今や大人気のチコちゃん

 平成のバラエティーを振り返るとき、欠かすことのできない番組が『オレたちひょうきん族』、そして『笑っていいとも!』だ。どちらも“バラエティーのフジ”と呼ばれた時代の看板番組。お笑い評論家のラリー遠田さんは、影響力の大きさをこう指摘する。

「バラエティーは昔からありますが、この2番組によってアドリブの多用や、スタッフが出演者になるなど、新たな笑いの型ができた。平成に入ってこれを踏襲したのが『とんねるずのみなさんのおかげでした』や『めちゃ×2イケてるッ!』。ところが、平成の終わりに『いいとも!』も含めて終わってしまった。時代の転換期といえます」

ひな壇が高齢化

 成功の方程式が崩れたことには理由がある。

「ゴールデンの時間帯で、自分の名前がついた冠番組でコントをやったり、スタッフを交えた内輪受けの笑いで数字を残すのがこれまでの“成功”でした。しかし、東日本大震災を機に世の中の空気が変わり、そういった番組が求められなくなってしまった

 ただ、出演者の顔ぶれを見ていると、ビートたけし・明石家さんま・タモリの『お笑いビッグ3』はいまなお現役、重鎮としての存在感を発揮している。平成の始まりとともに、破竹の勢いでスターダムを駆け上がったダウンタウン、ウッチャンナンチャンなども第一線で活躍。一方、ひな壇には若手とは言い難い芸人が居並び、それも似たようなメンバーが目立つ。

「出川哲朗をはじめ、ひな壇に座っている芸人も高齢化しています。MCはキャリアや実力がないと説得力もないし、仕切れません。

 10数年前、デビュー後すぐにブレイクしたオリエンタルラジオが冠番組を何本かスタートさせたのですが、視聴率が取れず、すぐに打ち切りになりました。若手を使いたくてもなかなか通用しない。そのため、ベテラン勢が第一線で活躍し続けるという状況ができあがっているのだと思います」

 高齢化の傾向にあるのは、お笑い芸人ばかりではない。視聴者も同様で、一方、若者はテレビ離れが進んでいる。

イラスト/イケウチリリー

「ネットの台頭で特に若者のテレビ離れが進み、テレビを見るのは高齢者ばかりに。結果、高視聴率=高齢者向けの内容となり、時代の最先端をキャッチする必要がなくなった。クイズ番組や健康情報番組など、誰が見てもわかりやすい内容が増えました。その結果、似たような番組ばかりになってしまったんです」

バラエティーはどこへ向かう?

 斬新さよりも、見慣れた安心感。このニーズが番組づくりに反映されている。

さらに言えば、近年、ひな壇やアポなし旅、クイズばかりで番組の幅が狭まったのは、バラエティーが進化しすぎて新しいフォーマットの番組をつくるのが難しくなったからだと思います。ちょっと尖っていたり毛色の違う番組をつくるのは簡単ではありません。

 そんななかで健闘しているのが『水曜日のダウンタウン』。あえて炎上を狙っているんじゃないかというほど、攻めの姿勢を見せています」

 今後、バラエティーはどこへ向かうのか?

「例えば『チコちゃんに叱られる!』は、みんなの疑問を解き明かす雑学バラエティーで、過去にもたくさんあったもの。しかしキャラが可愛いことや、“ボーっと生きてんじゃねーよ!”というフレーズは訴求力があった。新しいフォーマットをつくるのは難しくても、見せ方が新しかったから人気になったんです。

 テレビの企画ってこうあるべきだと思いますし、多様性があるほうがおもしろい。見せ方で勝負する方向へシフトしていくといいと思います」


《PROFILE》
ラリー遠田さん ◎1979年生まれ、東京大学文学部卒。テレビ番組制作会社を経て、お笑い評論家、ライターとして活躍している。