井ノ原快彦と上戸彩が夫婦役で初共演するスペシャルドラマ『カンテレ開局60周年特別ドラマ−僕が笑うと』(フジテレビ系/3月26日・夜9時30分~)。戦時下、子どものできない夫婦が5人の養子を迎えて家族としての絆を築いていく姿を描く。“笑う”がキーワードのオリジナル作品ならではの見どころとは。
“寄せ集め家族”のシンプルな幸せ描く
ドラマは激動の時代を生き抜いた、大阪のある大家族の物語。
といっても、その家族は普通とはちょっと違う。時代背景に戦争が描かれているが、戦争の中で苦労して生き抜いたという話ともちょっと違うのだ。
「テーマは家族です。父親と母親がいて子どもたちが5人。でも、この子どもたちは養子としてこの家族に加わった、血のつながりのない親子であり、兄弟姉妹です。そんな7人が家族になっていくというシンプルなお話ですので、戦時中を描いた作品としては、すごく落ち着いた内容かもしれませんね(笑)。
でも、ご覧になっていただければ僕らが伝えたかったこと、つらいときでも笑っていれば、乗り越えられるというメッセージをきっと受け取っていただけると思っています」
こう語るのは、関西テレビの河西秀幸プロデューサー。
井ノ原快彦が演じる鈴木重三郎は、大学の助教授で植物学者。結婚して10年になる妻の誠子(上戸彩)とは子宝には恵まれなかったが、夫婦仲よく暮らしていた。
しかし、誠子の「子どもが欲しい」という思いは強くなるばかり。子どもを引き取りたいと重三郎に相談し、新しい家族がつくられていくことになる。
ドラマ冒頭、井ノ原が顕微鏡を見ながら細胞たちに「うまいこと育てよ、頑張れ頑張れ」と話しかける。
わずか数秒のシーンだが、植物学者になりきっていて、作品に引き込んでいく。
「重三郎は昭和初期の朴訥な男で、井ノ原さんがどう演じられるのか。最初にこのシーンを撮ったときには、監督から思わずガッツポーズが出ました。われわれのイメージどおりの“シゲさん”でしたね」(河西P、以下同)
この瞬間、ドラマの手ごたえを確信したという。
「実は、井ノ原さんにはまだ脚本ができていないときからオファーしました。本来は本を読んでいただいてから、お願いをするのですが、ほかの番組が決まってしまったらと思うと、いてもたってもいられずに本なしでお願いしました」
井ノ原と初共演する上戸の出演交渉も賭けだったという。子育て中であり、長時間拘束されるドラマの撮影は難しいかもしれないと考えたからだ。
「でも、本を読んで涙が止まらなかったと言っていただき、二つ返事で快諾してくれました」
大阪弁を猛特訓。撮影は関東近郊で
舞台は大阪。キャストはほぼ関東出身者のため、大阪弁を猛特訓。井ノ原は、方言監修者が吹き込んだ大阪弁のセリフの録音を聴き続けて臨んだ。
制作スタッフは監督、カメラマンら関西出身が多いので、演じている途中でもイントネーションの違いなどチェックが入り、関西人が聞いても違和感はなく、クランクアップでは、井ノ原が方言監修者と抱き合う光景に「気持ちが伝わるようでした」と河西P。
「撮影場所は、昭和の名残が残っている栃木県や茨城県で、重三郎の家は千葉県木更津です。CG合成を駆使して昭和初期のリアル感は出ていると思います」
2時間ドラマは、2週間程度で撮影されることが多いが、本作はその倍以上の期間を使って撮影された。撮影終了後は、編集作業に約2か月をかけて、130カットのCG加工などを丁寧に行い、見どころのひとつに仕上がった。
家族をテーマにしたドラマに『僕が笑うと』というタイトルには、こんないきさつが。
「養子に迎えた子どもとどう接していいのかわからずに、まじめ一辺倒の顔をしていた重三郎が、ある日、自分が笑ったら、子どもが笑ったときの“僕が笑うと、子どもも笑う”というセリフからとりました。
さらに、戦争が激しくなり、鈴木家にもその影を落としていきますが、苦しい中でも、笑顔でいれば乗り切れるという意味も込めました。
そして、主演の井ノ原さんは笑顔が最高です。視聴者全員を温かくしてくれる笑う姿にも注目していただければと思います」
子役5人は1か月の特訓で大阪弁をマスター!
オーディションで約100名の中から選ばれた子役5人は全員、標準語。そのため撮影に入る1か月前から大阪弁のセリフを猛練習した。
「方言指導がついて、こてこての大阪弁にならないように、自然なイントネーションを大切にしています。みんな頑張って、自分のセリフ以外も覚えてしまい、井ノ原さんがつまると“こうだから”ってアドバイスしてました(笑)」(河西P)