです。


プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。