竹元正美さん

元東宮侍従・竹元正美さんが証言

 '86年から2年間、東宮侍従を務めさせていただきました。

 当時は、現在の両陛下の大きな家族の一員にさせていただいたような錯覚を覚えるくらい温かな雰囲気でした。

 実は、初めて陛下とお会いしたのは'70年でした。外務省に入省した際に、同期らと一緒に東宮御所でお茶会に招かれて、お話しさせていただいたことがあったのです。そのときに陛下は「車は黒塗りがいい車と言われますが、なぜ人間の肌が黒いと差別されるのでしょうか」とおっしゃっていたことが強く印象に残っています。

 陛下は、国の大小に関係なく大統領などの要人にお会いになったり、3・11の震災に伴う計画停電でも自主的に節電されるなど、とても公平なお方なのです。

 東宮侍従時代には、ご一家が不定期に行われていた“ホームコンサート”に何回かフルートで参加させていただいたことがありました。陛下がチェロ、美智子さまがピアノ、皇太子さまがビオラを弾かれ、紀宮さまがお歌を歌われていました。みなさまは音楽の才能がおありで、とてもお上手でした。

 ホンジュラス大使を務めていた'03年、紀宮さまが同国を訪問されたことがありました。紀宮さまとしては、最後の外国ご訪問でした。ホンジュラスは国賓並みの待遇で迎えました。

 その際に国立音楽学校の教授に紀宮さまのための曲「清子さまに捧げる曲」を作ってもらいました。歓迎コンサートでは、オーケストラの演奏をバックに声楽家2名が日本語とスペイン語で歌いました。

 この曲は大変美しい曲ですので、私が帰国した後に「ロフェリー・フラウテ」というフルート・アンサンブルの協力でCDを作成し、両陛下や紀宮さまに献上させていただきました。当時はちょうど紀宮さまがご結婚される年でした。紀宮さまは、ご結婚される前に両陛下への感謝の気持ちを込めたホームコンサートを企画されました。「竹元さんも参加してほしいです」と、紀宮さまから招待を受けました。

 ひとりずつ演奏していく形で「竹元さんは2番目にお願いします」と伝えられ、1人目はどなたなのだろうと考えていると、なんと陛下がチェロを演奏されて驚きましたね(笑)。この会は、以前に参加させていただいた東宮御所でのコンサートのような雰囲気で、懐かしい思いを味わわせていただきました。

 昔からずっと何事にも公平な陛下は、とても温かいご家庭を築かれました。お代替わりの後、穏やかで、平和で、そしてゆっくりとお過ごしいただければと思います。