結婚相談所でありながら、男性会員はゼロだったという。
にもかかわらず、会社経営者や医師、弁護士など社会的地位の高い男性がいるように虚飾し、「すてきな50代と60代の男性会員が入会されました」などと虚偽のメールを女性(当時49)に送信し、金銭をだまし取ったとして、結婚相談所「ロータリーマリッジ倶楽部」の実質運営者の吉田しおり容疑者(65)が2月20日、警視庁碑文谷署に詐欺容疑で逮捕された。
会社の住所が地名のみ
同倶楽部はホームページで《中高年の婚活をサポートする会員制の結婚相談室》とうたっている。入会金15万円、月会費2万円。2017年2月から1年半の間に、ダマされた女性たちから700万円近い入金があったという。
吉田容疑者がターゲットにしたのは、まじめなご縁、出会いを求める女性たちだ。
詐欺被害に詳しい立正大学心理学部の西田公昭教授は、
「異性を求めることは、人間が持っている基本的欲求のひとつです。結婚相手やパートナーを求める高齢者は、これから先も増えていくだろうと思います。結婚をあきらめていた人でも、出会えればいいなという気持ちを(詐欺師に)たきつけられてしまう。話に乗せられてしまいますよね」
今年1月、SNS(会員制交流サイト)で外国の軍人を装い、50代の女性に恋愛感情を抱かせ現金数百万円をだまし取った「国際ロマンス詐欺」が摘発されたばかり。
リアルな結婚相談所と違い、人と対面せず手続きができるネット型の結婚相談所。『ロータリーマリッジ倶楽部』の所在地は「東京都中央区銀座」までは記載されているが、
「入り口はネットでもいいのかもしれませんが、運営している会社が本当に存在しているのか、実績などを確認する情報収集が必要です。会社の住所が銀座とか地名で終わっているようなところは怪しいですね」(前出・西田教授)
吉田容疑者の居住地である東京・三田のマンションは、「郵便受けに名前を出している人もほとんどいません。すれ違えば会釈する程度で、それが誰なのかはわかりません」(住人)という建物。名古屋の関連先とみられる団体の女性を訪ねたが、取材拒否だった。
同倶楽部は《ワンランク上の上質な出会い》《中高年のハイクラス婚活》と打ち出しているが、会員のプロフィールは非公開のため本当にハイクラスかどうか確認しようがない。
会員を検索してから出会うのではなく、相談所のスタッフが仲人となり、初対面の相手同士を引き合わせるお見合い形式をとっていると宣伝していた。
若い世代はネットの危険性をある程度知っているが、50代、60代ともなると、ネット教育を受けないままパソコンやスマホに触れた世代。
「ネットリテラシー(ネットを活用できる能力)を知らない世代が狙われるという点も今回の事件は指摘できます。ひとりで死ぬのは寂しいという気持ちは誰にだってあります。高齢であってもパートナーとして異性を探します。働いていてお金も持っているため支払い能力はありますが、ネットなど手軽なものほど危険性が高いと思ってください」と前出・西田教授。
安易な出会いには要注意だ。