今年、40周年を迎えるファッションビル『SHIBUYA109』(以下、109)。平成の女子文化を語るうえで、はずせない存在だ。そんな“マルキュー”をめぐる歴史と当時のギャルブームについて、長年、PRを担当してきた喜多将造さんに話を聞いた。
「うちの服はモデルに着てほしくない」
「1979年の開業当時は、レディース以外にもメンズ、スポーツ用品、着物などをそろえた全方位型のファッションビルでした。売り上げは好調でしたが、バブル崩壊後に激減。
でも、地下1階のお店だけは売り上げが落ちなかったのです。このフロアには、のちに大ブームを起こした『ミージェーン』をはじめ、セクシー系ファッションの店が多かった。そこで上階にも同じようなテイストのフロアを増やしたところ、大成功したのです」
'90年代後半にはギャル雑誌が次々と創刊。女の子たちが足を運ぶビルとして、『Cawaii!』や『Popteen』などが盛んに特集を組んだ。
「そんなときにブランド『エゴイスト』のプロデューサーから“うちの服はモデルに着てほしくありません”と言われたんです。ギャル雑誌で、読者モデルが着た服が売れる時代になぜ? と聞くと、“今の読モは服に着られている。ショップ店員のほうがセンスがいい”と」
その話を当時の人気雑誌『東京ストリートニュース!』に持ち込むと、“ファッションのお手本はショップ店員!”という企画につながり、これが大ヒット。以来、ほかのメディアからも注目が集まり、エゴイストの森本容子さんや中根麗子さんら、ショップ店員が脚光を浴びるように。
「このときに生まれた言葉が“カリスマ店員”です。“カリスマ”という言葉は、'99 年の新語・流行語大賞のトップ10にもノミネートされ、授賞式にはエゴイストの2人が登壇しました」
より魅力的な施設に“リボーン”したい
カリスマ店員のブームは社会現象となり、修学旅行生から地方の高齢者までが来館するように。連日のにぎわいを見せた。
お正月の初売りに並ぶ客の長い行列は、109の地下から東京メトロの通路を通り、最長で宮益坂にまで延びた。今でもお正月の初売りの様子はニュースで取り上げられ、福袋の中身を客同士で交換しあうさまは渋谷の風物詩になっている。
かつて“ギャルの聖地”と呼ばれた109。彼女たちに慣れ親しまれ、渋谷のランドマークにもなっていたロゴが3月14日、撤去された。新元号とともに、4月28日からは新たなデザインにリニューアルされるという。
「世の中では従来のロゴ=ギャルのイメージが強い。新しいロゴは9537件の一般公募の中から選んだもので、グラデーションカラーは文化や人の交わりあいをイメージしています。
また同時に、まずは109へ足を運ぶ価値をもってもらえるよう、店舗のリニューアルを進めています。ブランドとしての再興ではなく、今のアラウンド20の女性から、より魅力的だと感じてもらえる施設に“リボーン”できたらと考えています」