NHKが毎週火曜夜に放送する音楽番組『うたコン』。
NHKホールをはじめとした公開生放送で、演歌・歌謡曲の歌手からアイドル、J-POPアーティストなど、幅広い出演者が毎週番組を彩る。
演歌の大御所からアイドルまで
「放送枠としては、もともと高年齢層をターゲットに、演歌・歌謡曲の歌手を中心とした公開生放送の長寿人気番組『NHK歌謡コンサート』を引き継いでいます。NHK全体の編成見直しのひとつとして、J-POP系の歌手・アーティストが出演する『MUSIC JAPAN』と統合したかたちでスタートした番組です」
と、あるテレビ関係者は言う。
系統の異なる2つの歌番組が統合されたことで、番組の雰囲気も変わり、新たなものが誕生。あるテレビ誌記者は言う。
「2番組のミックスではありますが、ベースはどちらかといえば『歌謡コンサート』。演歌・歌謡曲系の大御所が毎回メインを務め、そこにアイドルやJ-POP歌手がからむような構成になっています。若手アイドルが演歌歌手や大物アーティストのバックで踊ったり、旗を振るなどして盛り上げます。また、出演歌手同士のコラボやデュエット、名曲カバーなどもあり、基本的に最新曲や代表曲を歌う歌番組とは違った雰囲気がありますね」
五木ひろしや堀内孝雄、石川さゆりに氷川きよしといった演歌の大物から、山内惠介に純烈、丘みどりといった気鋭の歌手。さらにコブクロや森山直太朗、DA PUMP、ジェジュンらも出演すれば、ジャニーズからもKinKi KidsやV6、Kis-My-Ft2にKing & Princeなど豪華な顔ぶれも。女性アイドルも、48グループや坂道シリーズ、ハロー!プロジェクトにももクロなどが週替わりで出演している。
若手から大御所までバラエティーに富んだ顔ぶれ。出演者同士が絡み、ときには観客を巻き込んだ演出をしている。そしてNHKホールでの公開生放送。このように見ると“あの番組”との共通点が多い。再びテレビ誌の記者が言う。
「紅白歌合戦ですね。番組のにぎやかな雰囲気と、公開生放送の緊張感。放送時間は46分なので“プチ紅白”といった雰囲気で仕上がっています。それに、大阪など地方からの放送回もありますが、基本的には紅白と同じNHKホールからというのも、ひと役買っていると思います。毎週、紅白的な空気感が味わえると思うと、お得な歌番組です(笑)」(前出テレビ誌記者)
その“お得感”が功を奏しているのか、同番組の視聴率は好調、10%を突破することも珍しくない。
『Mステ』との違い
「テレビ界全体の視聴率の低下、さらに音楽番組の需要が低くなっている中、安定した視聴率が見込めるのはなかなか強い。『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)を抜き、視聴率トップの音楽番組へと成長しました」(前出・テレビ関係者)
視聴率が安定する理由のひとつは、やはり演歌・歌謡曲系の歌手の出演によるところが大きいという。
「地上波のテレビをよく見る、高年齢層の支持が厚いことが何より大きいですね。これは中高年をターゲットにしたドラマ作りが強い、テレ朝の手法と似た構図です。また、演歌勢の大御所がこぞって出演するところが『Mステ』との大きな違いですね。
中高年層が見て楽しいと感じる番組作りをすることで、テレビの視聴率が低空飛行する中、固定客がしっかりとついてきた。そこに、ジャニーズや坂道ファンの若い視聴者も見てくれるようになり、新しいものが生まれ、親しみやすい番組になっています。“火曜の夜8時はうたコン”という、習慣も根づいてきたのではないでしょうか」(同)
好調の波に乗り、思わぬ大物のサプライズ出演など、ますます『紅白』化が進んでいったりするかもしれない。
<取材・文/渋谷恭太郎>