「受験が終わったら、JUMPに会いに行きたいんです。今日は合格と、コンサートの当選祈願に来ました」
1月上旬の鎌倉・鶴岡八幡宮。
私がバッグにつけていた“くるすけ”(※山田涼介のマスコットキャラクター)のチャームに目をとめて、制服姿の少女が声をかけてくれた。つややかな黒髪ボブが愛らしい、感じのいい女の子だ。
彼女の名は梨美香ちゃん(仮名)、Hey! Say! JUMP・有岡大貴さんのファンだという。
ヲタ同士で盛り上がり、「有岡くんのこういうところが素敵だね」と話すと、梨美香ちゃんは頬を紅潮させて恥じらった。
「わぁ、大ちゃんをほめてくださってありがとうございます! なんて、私のじゃないですけど(笑)」
可愛い。彼女は本当に有岡さんが好きなのだ。
「会場で見かけたら、声かけてくださいね!」
オレンジ色のペンで書いた絵馬を納め、手を振ってくれた梨美香ちゃん。“Hey! Say! JUMP、アリーナツアー中止”の報を、彼女はどんな気持ちで聞いただろうか――。
2019年5月19日(日)18時。
令和に入って間もないこの日、Hey! Say! JUMPのFC会員に向け、“「Hey! Say! JUMP」に関するお知らせ”として、“(メンバーの)ツアー移動時に一般のお客様に対して多大なご迷惑をおかけする状況が改善に至らなかったことを踏まえ”、“デビュー以来継続されてきたアリーナ会場でのコンサートを本年は見送る”旨が通達された。
激震である。
スケジュールの都合でも、メンバーの不調でもなく、“ファンによる迷惑行為”で彼らとの大切な場が奪われるとは、誰も想像しなかった。冒頭の梨美香ちゃんのように、心優しく、まともな道徳観をもったファンにとっては、納得しかねる事態である。
Hey! Say! JUMPに限らず、今、ジャニーズの“現場”は荒れている。
規定サイズ外のうちわを振り上げて、タレントの気を引く。声援の域を超えた叫び声で大騒ぎする。公演中、演者をバカにしたように寝てみせる。しれっと盗撮や録音をする。あげく、それらを注意されると口汚く逆ギレする……。
こういうことをする人はほんの一部だからこそ悪目立ちしてしまい、「だからジャニヲタは」「だから〇〇のファンは」と言われてしまう。
そして、会場内での“治安の悪さ”は外にまではみ出し、ツアー中止の決め手となった“交通機関の利用に支障を来し、無関係の一般人にまで迷惑をかける事態”を引き起こしてしまった。
募金のかわりに“ゴミ”を入れるファン
過去にも、一部の者による“もう、それはファンとは呼べない”行為がいくつか見受けられた。2度と同じことが繰り返されないよう、その残念な例をひとつ挙げてみる。
2011年、列島を襲った東日本大震災。
この支援活動の一環として、ジャニーズのタレントが募金箱の前に立ち、協力を呼びかけたことがあった。募金をすれば、目の前でタレントを見られるため、何周もして募金を繰り返す者が現れた。
きちんと募金をするならかまわない。
しかし、中には小銭のかわりに募金箱にゴミを入れ(!)タレントに近寄った者もいたそうだ。
このときも事務所は、「感謝をこめて募金箱の前に立つタレントに対し、向けてくれる気持ちが“ゴミ”なのですか?」という旨の苦言を公式サイトで呈している(※現在は見られない)。あまりにも情けなくて、泣けてくる出来事だ。
会場での身勝手な行動も、募金箱にゴミも、移動中のタレントを追い回す行為も、「本当のファンならば」できるはずもないことである。
知性とモラル、そして他者への敬意を持ち合わせない一部の“モンスター”が、「アーティストが仕事をあきらめねばならない」という、最悪の状況を生み出してしまった。
では、どうすればこの“モンスター”を倒せるのか?
私は「“モンスター”の行為に、うまみなどない」と、彼女たちに思い知らせることだと思う。
アーティストにも、もっと現場で何が起きているか興味を持ってもらい、積極的にファンをしつけてもらっていい。マナー違反をする者にファンサービスしたり、“追っかけとつながる”など迂闊(うかつ)な行為は、「結局やったもん勝ちなのか」と、純粋なファンを心底、傷つける。
真のファンを失望させることは、屋台骨を打ち砕くこと。
根幹が崩れては、アーティストとして高みも目指せまい。
ファンも、アーティストも、このあたりでガチで向き合って、ともに歩むために必要なことを確かめ合うときが来ているのではないだろうか。
<プロフィール>
みきーる/ジャニヲタ・エバンジェリスト。ライター・編集者。
グループを問わずジャニーズアイドルを応援する事務所担。応援歴は25年超、3日に1度は現場参戦。著書に、『ジャニヲタあるある』(青春出版社)、『ジャニ活を100倍楽しむ本!』(青春出版社)など。
◆Twitter @mikiru
◆オフィシャルブログ 『ジャニヲタ刑事!』