山崎豊子の傑作『白い巨塔』が岡田准一主演で5夜連続の大型ドラマになって登場する。昭和、平成と映像化された人気作の令和版。豪華キャストが競演するなかキーパーソンの医局員を演じる満島真之介を直撃。初共演した岡田や撮影についての熱い思いを激白!
主演の岡田と初共演
満島が感じた運命とは
1965年、’69年に刊行された山崎豊子の長編小説『白い巨塔』。発表から50年たった今でも愛され、累計発行部数は600万部を突破。不朽の名作として何度も映像化され、主人公の野心家の天才外科医・財前五郎役は、田宮二郎や唐沢寿明ら名優が演じてきた。
今作の主演は岡田准一で初めての医師役。財前と同期だが対極な考え方の内科医・里見役を松山ケンイチ、恩師だが、対立していく東教授役を寺尾聰、陰ながら財前を支える愛人のケイ子役を沢尻エリカらが演じるほか、豪華キャストが顔をそろえる。演出は『後妻業の女』『のみとり侍』の鶴橋康夫が担当する。
作品は、前半が大学病院の教授選攻防、後半には医療裁判の行方が重厚感たっぷりに描かれていく。
「岡田さんとは初共演です。財前を演じるプレッシャーや責任感、葛藤もあったと思うけど、それさえ力に変えている先輩の背中を見られたことは幸せでしたし、自分もよりいい演技をしようという気になりました。今まで共演できなかったのは、今回出会うための運命だったと思っています。
原作の『白い巨塔』は唯一、学生時代に読んだ山崎作品というのも運命を感じたので、オファーをいただいたときは(驚きすぎて)うれしいという感情の前に、夢見心地でした。
この作品に参加できたことは、きっと何十年たっても思い出すはず。役者として分岐点になりました」
こう話すのは、財前に憧れる医局員、柳原役の満島真之介。財前を慕う柳原だが、その関係性は物語とともに徐々に変化していく。
「柳原はいつも体制に引っ張られ、押さえつけられて葛藤するんですが、若い世代が生きていくうえでぶつかる葛藤を、鶴橋監督がしっかり描いてくれました。後半で柳原は財前と訣別しますが、僕はそれを単なる裏切りとは思いません。劇的なことが起きたけれど、柳原の心はブレてないんじゃないか、起きたことの狭間で見え隠れする愛情や無念さを大事に考えて演じました。
撮影現場は愛にあふれていました。この作品に参加できた幸せを、みんなが思っていましたし、どんなに深刻なシーンでも、愛にあふれる撮影現場でした」
最新の医療事情と
強烈な人間ドラマ
満島が強調する“愛にあふれる撮影現場”には、船津浩一プロデューサーも同意見という。
「大きな愛で包み込むような鶴橋監督をキャストもスタッフも、初対面でもすぐに好きになっちゃうんです。主要キャストだけでなく、エキストラの方、新人や若手スタッフまで全員に“頑張ってるか?”と話しかけてくれるのがうれしく、自然と頑張ろうという気持ちになるんです。
岡田さんは“(いい演技をして)監督の喜ぶ顔が見たい”とよく言っていました。満島さんもキーマンとして財前への感情の変化など、いいお芝居をしてくださいました」
満島は制作発表で、岡田がオペシーンをアドリブで進めると言っていたが?
「岡田さんは医療指導を受け、ご自宅でも新人医師の練習用キットで練習されていたのでクランクイン前には、ひととおりできるようになっていました。
撮影ではワンシーンごと監修の先生に確認しているうちに、ある程度、習得されたと思います。脚本には書ききれなかったセリフまで出てくるようになっていました」(船津P、以下同)
腹腔鏡に電子カルテなどの医療機器、がん告知、医療ミス裁判などは、原作刊行時より医療技術が進歩した現代に合わせてアレンジしているが、変えないものもあるという。
「人間ドラマです。『白い巨塔』は医療ドラマの金字塔ですが、登場人物の強烈な人間ドラマが素晴らしいんです。ですから人間関係やキャラクターは極力、壊さないようにしました。
財前はじめ、すべての登場人物が人間の面白さ、愚かさ、弱さや強さなど、いろんな面を持ち合わせているんです。
財前は単に勧善懲悪な正義の味方でもダークヒーローでもありません。ですが彼が野望をもってどんどんのしあがっていくエネルギッシュな行動力には、いい悪いではなく引き込まれると思います」
連続ドラマ以上の制作費をかけ、豪華キャストに加えて大がかりな手術室のセット、国内だけでなくドイツロケを敢行した力作。そのなかで女性視点の見どころも。
「財前の両脇にいて火花を散らす愛人のケイ子、本妻の杏子(夏帆)の対照的な生き方、財前への愛情です。今作では財前と東教授、里見、柳原など、財前を中心とした人間関係がどんどん変化していくので、お楽しみいただけると思います」
名シーン“総回診”を見比べ
『白い巨塔』といえば、総回診のシーンははずせない。
序盤は東教授、第3夜以降は教授の座についた財前が繰り広げている。長い廊下を足並みそろえて歩く撮影には時間がかかったそう。
「単に総回診といっても先頭に立つ教授が違うと、雰囲気まで違ってくるんです。大ベテランの東教授だと威厳があって重々しい感じ、教授選を勝ち抜いた財前の総回診は勢いがあるので、歩くスピードも若干、速めです。両教授の総回診を見比べて見てください」(船津P)
『白い巨塔』
5月22日(水)~26日(日)夜9時~