嵐の会見で話題を集めている“無責任質問”。
会見翌日のオンエアで、テレビ朝日の羽鳥慎一キャスターが放ったひと言こそ、炎上ものだった。それは「嵐と一度でも仕事をした人であれば、無責任だという発言は出てこない」云々。ちょっと怒気を声に込め、さらにはコメンテーターもそれに追随した。
それを聞き、う~ん、と考え込んだ。
炎上記者の質問がヘタ
確かにくだんの記者(以下、炎上記者と表記)の質問には首をかしげる部分はあるが、羽鳥氏が指摘する嵐と仕事をしたことがある記者は、世の中に果たして存在するのだろうか。
ファッション誌のグラビアのライターなら、「一緒に仕事をした」という感覚を持てるのかもしれない。だが、新聞や雑誌の記者の場合、「インタビューしたことはある」「取材したことはある」と答えるだろうが、それをもって「一緒に仕事したことがある」とは言わない。
質問者が誰かは世間にネタバレしているが、スポーツ紙の芸能記者である。嵐と一緒に仕事をしていたとは思えない。よって羽鳥氏の発言は、自分のいる世界の物差しでしかものを見ない、身勝手な指摘となる。
前置きが長い! 閑話休題。
炎上記者は会見で、「無責任では?」と聞いたわけではなく「無責任じゃないかという指摘もあると思うんです」と聞いている。
世の中にはいろんな意見がある。その中には、嵐を快く思わない視点で発言する人々もいるだろう。炎上記者は、それを想定して質問したのではないか。別にかばう気はないが、そう思う。だが、質問がヘタだ。ヘタすぎる。
嵐の決断はまったく無責任ではないが、ある視点に立つと「嵐の活動休止が無責任になる可能性がある」と見立てることもできる。
話はうんとさかのぼる。登場人物もガラリと変わる。
活動休止は裏切り・無責任か
1999年10月5日、都内のレコード会社の一室で、人気絶頂だったグループ、SPEEDが会見し、2000年3月31日をもって解散することを発表した。
その理由は、メンバーのひとりが元ジャニーズJr.と恋愛したことで、グループに軋みが出たなどと取りざたされたが、公の解散理由は「自分の時間が欲しい」などと話していた。
記者会見後、所属事務所の社長が、記者のぶら下がり取材に応じた(実際は座っての取材だったが)。記者の誰かが「解散ではなく活動休止という選択肢もあったのではないでしょうか」と迫ったときのことだ。社長は、静かに次のようなことを語った。
「解散でなく活動休止にすることは、ファンに対する裏切り、無責任じゃないかと思った」
解散ではなく活動休止がなぜ“裏切り”になり“無責任”になるのか。今回の嵐のケースを考える中で、過去の記憶がよみがえった。
絆の強い嵐と、当時のSPEEDとでは内情が違うが、解散することでファンは未練が断ち切れる。一緒に歩んだ時代を思い出にし、次に歩み出すことができる。活動休止となると希望が生じるため、ファンは何かを断ち切る必要はなくなる。復活のその日を待てばいい。
ただ、復活が一体いつになるのか、嵐本人も関係者も明言しない。2021年から、嵐が活動休止に突入し、さて復活が5年後なのか、10年後なのか。
SPEED場合、一時しのぎで活動休止にしても、復活の日への足取りがまったく見えないため解散に踏み切った。嵐の場合は、メンバーの絆から、復活の日が必ず訪れるという確証をもっての活動休止を選択したと思える。
ファンは信じるしかない
とはいえ、当初、大野智は所属事務所の退所を考えていた、と述べていることから、先々の復活より、目先の休養を目指していたことは明らかだ。話し合いの中で、いずれ復帰する方向で意見が集約し、5人と事務所は合意したと見るのが妥当だろう。
その合意が守られることを、ファンは信じるしかない。この合意のために、ファンはファンクラブの会費を払い続ける。入会金1000円、年会費4000円。最新のスポーツ紙報道によれば、活動休止発表後、約15万人が新規加入したという。それだけで、7億5000万円の実入りだ。
果たして嵐は、活動休止中も通常通りの年会費を取り続けるのだろうか。今のところ、何のアナウンスもないが、ファンを思えば、復活の日までの年会費を大幅に割引するなど、ファンサービスを行う必要があるだろう。それがなければ255万人(現段階)の会員から毎年4000円を徴収しつづけることになる。総額毎年102億円!だ。
関係者はスポーツ紙の取材に「2020年の12月ギリギリまで会員を募集したい」と話している。さすがに活動休止中には新規募集はしないだろうが、ギリギリまで受け入れるという。
活動休止になれば、ある程度の人数が減員するのは明らかだ。というのも嵐のファンに限らず、チケットを入手するために、自分や親、きょうだい、親類などの住所氏名で会員になり、会費を払っているファンクラブ会員は多いからだ。
それでも莫大なファンクラブ会費がもたらされる。それでいいのだろうか?
櫻井翔は、失礼な質問に対し「2年近くの期間で感謝を伝えていきます。その姿勢や行動でもって判断してほしい」と、若干の怒気を込め反論していた。
それだけでは充分でない。
復活の日を待つファンに「裏切られた」「無責任」と思われないためには、嵐は何が何でも復活しなければならない。
会見で大野が「4人以上に気をつけたい」といっていた体形を保持して、5人が全員健康に生き延びて、再びパフォーマンスをしなければならない。いや、してほしい。それが復活の日を待つファンへの「責任」である。それが「活動休止」というものである。
<取材・文/薮入うらら>