1月12日、東京・多摩川にあるボートレース場でのイベントに登場した田中圭に女性ファンは歓喜

「僕も初心者。みなさんも初めて来た人が多いでしょう。100円から買えるので、せっかくのいい機会として楽しんでいってください!」

 1月12日、都内で俳優の田中圭がCMのイメージキャラクターを務める『ボートレース』のトークショーが行われていた。

「田中さんが登壇した途端、女性ファンから“キャー!”という黄色い歓声が上がっていました。ボートレースでは走る距離が短いため、いちばん有利といわれている1号艇はオッズが低いので賭けたくないそうで、“大穴を狙いたくなっちゃうんですよ”って。

『ボートレース多摩川』の名物料理『牛炊』が売り切れるほど、この日は田中さんのファンで埋め尽くされていましたよ。今まで聞いたことがない黄色い声援がレース場にこだましていました」(会場を訪れていた女性)

 田中のトークショーを見たいがために集まったファンは、700人ほど。“田中圭人気”恐るべしというべきだが、最近になって「公営ギャンブル」に“異変”が起こっているという。

「今までの競馬や競輪、ボートレースなどの公営ギャンブルといえば、お客さんのほとんどが中高年の男性。ギャンブルということで、世間のイメージもあまり芳しいものではなかったのが実情でした。

 しかし、2年ほど前からレース場ではさまざまなイベントが開催されたり、田中圭さんなどの人気タレントをイメージキャラクターに起用するなど、女性を意識した施策を展開しているんです。ボートレースでは、レースを楽しむ女子のことを“ボレジョ”、競馬では“UMAJO”と呼んで、親しみやすくしています」(スポーツ紙記者)

オードリーを起用したJKAの宣伝課は「特に20代男性に対する好感度は獲得できた」と答えてくれた

 実際、ボートレースのCMには、田中以外にも渡辺直美やお笑いトリオ・ロバートが出演。JKA(競輪)のイメージキャラクターにはお笑いコンビのオードリーが就任している。

「あまり縁がなかった公営ギャンブルCMに、人気芸能人たちが続々と参入しています。JRA(日本中央競馬会)に至っては、朝ドラのヒロインを務めた土屋太鳳高畑充希、'19年からは葵わかなも起用されています。

 男性陣も松坂桃李柳楽優弥中川大志などのイケメン俳優がキャスティングされるなど、若年層に猛アピールしている印象です」(スポーツ紙記者)

 公営ギャンブル側は、どのような意図で旬な芸能人たちを起用しているのだろうか。

ボートレースのCMに出演する渡辺直美

『BOAT RACE振興会』の広報担当者に、その理由を聞いてみると、

田中圭さんや渡辺直美さん、ロバートさんをCMに起用させていただいているのは、イメージアップのためです。特に、若者や女性に人気がある方々を意識しています。

 とはいえ、この戦略は最近始めたものではなく、'10年から起用させていただいた南明奈さんの時代から続けています。そのころから比べると、だんだんとお客さまの年齢層が若返ってきています。

 最近では、田中圭さんのトークショーは反響が大きく、ツイッターなどのSNSでは“レース場に初めて行った”“初めて賭けてみた”などの投稿も多く見受けられます

 2年前から若者に人気がある芸能人をCMに起用し始めたJRAの広報部にも話を聞いてみた。

「将来にわたって、競馬を安定的に運営していくためには競馬未経験層、特に若い世代の取り込みが重要と考え、メインターゲットを“若い競馬未経験層”に設定しました。

’17年のJRAのCM発表会では、旬な芸能人がズラリ。左から柳楽優弥、高畑充希、松坂桃李、土屋太鳳、木村カエラ

 ターゲット層に共感してもらうため、松坂さんや土屋さんなどに競馬初心者の代表として登場していただくほか、まさに20歳になったばかりの葵さんと中川さんに“後輩”として加わっていただいたのです。おかげさまで、競馬場内ではCMのタレントさんたちのように、若い方々がグループで競馬を楽しんでいる姿を見ることが増えました

 運営側のプロモーション戦略が、イメージアップにつながっているということはわかったが、タレント側はなぜオファーを受けているのか。CM事情に詳しい広告代理店関係者が、その理由を教えてくれた。

ギャラ良し、イメージ向上。仕事を断る理由がない

「とにかく“ギャランティー”がいいんです! 田中圭さんでいうと、CMや大きなレースのプレゼンター、イベント出演などを合わせると年間で数千万円は支払われていると思います。人気タレントが公営ギャンブルのCMにどんどん出演するようになり、昔と比べ確実に参入のハードルは下がっています。今の時代、芸能事務所にとってはとても割のいい仕事なんですよ」

 双方の利害が一致したことで、現在の状況ができあがったというわけだ。

 実は、芸能プロダクション側が公営ギャンブル関連の仕事を増やしているのは、こんな理由もあるそう。

「1本で50万~100万円の高額な謝礼が支払われるパチンコ店のイベントは、今まで割のいい仕事でした。しかし、近年行われてきたパチンコやパチスロの規制強化により、“射幸心”をあおるなどの理由でイベントの事前告知が禁じられたのです。イベントを自粛する店が続出してしまい、芸能プロダクションへのオファーが減ってしまった。そこで、稼げる新たなフィールドとして、公営ギャンブルが注目されているんですよ」(同・広告代理店関係者)

 むしろ、自ら売り込んでいる芸能プロも多いとか。

「この不況の中、高いギャラを払ってくれて、かつイメージアップしている公営ギャンブルの仕事を断るほうが古いという風潮みたいです。ある芸能プロダクションのマネージャーによると、JRAに対して売り込む事務所は多く、オファーが来たら断ることは少ないそうですよ」(同・広告代理店関係者)

 新たに見つけだした金脈が“ギャンブル”にならないよう願うばかり!