「夜中に“キーッ”って奇声を上げたり、ガンガン音楽をかけたりするので、住人みんなで壁を叩いて抗議したりしました。ひどいときは突然、叫び出して、裸足(はだし)で走り出す。このマンションは、外出モードにしてから部屋を出ないといけないのに、それをしないから、セコムが来て大騒ぎになったこともありますよ」
同じマンションに住む住人は迷惑そうな表情で、容疑者の奇行癖をそう伝える。
警視庁町田署は3月9日、殺人未遂の疑いで東京都町田市の自称職業不詳、佐藤千夏容疑者(43)を逮捕した。
「8日午後11時50分ごろ、本人が自宅マンションで『愛人を殺した』と110番通報しました。被害男性の胸を複数回、突き刺し全治不明の傷害を負わせたもので、男性は搬送先の病院で死亡が確認されました」
と捜査関係者。
被害者は近所に住む嵐富雄さん(61)。佐藤容疑者宅のベッドの上で、パジャマ姿のまま包丁でめった刺しにされていた。
「ワインに睡眠導入剤を入れて眠らせて、抵抗できない状態で刺した。かなり計画的です」(全国紙社会部記者)
嵐さんを知る古参住民は、
「小柄で色黒の消防士さんでした。奥さんもいて、子どもも3人います。周囲の人も、嵐さんに“あの女の人には手をつけたらダメだよ”って忠告していたらしいんだけどね。嵐さんは“俺は付き合わないよ”って言っておきながら、長い間、付き合っていたみたいです」
消防団の中で3人くらいと深い関係に
事件のあったマンションに佐藤容疑者が引っ越してきたのは昨年7月ごろだった。
「やせていて、身長は160cmぐらい。43歳にしては若く見えて、きれいというか」
と同マンションの住人。
引っ越し直後から佐藤容疑者は、少し風変わりな行動に出た。町内会に率先して入り、古くからの地元男性が多い消防団に加入した。
「子どもがいればまだわかりますが、ひとり暮らしで、どうして町内会に入りたがるのか。本当におかしいと思ったんですよ」
そう振り返る近隣の女性住民は、
「いきなり女性が消防団に入るのも変でしょ? 消防団の中で男女トラブルになって、3人くらいと深い関係になったって聞きました」
消防団の行きつけの飲食店店主は、佐藤容疑者に迷惑をこうむったと話す。
「酒が入ると裸足で店内を走り回ったり、奇声を上げたりするので、あの人がいるとほかのお客さんが帰ってしまうんです。調理しているときに、勝手に厨房(ちゅうぼう)にまで入ってきちゃうので、ちょっとおかしい人だなとは思っていました。このへんのお店では、けっこう出禁になっているところがあるらしいです」
佐藤容疑者を出禁にしたという居酒屋店主は、
「無銭飲食をしたので、警察を呼びました。警察が来たら普通、店の人間にどうしました? とか聞くじゃないですか。警察官は、いきなり彼女を見つけて、外に呼び出しました。警察官を蹴っ飛ばしていましたから、公務執行妨害ですよ」
と証言する。地元の警察官に顔を覚えられている“常習犯”だったのだ。
無銭飲食をするほど生活費に困っていた佐藤容疑者の手口は、
「結婚している消防団員を呼び出して、飲みに行こうって誘うんです」
と前出・居酒屋店主。
「それで奥さんたちも怒っちゃって。(被害者の)嵐さんも最初、彼女を更生させると言って面倒を見始めた。それがきっかけで付き合うようになったんだけどね」
佐藤容疑者の危険なふるまいに消防団員の妻たちからも苦情が寄せられ、3月いっぱいで消防団を退会させられることが決まっていたという。
お金が欲しいから私を買ってちょうだい
無銭飲食で警察ざたになったその日の夜の佐藤容疑者の驚くべき行動を、前出・居酒屋店主が続ける。
「夜中に近くのコンビニの駐車場で男漁(あさ)りをしていた、と聞きました。バニーガール姿で白いコートを羽織って、男の人に近づいてはコートをパッと広げて見せる。お金が欲しいから私を買ってちょうだいってことですよ」
近所の主婦も、佐藤容疑者がうろうろする姿を頻繁に目撃していたそうで、
「毎日徘徊(はいかい)していましたね。売春婦とかなんかウワサになっていましたよ」
佐藤容疑者に誘惑されていたという同じマンションに住む60代の男性は、
「食べ物とかおすそ分けみたいに持ってきました。そのうち、タバコくれとか、腹減ったから何か食べさせてくれ、救急車を呼んだけど金がないから貸してくれって。よくわからないフィギュアを、これかわいいからって持ってくるんだよ。お酒があるからうちに来ないって言われたり、勝手にうちに入ってきて、布団の中に入ったり。面倒に巻き込まれるのは嫌で、お金がないからって言い続けていたら、2月中旬くらいから急に来なくなったけどね」
そんな佐藤容疑者の犠牲になってしまった嵐さん。
「嵐さんのお子さんは、お父さんの亡骸(なきがら)はいらないって言っていましたよ」
と近隣主婦が明かす。家族の衝撃はもっともだ。9か月前に近所に住むようになった18歳年下の不倫相手に夫を殺された夫人は、
「すみません、お話しすることは何もなくて。どうかお引き取りください」
そう答えるだけだった。