“こだわり”の強い人が、あなたの周りにはいませんか? “こだわり”の強い恋人とお付き合いしたことはありませんか? 
 婚活ライターをしながら、仲人としてもお見合いの現場に携わる筆者が、目の当たりにした婚活事情を、さまざまなテーマ別に考えていく連載。今回は「結婚に大切なのは、“こだわり”よりも“見過ごし”」です。

“こだわり”より大切なものがあります

高収入で見た目も素敵な男性が結婚できない理由

 美香子さん(36歳、仮名)が先日、お見合いしお付き合いに入った義男さん(42歳、仮名)は、一部上場企業に勤め、年収も1千万円を超える好条件の男性でした。ジム通いを趣味としているのでお腹も出ておらず、ブランドスーツをパリッと着こなす見た目も素敵な紳士。

 お見合いを終えたときの美香子さんの声は、弾んでいました。

「こんな方が、まだ独身で残っていたことが不思議ですよ。お見合い場所のティーラウンジに入るときも私をスッと先に入れてくださったし、オーダーやお支払いの仕方もスマートでした」

 お見合いを終えた美香子さんは、もちろん交際希望。そして義男さんからも交際希望がきて2人はお付き合いするようになり、数回の食事をした後、結婚を前提にした“真剣交際”に入りました。

 ところが、真剣交際に入って1か月がたったころ、美香子さんから、「ご相談したいことがあります」と連絡がありました。真剣交際に入った直後は、「1日も早く義男さんと結婚できるといいなぁ」と言っていたのに、面談にやってきた美香子さんは、浮かない顔をしていました。

 そして、開口一番に、こんなことを言ったのです。

「もうとにかく何に対してもこだわりがあるんですよ。食材はどこで買う。お米はどこのブランド。クリーニング店はここ。最初は、“あ、そうんですね”と同調していたんですが‥‥」

 初めて彼の家を訪れたときのことでした。

「彼の行きつけのお店でビールとできあいいのつまみを買ったんです。そのときも、あまりにも自分の食材へのこだわりを滔々(とうとう)と話すので、私が『でも、ウチの近所の◯◯スーパーの食材は、安くて新鮮よ』と言ったんです。

 そうしたら『そのスーパーは何々系列で、実は食品の管理がずさんで……』とか、そのスーパーを全否定するんですよ。すべてにおいてこの調子なので、なんだか疲れちゃって」

 さらに、自分の失敗には甘いのですが、他人の失敗は厳しく批判をするというのです。

「踏切事故で電車が止まってしまい、待ち合わせに40分以上も遅刻したことがあったんですね。そのことはLINEで知らせたのに、待ち合わせの場所に着いたら、あきらかに不機嫌でした。

 40分とまではいかないけれど、自分だって電車の遅延で、デートに5分6分遅れてきたことがあるんですよ。そのときは前もってのLINEもなく、来てから遅刻の理由を言っていました」

 また、お互いの家を行き来するようになり、夕食を美香子さんが手作りするようになると、お米のとぎ方から野菜の洗い方まで、ご自身のやり方を説明し、お茶碗や箸の置き方にもこだわりがあったというのです。

「いちいちうるさくて。この人は、会社でも部下にきっとこの調子なんだろうなと思いました。見た目も素敵、一流企業に勤めていて年収もある。それでも40歳を過ぎて独身でいる理由がわかりました。最初はいいと思って女性もお付き合いするんでしょうけど、彼の細かさに愛想を尽かして離れていく気がします」

 こうして美香子さんも、真剣交際に入って1か月半で、交際を終了することとなりました。

こだわりの強い相手だと見合いを組むのも大変

 結婚相談所でのお見合いは、お見合いが成立すると、お見合い場所と時間を仲人間で決めます。

 それぞれの希望日を3つくらい出してもらい、それを擦り合わせていきます。私の男性会員、雅弘さん(40歳、仮名)が、よその相談室の女性、真澄さん(36歳、仮名)から、お見合いを申し込まれ受諾しました。

 双方のスケジュール調整をしてお見合い日が決まったので、私が都内のカフェを予約したことを告げました。すると、相談室からこんな返事がきました。

「そこのカフェは、真澄さんの仕事場に近いので、『お見合いしているところを会社の人に見られると困る』と本人が申しております。別の場所にしてくださいませんか?」

 そこで、今度は違う予約できるカフェを提案しました。すると、今度は、こんなNGの返事がきました。

「あそこのカフェは、席と席が近すぎて、お見合いの話を隣の人に聞かれてしまいます。また、お見合いは結婚につながる出会いなのですから、もっと格式のある場所でお願いできませんか」

 もちろん、格式も大事です。ですが、土日のホテルのラウンジやカフェは、どこも混雑していています。予約の取れるところでお席を確保しておかないと、40分、50分と平気で待つこともあります。

 混んでいたからと他のカフェに移動しても、どこも同じような状況なので、カフェからカフェへと渡り歩く、カフェ難民になってしまうのです。

「それでは申し訳ありませんが、お見合い場所は、そちらでお決めてください。こちらはどこにでも出向きますから」

 そういって、場所はお相手女性の相談室に決めていただくことにしました。

 そして指定してきたのが一流ホテルの予約できないカフェだったのすが、「入るのに40分待ちました」と、お見合いを終えた雅弘さんからの報告がきました。やれやれ。

こだわりを人に押しつけてはいけない

 “こだわり”を持つのは、いいのか、悪いのか。

 “こだわり”の強い人は、自分がこだわったことを徹底的にやりぬこうとしますし、“こだわり”があるからそれを極めていきます。勉強や仕事に“こだわり”の強い性格を生かしたら、その分野で成功できるでしょう。

 ですが、ご自身のこだわりを対人関係に持ち込み強要すると、人はどんどん離れていきます。

 ことに結婚は、ひとつ屋根の下で一緒に暮らすのですから、お相手からこだわりを押しつけられたら、生活に窮屈さを感じるでしょう。

 それまで全く違う環境で生活してきた人間が共同生活をするのが結婚です。生活の仕方や考え方が自分とは違っていて当たり前。その違いを認めること、失敗や欠点を見過ごしたり許したりすることが、結婚生活が穏やかに平和に進めていくコツなのではないでしょうか?


鎌田れい(かまた・れい)◎婚活ライター・仲人 雑誌や書籍などでライターとして活躍していた経験から、婚活事業に興味を持つ。生涯未婚率の低下と少子化の防止をテーマに、婚活ナビ・恋愛指南・結婚相談など幅広く活躍中。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイト『最短結婚ナビ』http://www.saitankekkon.jp/