新宿武蔵野館が連日満席となる公開中の映画『ラ』に主演した、桜田通(27)にインタビュー。タイトル『ラ』には、「全世界共通の赤ちゃんの産声の音」「オーケストラが音を合わせる基準音」など、“始まり”という意味が込められている。監督、キャスト、スタッフ、全員の熱い想いが込められている作品のこと、そして、27歳の“今”だからこそ紡ぐ言葉で、彼自身について聞いた。
――まず、タイトルが『ラ』と聞いた印象は?
「何のことだろう? っていうのがいちばん最初の感想でした。きっとみなさんもそうだと思うんですけど(笑)。“始まり”という意味が、その一文字で表されていると知ってようやく腑に落ちました。台本を読んだときから、この映画で伝えたいことやメッセージ性を強く感じていたので、それを意識して撮影に臨みましたね」
――桜田さんが演じた“岡浜慎平”が、解散してしまったバンドの再結成を夢見て、友情や恋愛、生き方を見つめ直す物語となっていますが、これまで出演してきた作品とは“違う”と感じた部分はありましたか?
「映画やドラマ、舞台も、それぞれ作り出す人たちには熱量があると思いますが、この『ラ』に関しては、人の気持ちにフォーカスして描いているぶん、楽しいエンターテイメントの作品とは違うなと思っていました。撮影期間は、登場人物の“苦しい部分”を背負って生きた、貴重な時間でした」
――どんな人も、自分自身に当てはめて考えられるテーマだったと思います。
「慎平は、ただ純粋に友だちと音楽をやりたかった、それだけなんです。その姿がみなさんの目にどう映るのか、それは観てくださった人たちに委ねたいことではあるのですが、自分が“やり直したい”と思ったその日から、人は新しく産声をあげて歩き出すことができるということが伝わったらうれしいです。これから先、自分の中に熱いものを持って突き進むヒントを、見つけてもらえたら」
ーー今日(インタビューは4月5日の舞台挨拶直後)から、ついに公開されます。
「この日を迎えるためにみんなで作ってきたので、1人でも観てくださる人が増えてほしい。それが僕の、近々の“夢”です!」
ーー慎平のように、桜田さんご自身もバンドを組んでライブ活動をされていますよね。
「この映画でも、唯一楽しく撮影できたのはライブシーンだけでした(笑)。混じり気もなく、ただ純粋に楽しめたので思い出に残ってますね。役者同士で楽器の練習もして、生音で演奏して、そこにも注目してもらいたいです」
桜田通は「完璧主義者」?
――慎平と桜田さん、2人にとって共通して大切なものが“音楽”だと思いますが、桜田さんの人生を変えた1曲はありますか?
「昔からUVERworldがすごく好きで、なかでも『在るべき形』は大事な曲です。行き詰まったとき、自分の中でマイナスな感情が生まれてしまったとき、自分の軌道修正をしてくれる。いつまでも純粋に、この曲を“いい曲だな”と思って聴ける自分でありたいですね」
――マイナスな感情、とは例えば?
「“もう無理かもな”と思う瞬間です。これ以上どうやったらいいんだろうとか、頑張ったけど実らないことは、この世界にあふれていると思っていて。悔しい思いは、あまり多くは言わないけれど日々抱えているんです。でも、そこで諦めたり手を抜いてしまったら胸を張って生きられないじゃないですか」
――楽をすることだってできるけど、あえてそれを選ばないということですね。
「すごい眠いときでも、あと1回台本を読むか、それとも寝るか……そんなせめぎ合いと戦いながら生きてます(笑)。些細なことかもしれないけど、その積み重ねが作品に対しての愛情だと思っているので」
――自分はこだわりが強いほうだと思いますか?
「僕が本当に何かにこだわる瞬間って、後先に何かがついて回る場合かも。こういうインタビューでも僕のしゃべったことをそのまま書いてくださるから、残るものなので、そこはこだわりたい部分です。自分の言動で周りも変わるし、この仕事は僕を見てくれる人がたくさんいるので、自分だけがよければいいじゃなくて、周りも背負って生活するべきかなと」
――桜田さん、“完璧主義者”と言われることがあるのでは……。
「なくはないです(笑)。でも、昨日も家に帰ってお風呂に入りながら“もう出ないシャンプーも含めて、ボトルが3本ある”って思いました。本当の完璧主義者って、そういうところもきちんとしてるんじゃないかな? 仕事に関わること、周りの人に影響が出ない部分は、こだわらないタイプなんです。きっと。今も、そう言ってもらえたから気づけたことでした(笑)」
ーー役者仲間で仲のいい方は誰ですか?
「いちばんよく会うのは、バンドメンバーですね。普段から連絡もとっているし、ライブの次の日も会うくらいです。同じ事務所の神木隆之介くんとも、昔から仲よくて普段も遊びに行ったりしますし、あとは山崎賢人くんかな。さっきも1時間前くらいに連絡をとっていて、これから『ラ』の舞台挨拶だよ〜って。
賢人くんも今、映画『キングダム』の公開が控えているから、お互いに応援し合ってます。出ている作品はチェックするけど、会ったときに“あの芝居がどうだった”とかいう話はしないですね。たぶんこの仕事をしていなくても仲よくなれるんだろうなという、いい関係性というか。今の僕は、仲間に恵まれているなって感じます」
※山崎賢人さんの「崎」は、「たつさき」が正式表記です。
<プロフィール>
さくらだどおり◎1991年12月7日生まれ。B型。東京都出身。2006年、ミュージカル『テニスの王子様』で主演、2008年に映画『劇場版さらば仮面ライダー電王ファイナル・カウントダウン』で主演。4月16日スタートのドラマ『わたし、定時で帰ります』(TBS系)に出演する
<取材・文/たかはしもも子>