デヴィ夫人

 逮捕から1年4か月、初公判から1年2か月。タレントのデヴィ夫人(79)が注視し続けた裁判が先ごろ、ひとつの収束を迎えました。

 懲役4年。

 裁かれたのは芸能事務所「オフィス・デヴィ・スカルノ」の元経理担当、辻村秀一郎被告(61)。勤務していた2年7か月の間に、2億円を超える額を横領しました。

「裁判では、2013年12月から2016年8月までに合計59回、2000万円以上を着服したと認定されましたが、デヴィ夫人の怒りはおさまっていません」

 というのは、スポーツ紙の芸能記者です。

デヴィ夫人の不幸

 初公判から6回開かれた公判を、仕事の都合で1度だけ出席できませんでしたが、5回は傍聴席で、元スタッフを凝視していたデヴィ夫人。公判が終われば、必ずマスコミの取材に応じてくれました。

 判決公判後も「一応、納得しました」とコメントしました。人生の後半戦において、2億円以上のお金を盗まれたことに、インドネシア大統領夫人として過去、さまざまな国際的な修羅場をくぐり抜けてきた夫人ですが、その心の闘志に火をつけてしまったようで、今後は民事訴訟で返還を迫る腹づもりです。

「夫人は、(被告は横領したお金を)“どこかに隠していると思います”、“真相を知りたい”として、民事訴訟の準備を進めているといいます。実際の横領額は2億円以上なのに、認められたのは一部ですからね」(前出・スポーツ紙記者)

 辻村被告は、控訴して裁判を続けるか、あるいは刑に服するか、という選択ができますが、どちらにしてもデヴィ夫人が求める返還額を支払えるメドはありません。結局はデヴィ夫人の泣き寝入り……で終わってしまうのではないか。

 それが取材陣の見立てでした。

 芸能界には個人事務所を立ち上げて活動する芸能人が数多くいますが、たいていは身内をスタッフに入れています。

「俳優の浅野忠信は、父親が設立した事務所の所属でしたし、パパイヤ鈴木の事務所にも女きょうだいが入っています。爆笑問題の事務所、タイタンの太田光代社長は太田光夫人としても有名です。

 身内に事務所を任せ、経理を担当させるなど、金の出入りに目を光らせるタレントは多くいると思います。それをしてもらえる身内がいなかったことが、デヴィ夫人の不幸だったのではないでしょうか」(大手芸能事務所関係者)

 どんなに信頼の置ける人物であっても、たったひとりに金の流れを任せてはいけないということを、この裁判は教えています。

<取材・文/間垣ジェーン美瑠>