erica 撮影/北村史成

 2月20日にニューアルバム『告うた3~あなたへ贈る歌2~』をリリースしたシンガーソングライターのerica。

 ‘03年の大ヒット曲『明日への扉』を生み出した『I WiSH』のnaoがプロデュースしながら、これまで彼女が世に送り出してきた恋愛ソングは、YouTubeでの総再生回数が約8000万回を記録中。“半径2メートル以内の恋愛”をテーマとした楽曲の数々は、主に中高生の女子から絶大な支持を受けている。

 今回のインタビューでは、そんなericaのこれまでの軌跡や下積み時代の思い出、さらには“恋愛のカリスマ”と思われがちな彼女の意外な「恋愛遍歴」など、その“素顔”に迫ります!

唯一の娯楽は

「山梨県の北杜(ほくと)市というところが出身地なのですが、山梨の中でも本当に何もないド田舎なんです。バスは1時間に1本、コンビニは歩いて1時間、ある場所をすぎると街灯や信号もなくて、夜7時にはあたりは真っ暗になっちゃうような家に住んでたんです。上京するときは、ニューヨークに行くような感覚でした(笑)

 自宅の周りには、カラオケやゲームセンターなどはもちろんなく、ericaの唯一とも言える娯楽は、意外にも「ラジオ」だった。

「田舎すぎて、テレビ番組すらほとんど放送していなかったので、音楽を聴くのはいつもラジオからでした。“いい曲だな~”と思っても、その歌手が売れているのかも、どんな顔なのかもわかっていませんでしたね(笑)。

 好きな曲を録音して、3歳のころから続けていたピアノで真似しながら弾いていることが楽しくて。ラジオ番組っぽく自分でパーソナリティーになって、“次の曲はericaで○○”とか言いながら、自分で好きな曲を弾いたり。

 私の場合は、誰かに憧れて歌手になろうとかではなく自然と、音楽が当たり前なものになって、同時にとても大切なものだったんです

 デビューのきっかけは、二十歳のときにレコード会社や音楽雑誌にデモテープを送ったことから。彼女の歌声を聴いたnaoが、プロデュースに名乗りを上げたのだ

(左から)erica、nao 撮影/北村史成

naoとの出会い

「高校卒業後、すぐに上京して、アルバイトとボイストレーニングの日々を送っていました。両親は私の音楽活動に反対で、半ば家出のような形で実家を飛び出したんです。そんな事情から、仕事関係の人から“〇〇やってみない?”とオファーがあっても、未成年だから親の承諾が必要で、結局お話自体がなくなることが多くて。

 そのあと、親の承諾がいらない二十歳になった日の午前0時に、レコード会社や歌手を随時募集している音楽雑誌宛のデモテープを一気に投函しました。2か所のポストがパンパンになりましたね(笑)。その結果、naoさんが声をかけてくださって現在に至ります」

 デモテープを聴いたnaoは、ericaのどんな部分に魅力を感じたのだろうか。

nao 撮影/北村史成

「粗削りではあったのですが、とにかく“声”がよかったんです歌い方はテクニックで何とかなりますが“声量”は持って生まれた部分が大きい

 そのあと、実際に彼女に会ってみると、人懐っこくて飾らない性格だと思いましたし、“等身大”だというところも彼女の魅力だと感じました。プロデュースという意味では“半径2メートル以内”という描写をイメージしながら、“共感型アーティスト”の方向性を目指しました」(nao)

 二十歳でnaoと出会ったものの、彼女の歌手人生には下積み時代も。

「デビューしたのが、naoさんと出会ってから5年後でした。それまでは路上ライブをやったり、自分でデモテープをライブハウスに送ったり。作詞と作曲の仕方もわからなかったので、デビューまでの5年間はいろいろなことを学ぶ勉強期間でした。同世代の歌手よりもデビューが遅かったので“追いつかなくちゃ”と、常に焦りもありましたね」(erica)

 そんな下積み時代を乗り越えデビューし、彼女の“転機”となったのが、YouTubeで2800万回再生を突破した『あなたへ贈る歌』だった

「今でこそ恋愛ソングばかり歌っていますが、路上ライブの時代は、人生をテーマにした歌ばかりだったんです。でも、1曲だけ恋をテーマにした曲をYouTubeにアップしたところ、ブログなどで今までにない反響をいただいて。

