ご遺族の思いが伝わるペットの写真が隙間なく貼られていた

 冠婚葬祭という言葉がある。人生で1回きりと心に決めた結婚式は、半年以上の長い時間をかけて準備して当日を迎えるため、業者選びも慎重になる。しかし、「葬儀」はなかなか準備しておけるものではない。誰もがいつ死を迎えるのかなど知らず、残された親族によって大慌てで業者を探すこともある。

 それでも、終活の一環で葬儀の相談をすませている家庭などは比較的スムーズに別れを迎えることができる。……では、ペットはどうだろうか?

 ペットを飼うときに、「別れ」のことまで考えて飼う人は少ない。しかし、ペット葬儀こそ、その流れを把握している人も少なく、いざそのときがきたらどうしたらいいかわからなくなってしまう人も多いようだ。

 今回はそんな「ペットの葬儀」について、東京・埼玉を中心にペット葬儀業を運営している訪問ペット火葬 monnie(モニー)の関氏に教えてもらった。

ペット葬儀業でも「ケータリング」が注目

 ペットの葬儀は大きく2種類に分かれており、固定の火葬場にご家族とともに来てもらうか、ケータリング火葬車で自宅にて火葬するかであるという。

ペットの身体は人間よりも傷みが早いので、大切なご家族が亡くなられたとき、どうしたらいいかをすぐにお教えできるよう、24時間電話での対応をしています。ペットの大きさによっては、硬直が始まる前に手足を曲げるように整えてあげたり、身体を冷やして火葬まで待つ必要もあり、人間と同じかそれ以上に素早い対応が求められます

 中でも、ケータリング火葬の需要が特に高まっていると関氏は話す。

ケータリング火葬車

 ケータリング火葬とは、車の中に火葬炉を積み、訪問した先で火葬し、ペットとお別れをすることができる葬儀で、出張費を取らない業者も多い。遺族にとっても金額面で負担が少なく葬儀ができることや、土地の狭い都心では土葬ができないため、需要が高まっている。

ケータリング火葬でも、ご自宅をお借りして拾骨を遺族のみなさんに行ってもらいます。元の骨格のとおりに並べて、みなさんでペットとのお別れすることで、ご遺族自身もペットとの死をスムーズに受け入れることができ、感謝のお声もよくいただきます

 納骨後は骨壷を自宅保管、またはペット霊園に慰霊するかを選択できる。東京や埼玉にもいくつか有名なペット霊園があり、人間と同じように墓を構えた霊園にペットたちが慰霊されている。

ご遺族のペットへの思いが綴られた墓石

繁雑なケータリング業者も……
ペット火葬業の現実

 そのようなペット葬儀の現状で、ペットとの別れに心を痛め悲しみに暮れるご遺族を「利益の対象」にしている業者もいるという。

「そもそもペットのケータリング葬自体、固定の火葬場を持たない業者が合間を縫って始めたものです。現行の固定火葬場に対抗するために安く始まった業態であるため、中には固定火葬場での葬儀よりもずいぶん安い値段をネットで宣伝しているが、実際に葬儀している最中に“オプション”という名目で、当初の金額に上乗せした請求をしている企業もあったようです」

 そういった業者は安さを売り文句とし、集客をしているようだ。その現状について関氏はこう語る。

火葬そのものと火葬炉の冷却だけでも2〜3時間はかかります。納骨も本来は、ご家族の心ゆくままに、好きなだけ時間をかけてやってもらうべきものです。

 次のご家庭の予約のために、その火葬や拾骨を急ぐというのは、大切な“葬儀”という場にはそぐわないもの。人間の葬儀に比べると値段も安いので、そういう認識を持たない業者もいるようですが、ケータリング葬が流行したてのころは、生焼けのようなご遺体に悲しんだという話もありました。

 安いには安いなりの理由が、というのはどの業界でも一緒です。大切な家族との別れの瞬間を演出する業者を、値段の安さで選ぶのは、後悔の原因にもなりかねない」

 しかし、ペット火葬・ケータリング火葬という業界に関しては、情報が集めづらいうえに、使う人も限られている。口コミも回りづらいので、いい業者を見抜きづらいというのも事実だ。

少なくとも霊園を構えているような業者であれば、葬儀業としても老舗である場合が多いので、安心して利用できる可能性は高いと思います。

 さらに言えば、人間よりも寿命が短いとされるペットだからこそ、いざというときの業者を調べておくというのも大切なことです。

 慌ててネットで探し、検索に引っかかるだけの業者を選ぶのではなく、あらかじめ霊園を訪れてみたり、事前に手順や見積もりをもらって比較検討してみたりするのもいいでしょう」

 人間なら遺書を書いたり、自分の葬儀を事前に調べるなどの、本人の中での終活というものがあるが、ペットはそうもいかない。だからこそ、人間と同じく「ペットの終活」が必要ではないだろうか。そうすることで、大きな喪失感ではなく、これまでの思い出を懐かしむような、お別れの瞬間を迎えることができるのかもしれない。

埼玉・東京 訪問ペット火葬 monnie(モニー)
https://www.pet-monnie.jp/