国民の2人に1人が症状を持つと言われているアレルギー。花粉症や喘息、食物アレルギーなど種類はさまざまだが、いずれも増加傾向にあるとして昨年、厚生労働省は初めて研究戦略を策定、本格的な対策に乗り出した。国の調べでは、花粉症を含むアレルギー性鼻炎の有病率は47・2%、喘息の患者数は約800万人に及ぶとされている。
3人きょうだいでは第3子の発症が少ない
「アレルギーとは、身体の免疫システムが過敏に反応している状態を指します。患者が増えている原因は、おそらく2つ。清潔な衛生環境と室内環境の変化によるものです」
こう語るのは、アレルギー専門医で池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師。
免疫は大きく分けて2種類ある。細菌やウイルスと闘うもの、それからアレルギー反応を起こさせる物質と闘うものだ。衛生環境が過剰なほどよくなったことで両者のバランスが崩れ、後者が過度に働くように。そのためアレルギーを増加させたと考えられている。
「3人きょうだいの第1子と第3子を比べると、きょうだいのウイルスや細菌に接する機会の多い第3子のほうが、アレルギーの発症が少ないという報告があります」(大谷先生、以下同)
加えて、住まいの環境が変化したことも大きい。
「室内が1年を通して高温多湿になっています。住まいの気密性が高まり暖かくなったうえ、冬には加湿器が使われる。人が住みやすい環境である室温20~25度、湿度60%程度の部屋は、アレルギーの原因であるカビやダニにとってもまた住みやすい環境なのです」
近ごろは室内でペットを飼う人も珍しくない。ペットの毛も、アレルギーの原因物質のひとつ。私たちは1年中、こうしたアレルギー物質にさらされながら生活しているというわけだ。
花粉症にはトマトジューズとヨーグルト
清潔で住みやすい環境が原因とあっては、それを根本から断つのは難しい。とはいえ、対策はある。大谷先生によれば、身近な食品にアレルギーへの予防効果が見込まれているという。
「例えば花粉症の場合、トマトジュースやヨーグルト、柑橘類のジャバラに有効性を認める報告があります。トマトジュースに含まれるリコピンは症状を抑制するという報告が。またヨーグルトは免疫バランスを整えてくれます。
ジャバラに含まれるナリルチンは、抗酸化作用のある色素・フラボノイドの一種で、抗ヒスタミンというアレルギーを抑える成分です。
また、喘息にはコーヒーの効果が期待できます。カフェインに気管支拡張作用があり、1日3杯以上の飲用で症状が28%低下したという報告もあります」
もちろん、アレルギー症状を引き起こす物質─花粉症の場合はスギやヒノキといった花粉、喘息なら気道に炎症を起こすハウスダスト、ダニ、カビなど─を極力避けることが重要なのは言うまでもない。
実際に症状が出ているなら早めの治療が望ましい。
花粉症の場合、1日1回の薬の服用で症状が十分に抑えられ、従来に比べて眠気も抑えられるようになってきた。さらには舌下免疫療法という治療法も登場。
'14年からスギ花粉による花粉症に、翌年からはダニアレルギーにも健康保険が適用されている。
「アレルギーの原因となる物質を毎日なめることで身体を慣らし、症状が出ないように体質改善するという治療法です。また、ワクチンの開発も進められていて現在、臨床試験中。10年以内には実用化されると思います」
喘息治療も進化を遂げている。吸入型のステロイド剤が進化・改良され、喘息で死亡する患者数は、この30年で6000人から1500人程度まで減少しているという。それでも症状が改善されない重症患者には、最先端のバイオテクノロジー技術によって生み出された『生物学的製剤』が使われることも。これを使った注射薬が'09 年から保険適用されている。
アレルギーは1疾患だけかかるのではなく、ほかの疾患と合併することも少なくない。重症化する前に、早めの受診・相談を心がけたい。