 そこである日、いただいたコメントに対して“私はシンガーソングライターなんだから”と思って、曲でお返事するようにしました。お返事用にいちばん最初に作った曲が『あなたへ贈る歌』だったんです。

 そうしたら、どんどん口コミで広まっていって。ほかのお悩み相談コメントに対しても恋愛ソングで返していたら、気づけば私の曲は恋愛ソングばかりになっていて、そういったテーマの曲ばかり作るようになりましたね」

 今では“告うた”というワードが認知されるほど、若者女子に絶大な人気を誇るerica。ゆえに“恋愛のカリスマ”と見られがちな彼女だが、本人の“恋愛遍歴”は意外にも……。

恋愛禁止令を自分に!?

「周りからは、恋愛経験が豊富だと思われるのですが、全然そんなことなくて(笑)。というのも、デビューするまでの5年間は“恋愛禁止令”を自分に課していて、まったく恋愛をしていなかったんです。

 私の恋愛ソングが中高生の女の子たちに響いているのは、私の恋愛基準が二十歳までの恋愛経験にもとづいているからなのかも。友人からは“ericaはまだそういう曲を作れるんだ”とか言われちゃいます(笑)」

erica 撮影/北村史成

 恋愛経験が少ないと自負する彼女とはいえ、自身の曲に自分の体験談を盛り込んだこともある。

『今日、告白します。』という曲は、私の体験がもとになっています。私は普段から盛り上げ役に徹してしまうことが多くて、学生時代には、好きだった男性の恋愛相談をよく聞いちゃってました。

 その人には、卒業の日に“私はあなたのことが好きだったということだけ知っておいて”と、あえてフラれるために告白したんです。

 返事もいらないし、もう友達には戻れないかもしれないけれど、あなたの中では友達だったericaじゃなくて、あなたのことが好きだったericaでいたいと思って。

 私は言わないで後悔するより、言って後悔しないと次の恋に進めないと思っていたんです。そういった話を曲に盛り込みましたね」

 これまでは『レコチョク』や『iTunes』、『LINE MUSIC』などのデジタル配信が多かったが、今回リリースするアルバムは、CD盤も製作している。

「そのときにあふれ出た感情を曲に落とし込むことが多いので、これまではスピード感のあるデジタル配信ばかりでした。ただ、手にとれる形に残してほしいというファンの方々の声も多かったんです。

 今回のアルバムには、初めての挑戦として、書き下ろしやライブで盛り上がるための曲なども収録しています。今までは配信限定の曲がたまったらアルバムにする形でしたが、今回はいわゆる恋愛ソングだけではなく、バリエーション豊富なラインナップになっています!

 ひとつずつ、階段を上り続けているerica。アーティストとしての「夢」についても聞いてみると、

「規模や場所も大切ですが、いちばんの目標は“歌い続けること”ですね。活動休止をするアーティストもいらっしゃる中で、歌い続けることは本当に大変だなと常々感じています。“自分が歌うことで誰かを本当に勇気づけられているのか”“この仕事が自分に本当に合っているのか”など、悩むことも多いです。

 でも、ライブでファンの方々の表情を見たり、ちょっとしたひと言をいただくことで、歌手としての自分をつなぎとめてきました。何かをクリアすると、すぐに次の壁が出てきてゴールが見えない世界ですが、ファンの方々のためにも歌い続けていきたいです!

 そのアツい思いは、ファンの心にもきっと届いていることだろう。

『告うた3〜あなたへ贈る歌2〜』
2月20日リリース
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PROFILE●えりか●2006年に山梨県北杜市から上京。レパートリーの多くは「告白」「失恋」「片思い」などをテーマとした楽曲であり、本人はそれを「告うた」と呼んでいる。「半径2m以内の恋愛」について歌っている「告うた」の歌詞は、女子中高生・女子大生を中心とした10代から20代の女性から大きな支持を集めている。代表曲である『あなたへ贈る歌』が口コミだけでYouTube再生回数2800万回を超えるなど、新世代のソーシャル型アーティストとしても大きく注目されている。