服役中の羽賀研二受刑者と元妻、當眞麻由容疑者がそろって逮捕された。「強制執行妨害などの容疑」ということだが、簡単に言うと、
知人への詐欺行為などで、3億9000万円の支払いを命じる判決を受けた羽賀が、判決が出た直後に妻と離婚。所有不動産の権利を妻に移譲していた。つまり、被害者への賠償に充てられるはずの資産を隠したという疑いがあるのだ。
負債を背負った夫が、妻に被害が及ばないように離婚することはままあることだが、返済できる資産があるにもかかわらず、それを隠すというのは悪質だ。
梅宮辰夫が“稀代のワル”と称した男は、それくらいの悪知恵を働かすことは朝飯前だったのろう。
どうしてこんな男を信じてしまうのか
『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ系)の初代『いいとも青年隊』のメンバーだった羽賀だが、一躍有名になったのは、梅宮アンナとの交際が発覚したからだった。いや、正確に述べるなら交際が“発覚した”というよりは“公開した”の方が正しいかもしれない。いまから四半世紀ほど前のことだ。
ワイドショーでは連日のように報じられ、仲睦まじい様子を、恥じらいもなくさらけ出すふたりに、与えられた称号が“バカップル”だった。
女性関係も派手で、多額の借金を背負った羽賀に恋するアンナは、誰が見ても騙されているとしか思えず、またアンナの父・辰夫も羽賀に不信感を抱き、交際に大反対している。
そんな構図は、芸能マスコミにとって格好の“ネタ”だったのは言うまでもない。また、3人は記者たちから決して逃げることはなかったため、取材しやすかったということもあるだろう。
次から次に出てくる羽賀のネガティブな報道を見て、どうしてこんな男のことを信じてしまうのだろうか、と不思議に感じたのだが、実は、芸能界でも騙された人はいるし、彼を信じて疑わなかった記者たちもいる。特に女性記者だ。
当時20代後半だった同僚の女性記者は、羽賀を取材して帰ってくるなり、
「羽賀さんは言われているような悪い人じゃないですよ」
と、私に言いだした。
何を根拠にそんなことを言いだすのかと聞けば、
「借金は認めているし、ちゃんと返すつもりで、仕事も一生懸命やっています。アンナちゃんを騙しているようには見えないし、私の目をじっと見ながら手を握って話してくれたんです。とってもいい香りがしたし、素敵でした」
と。同じようなことを語っていた記者は彼女だけではない。
私がアンナに取材したときも「彼はみんなが言うような人じゃないです。私は騙されてなんかいませんよ」と語っていた。
そしてこれは、羽賀を取材したときの話。
彼がアンナ名義で購入した高級外車を乗り回しているということで取材に行くと、早速その車を発見。張り込んでいたら、なんと向こうからから声をかけてきたのである。
「車の名義はアンナですが、お金は自分が支払っています。収入だって、なんやかんやで1億近くありますから、すべて“誠意”をもってやっています。僕を信じてくださいよ!」
と、私の手を握り、目をしっかりと見つめて、熱く語ったのである。確かにいい香りがした。その上、
「何かあったら、電話してください」
と、携帯電話の番号まで教えてくれたのには驚いた。さすが“誠意大将軍”と名乗っただけの男だ。
若い女性記者を籠絡することなんてそれほど難しいことではなかったろう。
結局、塀の中に送られてしまったが、彼の名が芸能界の黒歴史に深く刻まれたのは間違いない。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。