立証その1・笑う門には福来る
■教育やプレゼンはユーモアによって信頼度が上がる
─アリゾナ州立大学 クーパーらの研究
ユーモアのある話には自然と笑顔がこぼれるもの。アリゾナ州立大学の研究によれば、教育やプレゼンの現場でも効果抜群だとか! 1600人以上もの学生からアンケートを取った結果、99%の学生がユーモアのある授業を好意的に評価。
さらに研究を進めると、ユーモアがあることで49.4%の学生が授業に対してより聞く耳を持つようになり、21.4%が記憶の助けになったと回答。7.8%の学生にいたっては、「ユーモアがあると、難しい内容や情報をより時間をかけて処理できる」と報告しているほど。また、笑顔にはストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールを軽減する効果があることも立証ずみ。
しかも、表情筋を笑顔にするだけで効果があるため、作り笑いでもOK。まさに、笑っているだけでよいことづくしというわけ。
立証その2・豚もおだてりゃ木に登る
■人の可能性を信じて期待すると、期待された本人も応えようとする
─ハーバード大学 ローゼンタールの研究
信用するなら、おだててみると効果アリ! ローゼンタールは、知能テストを行い、その結果と関係なく、各クラスの20%にあたる生徒の名前をランダムに挙げ、「この生徒たちは、知能テストの結果、急速に知的能力が伸びると予測された生徒です」と伝える、ちょっと意地悪な(!?)実験を行った。
その8か月後に再び知能テストを行ったところ、「伸びる」と告げられた生徒たちは、そうでない生徒たちに比べ、著しく成績がアップしていたというからビックリ! 「自分にはそんな才能があるんだ!?」と思い込むことで、自分の潜在能力を解き放ってしまったというわけ。けなすよりも、ほめることが大事なのだ!
ただし! 別の研究では、結果をほめるのではなく、プロセスをほめないと逆効果とも。「〇〇ちゃんは90点を取って偉いね」ではなく、「毎日30分欠かさず勉強した〇〇ちゃんは賢い」とほめると◎。じゃないと、木に登るどころか、“猿も木から落ちる”になってしまうかも。
立証その3・後悔先に立たず/思い立ったが吉日
■やらなかった後悔は長期にわたって、さらに大きな後悔を生み出す
─コーネル大学 ギロビッチの研究
心理学者でもあるギロビッチは、「なぜ人は、判断を間違えてしまい、あいまいな信念のもと、合理的とは言いがたい行動を選択するのか」といったことをテーマに研究を行い、さまざまな形で老若男女からデータを集めた。その結果、人はやらなかったことに対する後悔をより強く覚えているということを突き止めたという。
彼はこういった事象を「行動非行動の法則」と呼び、行動したことによる後悔と、行動しなかったことによる後悔であれば、後者の後悔のほうが大きくなるとしている。
おまけに、ドイツの心理学者エビングハウスの研究によると「人間はやらなければならないことを後回しにするようにできている」というから恐ろしい。
だからこそ、後回しにして後悔しないように、“思い立ったが吉日マインド”が大切。林先生の「今でしょ!」は、人間の本質を突いていたから大ブレイクしたのかも。
立証その4・類は友を呼ぶ
■類似性の多い人ほど、好感度が高くなる
─テキサス大学 バーンとネルソンの研究
科学の世界では、「類似性の法則(対人魅力と態度の類似性)」と呼ばれているように、“類は友を呼ぶ”にもエビデンスがあった! 人は、自分の趣味嗜好に近い人ほど親近感を覚えてしまい、逆に遠い人ほど反発しがちになる、というから妙に納得。
この傾向は、男女の恋愛のケースにも当てはまるといい、“おしどり夫婦”が、“似たもの夫婦”になっていくことも、科学的に見れば自然な流れというわけ。
ただし、研究を行ったバーンとネルソンは、「自分と同じ、または似たような考え方を持つ相手は、自分の考え方が正しいというひとつの証明になることから好意を抱きやすい」とも言及。自分が正しいと主張したいがために、類似性の高い人とつながることを求めるのは黄色信号。自分の成長を止めてしまいかねないので、ときには自分と異なる性質の人と触れ合うことも大事!
立証その5・嘘つきは泥棒の始まり
■偽物のブランド品を身につけていると誠実性がなくなっていく
─ハーバード・ビジネス・スクール ノートンらの研究
85人の女性を対象に、本物のブランド品のサングラスをかけさせたAグループ。本当は本物なのに「偽物」とあえて伝えて同じサングラスをかけさせたBグループ。何も伝えずにサングラスをかけさせたCグループ。
3つのグループに、正解率に応じて報酬がもらえる数字を使ったテスト実験を行い、その正解数を自己申告制にしたところ、なんとBグループの71%が、ウソの正解数を報告! 偽物を身にまとっていると感じると、言動も嘘っぽくなることが示唆された!
この実験、「偽物のブランド品を身につけていると批判的になる」という無慈悲な続報まで提唱していて、偽物ブランドをつけてまで見栄を張るような人は、他人の行動を「不誠実だ」、「ウソくさい」などと評価する傾向が強いと指摘。
言葉のウソ以外に、所持品やアイテムも偽物で固めていると、不誠実な人間になってしまうなんて怖すぎる! 泥棒はないにしても、嘘つきは詐欺師の始まりかも!?
立証その6・早起きは三文の徳
■無理をして早起きをするとストレスが増加する
─ウエストミンスター大学 クロウらの研究
ことわざの中には、逆に「そうとも言い切れない」ものもあるみたい。例えば、“早起きは三文の徳”は、その最たる例。
ウエストミンスター大学は、2日間にわたってさまざまな睡眠リズムを持つ42人の被験者の唾液を1日8回分析したところ、早起き傾向にある人は起きるのが遅い人に比べて、より多くのコルチゾールが検出された……つまり、早起きする人ほどストレス値が上がる可能性があると論及したのだ。
また、サクロ・クオーレ・カトリック大学の研究では、夜更かしタイプのほうが、創造性や柔軟性に富んでいるという結果が明らかになっているとか。「早起きして朝活や運動をしないと、良識ある社会人やデキるビジネスパーソンになれない」なんて、過度に考える必要はないみたい。
結局、朝型であろうと夜型であろうと、自分のペースを崩さずに時間配分ができ、上手に時間を使える人が“三文の徳”をゲットするってこと。
寝不足こそいちばんの大敵! 無理して朝活はしないように。
「私たちが普段している行動が、実は心身の健康にも有効だということが科学的に証明されているとわかれば心強いですよね? 同様に、私たちにとって身近なことわざに、実は科学的な根拠があるとわかれば、その教えを実践したり、より強い説得力を持って受け入れられたりできるはず! 先人たちの知恵に科学的根拠が加われば、まさに、ことわざの“鬼に金棒”状態です。ぜひ試してみてくださいね♪」
教えてくれたのは……
堀田秀吾先生◎ほった・しゅうご 熊本県生まれ。明治大学法学部教授。言語学博士。言語とコミュニケーションをテーマに、言語学、法学、社会心理学、脳科学など、さまざまな学問分野を融合したアプローチで研究を行う。本誌で大人気連載中!
実際に試したのは……
マッチョ29◎レストレポさん、菊地翔也さん、植田知成さん。
https://macho29.com/
<書籍情報>
『このことわざ、科学的に立証されているんです』
(主婦と生活社刊/税込み1404円)
先人の知恵である「ことわざ」を、科学的根拠から検証。人間の行動原理を踏まえた、よりよい人生を送る道しるべとして解説した一冊。
<取材・文/我妻アヅ子 撮影/北村史成>