芸能記者や芸能レポーターが、受ける質問の中で、多いのは「ヅラの芸能人って誰? あの人、絶対ヅラでしょ」と、「整形している芸能人は誰? あの人、絶対整形してるでしょ」だ。
特に整形に関する話題は“芸能雀(すずめ)”のあいだでは欠かせないようなのだ。
いま、有村藍里の整形が話題になっている。
彼女は言わずと知れた、有村架純の2歳違いの姉だ。
3月3日に放送された『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で頭骸骨を6つに分割し、輪郭を変えるという大がかかりな整形手術の様子が放送された。
番組中、藍里は整形を決意した理由について、《口元が残念》などと、容姿についてネット上で中傷されて自分に自信が持てなくなったからだと語った。
放送後はネット上で「かわいくなった」「カミングアウトした勇気がすごい!」と称賛の声が上がる結果に。
不特定多数の目に晒される芸能人は当たり前だが、自分の容姿を気にする。側から見たら小さなコンプレックスであっても、それを無くしたいという思いが人一倍強くなるのは仕方のないことだ。それは有村藍里もしかり。
大がかりな“工事”をした場合
しかし、一般常識とかけ離れていると言われる芸能界でさえも、整形に関して触れることはタブーとされてきた。そのため、カミングアウトなどもってのほかだった。
ひとくちに整形といっても大小さまざまで、どこをどうするかで手術の規模が異なってくるのは言うまでもない。目を二重にしたり、ほくろやシミ、アザの除去など簡単なものは“プチ整形”と呼ばれることもある。
最近では宮沢りえがほくろを除去したし、かつては千昌夫が、トレードマークとも言われていたほくろを取っている。芸能界でもこれくらいの整形を経験している人は多く、それを隠す人もいない。
問題は大がかりな“工事”をした場合だ。
顔の輪郭が変わってしまったり、低かった鼻がギリシャ彫刻のような立派な鼻になったり、切れ長だった目が大きくつぶらな瞳になったり……。
整形したタレントが、久しぶりにテレビ出演したとき、その変貌ぶりに、視聴者も番組スタッフも驚いてしまうときがある。一部の芸人やオネエタレントが、カミングアウトすることもあるが、たいていはアンタッチャブルだ。
これはある女優の話。
仕事を休み、長期リフレッシュ休暇を取っていた彼女が、久しぶりにバラエティ番組に出演したときのことだ。その女優の顔は、視聴者の誰が見てもわかるほど、パンパンに腫れ上がっていた。
それからしばらくして、再びテレビに顔を出したとき、腫れは引いていたが、顔の輪郭、目、鼻は以前と大きく変わっていた。
「もともと美人女優で通っていたこともあり、業界では“なぜあんなに大きな整形をしたのか”と不思議がる人が多かったです。精神的に追い詰められていたのか、何かあったのか、と訝(いぶか)しがりました。それが原因かはわかりませんが、仕事のオファーも減ってしまったとか」(民放テレビ局スタッフ)
整形後、大ブレークするどころかむしろ遠ざけられてしまうことも。コンプレックスを取り払うかわりに仕事に悪影響を及ぼす場合もあったのだ。
これが芸能界における美容整形の功罪といえるだろう。
有村の場合はどうだろうか。番組とのコラボとは言いながらも、ただのカミングアウトではなく手術の様子を見せたり、自身の葛藤を吐露したりといった、すべての過程を赤裸々に放送した。整形手術それ自体をひとつの“人間ドラマ”として捉え、感動を覚えた視聴者も多いだろう。
これによって芸能人の“大がかりな整形”に対するネガティブなイメージを払拭し、ポジティブなイメージにまで昇華させることに成功したといってもいいのではないか。ネット上で散見される称賛の声はそこからきているのかもしれない。
有村のカミングアウトで、これから芸能界で整形の扱いがどう変わるか、気になるところだ。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之>
◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。