幼い命が犠牲になる事故が相次いでいる。

 今月8日、滋賀県大津市で対向車の有無を確認しないまま時速約10キロで右折し対向の軽乗用車に衝突。

 はずみで軽乗用車は歩道で信号待ちをしていた園児ら16人の列に突入し、2人の園児(いずれも2歳)を死亡させほかの園児ら14人に重軽傷を負わせた。

 この事故で逮捕、起訴された右折した乗用車に乗っていた女(52)は警察の調べに対し「考えごとをしていた」と述べているという。

 先月19日には東京・池袋の都道で乗用車が暴走し10数人がケガを負い、31歳の母親と3歳の長女が亡くなった。

 加害者は飲酒運転でもなければ信号無視などのルール違反をしたわけでもない。

 いずれも運転手が気をつけていれば起こらなかった事故で、歩行者がどんなに気をつけていても外に出れば誰でも事故にあうリスクはあり、また運転手も誰もが加害者になる可能性がある。

大津の保育園児死傷事故現場に設置された献花台。14日も多くの人たちが訪れ花やジュースであふれていた

 

交通事故事例に詳しい村松優子弁護士(アディーレ法律事務所)は、

「60歳くらいの女性で前方不注意が原因の事故がとても多いです」

 と、女性の事故の傾向を明かす。

 それでも、いま1度おさらいしておきたい間違えやすい交通ルール、あなたはどこまでわかっていますか?

Q1.直進、右折、左折の優先順位は?

「直進、左折、右折の順番です」

 と、教えてくれたのは、JAFメディアワークスの鳥塚俊洋ITメディア部長。続けて、

「五差路などであっても同じです。道路の優先順位としては、標識があればそのとおりですし、なければ明らかに広い道路や、センターラインが交差点の中までひいてある道路、片方の道路に一時停止があれば、そうではない側の道路が優先になります。

 とはいうものの、優先だからといって無理に突っ込んだりせず、状況を見て譲り合いながら運転してほしいですね」

Q2.坂道って追い越し禁止なの?

「坂道すべてではなく、上り坂の頂上付近と、急な下り坂が追い越し禁止です」(鳥塚さん)

 これは見晴らしが悪いためだという。

 追い越し禁止の場所は全部で8つ。

 急な下り坂、カーブ、交差点手前30メートル、踏切手前30メートル、横断歩道から30メートル以内、トンネル、標識で定められた場所。これらの場所で追い越しをすると違反となる。

Q3.交差点で反対車線に救急車が! こんなとき左側によけて止まるべき?

「交差点やその付近では、救急車などの緊急自動車が接近してきたら、交差点を避けて道路の左側に一時停止。それ以外の場所では、道路の左側によって救急車等に進路を譲るというのがルールです。大切なのは、救急車の走行を妨げないことですね」

JAFメディアワークス 鳥塚俊洋部長

 ときどき見かける救急車の後にちゃっかりくっついていく車。これって違反じゃないの?

「それは、やめてください。救急車の走行を邪魔していなくても、何らかの交通違反を犯すことになるでしょうし、それに、そもそも危険です」(鳥塚さん)

Q4.左車線から追い越すのは禁止なの?

「左側からの追い越しは禁止されています」

 道路交通教本でも、

『3月以下の懲役又は5万円以下の罰金』

 と表記されている。

 ここで間違えやすいのが、

「追い越しと追い抜き」

 だと鳥塚さん。

「追い越しは進路変更をともなうもので、追い抜きは進路変更がない場合。禁止されているのは追い越しです」

Q5.矢印信号が直進のときは右折できないの?

「できません」(鳥塚さん)

 対向車がおらず、後続車があとに続いて焦っていても、右折の矢印信号が出るのを待とう。

Q6.夜間、信号停止で先頭車両になった場合、ライトを消すべき?

「つけたままでかまいません」(鳥塚さん)

 再点灯を忘れないためにも、つけたままが安心。

 2016年度の交通の方法に関する教則によると、夜間に道路横断中の歩行者をはねた市街地以外の事故164件のうち、ハイビームをつけていた車は1件だけだったという。夜間の事故を防ぐとしてハイビームの活用をすすめている。

 また、国内の各自動車メーカーにオートライトの普及も義務づけている。

 とはいうものの、後続車にハイビームをされるとまぶしくて困る人も。鳥塚さんは、

「すぐ前を別の車が走っているならハイビームする必要はないですね。ただし、暗い道路で前車や対向車がいないときには、積極的にハイビームを使うべきです」

Q7.サンダルやハイヒールで運転するのはいけないの?

 道路交通法では規定は特に設けていないようだけど。

「操作がしづらいので基本的にはやめてほしいですね。この項目は県ごとの条例で定められているので都道府県によっては違反になることもあります」(鳥塚さん)

Q8.交通死亡事故を起こしたら、どれくらいの賠償金が必要なの?

アディーレ法律事務所交通事故被害部門 村松優子弁護士

「いろいろな計算方法がある」としたうえで教えてくれたのはアディーレ法律事務所の村松優子弁護士。

「賠償金にはさまざまな項目があり、その中でも金額が大きいものとして慰謝料と逸失利益というのがあります。亡くなった場合の慰謝料は相場として1人2000万円から2800万円とされています。逸失利益というのは、事故が原因で将来の収入を得られなくなったために失われた利益のことで、一般的には67歳まで働くことができるとして計算されます。

 例えば専業主婦は無職とされますが、家事も立派な労働力であるとして1日あたり1万円ちょっとの金銭価値があるとされています。亡くなったのが30歳だとすると、約4500万円の逸失利益になります。30歳主婦を被害者だとして計算すると、慰謝料と逸失利益だけで約7000万円前後の金額を支払うことになる可能性が高いです」

 では被害者が幼児の場合いくらくらいの賠償金になる?

「被害者が幼い場合、将来どれくらいの収入を得るのか予測が困難ですので、平均賃金を基に算出し、3歳児の場合2500万円前後が逸失利益の相場となっています」

    *

「車は便利なものですが、一歩間違えば凶器になり、人を殺してしまうおそれがあるもの」

 17日、池袋の暴走事故で妻と娘を失った男性が会見し、沈痛な思いを明かした。

「人を殺してしまってからでは取り返しはつきません。ハンドルを握るときは、どうか連日の事故の被害者のような方々を生まないよう常に注意して、優しく気遣いのある運転を心がけてほしいと願っています」

 交通事故のない社会は、ひとりひとりの意識ひとつでつくられるもの。

 車に乗る前には心にとどめておきたい。