「そろり~、そろり~」
と、お笑いコンビ『チョコレートプラネット』の長田庄平がモノマネしたことで、最近何かと話題なのが、和泉流狂言師である和泉元彌だ。
NHK大河ドラマ『北条時宗』の主演に20代で抜擢されて一躍、古典芸能のプリンスに。だが遅刻やダブルブッキング、さらには駐車違反の罰金を納付せずに逮捕されるなどのトラブルが相次いだ。
「'95年に父である先代が死去し、二十世宗家を襲名しました。しかし、野村萬斎の叔父である野村萬が会長を務める和泉流職分会が、この継承に反対。'02年には能楽協会から除名されるなど、日本中を巻き込んで大騒動になりましたね」(芸能レポーター)
セッチーの独占告白30分!
そんな息子を守るため、当時のワイドショーなどに連日出演したのが、母であるセッチーこと和泉節子氏だ。
歯に衣着せぬ発言で物議を醸してきた彼女が、どうも元彌のモノマネにひと言申したいとか。そこで1月下旬に週刊女性が自宅にアポなしで話を聞きにいくと、彼女は温かい笑顔で迎えてくれた。そしてモノマネだけでなく、なんと、あの人気狂言師にまで話が及んで……。
「なんとかプラネットって方よね。1回だけ見ましたよ。私もけっこう忙しいのよ(笑)。まあ、どう言ったらいいんでしょう。元彌のモノマネを聞いた瞬間に気づいたけど、和泉流になってないのよ。それに構えも違うの。和泉流にも“そろり~、そろり~”という言葉はあるけど、ちょっと違うのよね」(以下、和泉節子氏)
と手厳しい。京都府出身の長田は和泉流と二大流派をなす関西の大蔵流を見本にしていたらしく、そこに違和感があったようだ。だが、彼女はモノマネ自体を否定しているわけではない。
「理解はできないけど、ただ、狂言がモノマネされるってこれまでなかったじゃない。まさかバラエティー番組に狂言が入るとは! 誰でもそう思うでしょ。でも、彼らは違和感なくやってくださっている。相方はIKKOさんだけどね(笑)。
だからって、喜んでいるわけじゃないのよ。ですので、狂言の普及という部分を手伝ってもらえるように、あまり度を過ぎないようにしていただきたい。ここが大事よ。おちゃらけも度が過ぎちゃうと、下品になって狂言も伝統文化も吹っ飛んじゃうから」
と話すセッチーからは笑顔もこぼれる。
「もっと元彌に似せたいなら、長田さんも少しお稽古されることね。年末にテレビ番組で宗家から狂言を教わっていましたけど、やはり和泉流をかじっていただきたい。稽古にいらっしゃればいいのにねぇ」
と、元彌モノマネを認めながらも、クオリティーの向上をしっかりリクエストすることは忘れない。
ところで、狂言の普及といえば、'20年に行われる東京オリンピックの総合演出に同じ狂言師の野村萬斎が就任。世界に日本の伝統文化が羽ばたく大きなチャンスのはずだが、そのことを彼女に聞くと、とたんに表情が険しくなり……。
「別に……。うまく演出できればいいなと思っているだけですよ。あの人が演出になっているのですから、上手になさればいいなと思うだけですね」
と、(沢尻)エリカ様も顔負けなくらいの素っ気なさ。
「出来がいいときと悪いときの差が激しい」
'05年の愛知万博で狂言を披露したのは和泉流宗家だった。それなのに、来年の世界的大舞台に野村家が指名されたことには、複雑な思いがあるのかもしれない。
「和泉流の中から出て行った野村萬斎さんが開会式などの演出をされるということですよね。ただ、家格で言ったら、あそこは弟子筋ですから。なので、オリンピックではずっこけない狂言演出にしてほしいわ。
最近の萬斎さんはEテレの『にほんごであそぼ』に洋服を着て出てらっしゃるでしょ。あの番組では、出来がいいときと悪いときの差が激しいわよね。だから、オリンピック本番では、その差が激しくならないようにしないと……。見る方たちが、なるほどという線にまとまればいいんじゃないですか」
というセッチー。
映画やCMに引っ張りだこの人気狂言師に、これだけ苦言を呈すことができるのは、和泉宗家を束ねるセッチーくらいだろう。
「うちはアメリカをはじめ、中近東やアジアと、海外40都市以上行ってます。海外の方は本当に狂言がお好きですからね。
和泉流宗家は尾張徳川藩のお抱えだったわけで、今年で581年です。孫は4人いまして、元彌の子で二十一世を継ぐ元聖は10歳になりました。未来は明るいですよ」
あの宗家継承騒動から17年──。相変わらずセッチー節は健在だった。